喘息をよくし治すために(2013)

251. おたがいのお年玉

喘息をよくし治すために(251)
喘息大学学長 清水 巍

 あけましておめでとうございます。毎年の恒例ですが、野口正路さんの「新年に贈る言葉」(土曜美術出版販売)から詩を引用し、冒頭を飾ります。

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 初日の出の風景もいいですね。しかし新年の「お年玉」をお互いに交換できれば、それは「忘れられない思い出」となります。飛躍の年にできるし、その思い出でビールを酌み交わしたいものです。そういう意味でこの詩を選びました。
 私からのお年玉は「仮説の提言」です。「かつては全身性ステロイドが多用されていたので、好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎などの合併症で悩む人は少なかった。吸入ステロイドで気管支は安定したが、追い出された好酸球は鼻や耳で炎症を起こし、活躍するようになった。吸入したステロイドを鼻から放出すれば、気管支と同様に改善できるかもしれない。毎日の吸入を口から吸って鼻から出して改善があれば、皆様へのお年玉となる。もし本当に有用性が実証できれば、世界中の喘息の人へのお年玉にもなる。口から放出していたステロイド吸入を廃物利用か再利用か分からないが、試しに鼻から放出する実験をやってみよう」というものです。無効が実証できれば、口から出せばよいというのが確定します。効果が実証できれば、世界中の喘息の人への福音となります。
 皆様から私や「わかば会へのお年玉」は、「仮説を実行した正直な結果」(12頁)に記入して届けて頂くことです。まず今回は記入してエントリー(応募)して下さい。FAX、メール、郵送、外来持参で応募して下さい。

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 2月号、3月号と2回、調査結果を記入する用紙を今号同様つけますので、計3回ないし、2月3月分をまとめて送るか、持参して頂いて終わりです。外来の人は、清水外来や受付などで「清水先生に渡して下さい」と切り取って持ってきて下さい。名前を書いて頂きますが、悪用はしません。ご安心を。
 どうして、こんな調査を思い立ったかということです。左頁のアレルギー学会に参加した時、大阪・千里山病院の辰巳先生、三菱京都病院の安場先生が、「経鼻呼出法が鼻に有効だった」と報告されたからです。私は質問に立ち、「ドライパウダーの粉末製剤が鼻から再呼出できるのか」と聞きました。口や喉、気管に浮遊しており有効だったという御返事でした。確かに左図の「死腔」には、粉末であろうとエアゾルのガスであろうと少しは浮遊します。
 治験対象は毎日、ステロイド吸入剤各種(アドエアやシムビコートを含む)をしている人のみです。外来の人は清水先生と相談した後に開始して下さい。
 どのようにやって頂くか以下に書きます。

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 全ての喘息の人が鼻が悪いわけではありませんから、効果無い人もいるでしょう。しかし、自分は悪くないと思っていた人も、鼻や耳がよくなる、喘息までよくなったと実感できるかもしれません。調査は外来の人が主ですが、全国の人の協力もよろしく。

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 今年の鮎は700匹に挑戦です。鮎をもらえる会員さんも増加するかもしれません。5月のゼミはピラティスの山崎先生、芸術療法の上原先生、スポーツジャーナリスト二宮清純さんの登場も予定しています。第21回喘息デーも5月のゼミと重なります。今年が皆様にとって、よりよい年となるよう頑張る年にしましょう。

 

 

252. 世界喘息デー取組みについて

喘息をよくし治すために(252)
喘息大学学長 清水 巍

 イタリアの首都はローマです。「全ての道はローマに通ず」という格言が有名です。ローマ帝国の全盛時代、世界各地からの道が首都ローマに通じていたことから、物事が中心へ向かうことの例えとして使われました。用例としては、「全ての道はローマへ通ずだから、他とは違う手法で進めたとしても、最終的には正解に辿りつくだろう」等と使われているそうです。
 1993年9月6日に東京・大森のニフティの会社で行われた日本の最初の「喘息デー」が昨年20回目を迎え、21回目の今年からは5月の「世界喘息デー」の一環として取組まれることになりました。日本からの道も世界に通じ、「世界からの道も日本に通じるようになった」ということですから画期的なことです。
 それで今号では、「世界喘息デー」のことや「世界の喘息の状況」、「日本の喘息患者さんの数」を情報として提供し、今年度5月の喘息デーの取り組みや第12回成人喘息ゼミナールの意義を考えます。そして来年の2014年は「1974年3月に石川県喘息友の会わかば会結成」でしたので、40周年を迎える意義も考えてみましょう。

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 下のデータの患者数は世界のデータのため古いものですが、今なお世界的に使われているものです。日本での最近の通説は以下のようなものです。

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 2011年の日本の喘息死数は、2060人で史上最低となりました。 5月に世界喘息デーが行われているのは、世界的には5月に喘息発作が多発しているためとされ、日本の秋が世界の5月にあたるのです。

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 和歌山の久保裕先生、日本喘息患者会連絡会で、第1回の喘息デーを取組みました。21回目からは、世界喘息デーの一環として取組むことになりました。久保先生からの御提案を、昨年の日本喘息患者会連絡会総会が受け入れたからです。
 昨年、和歌山県ではグラクソ・スミスクライン社の主催で取組まれました。今年はこれを石川県喘息友の会とグラクソ社の共催でやろうということになったのです。メインゲストは、清水宏保選手ではなく、スポーツジャーナリストの二宮清純さんとなりました。

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 このような流れは久保先生の意見を伺い、私との相談で合意に達して、準備されたものです。「全ての道はローマに通ず」、「喘息をよくするためには、大同団結、全ての力の結集が必要」なのです。
 全国の喘息患者会も5月に喘息デーの企画をお願いします。喘息克服月間は秋に「日本は喘息発作が多発する」のですからこれまで通り取組みます。
 皆さん、21年目のこの企画を成功させ、それをステップに来年の「わかば会40周年」を祝いましょう。このような企画を行うことができるようになったのは、40年前にわかば会が結成され、25年前に日喘連が結成され、努力が継続されてきたからなのです。ここに至った全てがわかば会の創立と継続があればこそです。今年も会員の更新を是非ともお願いします。
 先月号でお願いした皆さんからのお年玉(ステロイド吸入の鼻呼出法応募用紙)を沢山頂きました。とても、お一人お一人に礼状を差し上げることができませんがご了承下さい。2月3月も引き続きご協力下さい。

253. 長年の夢、実現が

喘息をよくし治すために(253)
喘息大学学長 清水 巍

 会報わかばの更新の期間、1ヵ月が過ぎました。もうお済ませになられたでしょうか。更新の振替用紙は2月号に入れましたので、今月号には入りません。今月号にも入れると2度振り込む方もおられるからです。3月一杯までが集中期間ですので、ITわかば以外の方は、外来で、郵便局で更新手続きをお済ませになって下さい。
 ITわかばの方は、3月1日以降に、わかば会のホームページから更新手続きを済ませた後に入金をなさって下さい。入金だけされますと、何の入金か不明で対応に支障が出るそうなのでよろしく。
 会員を継続して頂くことによって、長年の夢の実現が可能となります。夢実現の1例をあげさせて頂きます。5月開催の第12回成人喘息ゼミで体験発表をじかに見て、聞くことができます。

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 富山の中沢さんで、親子3代の喘息の方です。おじいちゃんも、お父さんも喘息で亡くなられました。「自分も喘息で死ぬのでは?」と思われたことは容易に想像がつくのではないでしょうか。それがよくなれば夢が実現であります。
 わかば会に入会され、ゼミに参加し、私の治療を受けて念願の夢が実現しました。皆さんもわかば会と関わることによって、長年の夢が大なり小なり実現してきたのではないでしょうか。
 昨年のゼミでの体験発表では、喘息大学1期生の佐々木早苗さんに、「城北で一番の重症難治性喘息患者と言われていたのに、よくなって、もう20年以上喘息の吸入や一切の喘息薬を使わずとも発作がなくなった」という体験発表をして頂きました。ゼミ終了後の世界喘息デー協賛・県民公開講座の私の講演の中では、もっと長期間クスリゼロ、発作なしの「治ったと思われる人」の体験発表を予定しています。
 可能性があり、努力すれば長年の夢が実現するということですね。
 もう2つ例を挙げます。1974年に石川県喘息友の会は「県下1万人の喘息患者は手をつなごう」のスローガンの下に結成されました。当時の県人口百万人、1%が喘息と言われていたので1万人。それから39年過ぎて、長年の夢・世界喘息デーと合流し、県民公開講座を開催し、来年40周年記念行事を迎えることになりました。
 最後の例は、私、個人のことです。人に役立つ医師になりたいと会津の田舎から出てきて、上記のことに少し役立ちました。肺癌を自分で早期発見し、右肺1/3を切除して頂き完治。鮎も年に601匹釣り、優勝したり2位になりました。下手くそだった70の手習いのゴルフもやっと少し上達したねと言われるようになったのです。
 以上、3つの例を挙げました。これらの実現は、①皆さんが会員を継続して下さったこと、②喘息大学や成人喘息ゼミナールに参加し努力下さったこと、③役員会や職員が努力を継続してきたこと、④私も努力、この4つの努力があったからです。
 やがてA4版の「わかば」にして、活字も大きくなった見やすい会報をお届する夢が実現するかもしれません。皆さんの喘息や合併症をよくし、人生をもっとよくする最も大切な長年の夢が実現するかもしれません。
 皆様と共に、よくなる夢を追求します。会員の更新と継続、ゼミナール申し込み、県民公開講座参加をお願いします。「継続こそ力なり」が私たちの長年の歴史の教訓です。それを最後まで追求しあえる会にしようではありませんか。

254. ゼミと県民公開講座の成功を

喘息をよくし治すために(254)
喘息大学学長 清水 巍

 ようやく春らしくなってきました。ひとつ年をとったにしても、冬を越えての春の訪れは嬉しいものですね。この4月号の「わかば」を目にして、共に春の訪れを喜んで下さった方は、更新ないし新入会を頂いた方々です。わかば編集長として、厚く御礼を申し上げる次第です。
 無事にまた「新しい春の季節」を迎えられたことを喜ぶと同時に、3つの点で「新しい情報を提供できること」を喜びたいと思います。その第1は、皆様にお約束をした「お年玉」の件です。気道の炎症を抑えるためにステロイド吸入療法は広く行われているのですが、「せっかくの口から吸入するのに、口から出してしまうのではもったいない。鼻から出せば鼻を通るので、鼻腔の炎症を抑えられるのではないか」と「鼻呼出法」をお勧めしました。
 やってみて、効果のあった人と無かった人が明らかとなりました。その成績を下に紹介します。今まで92人の人がアンケートを寄せてくれました。うち8人がどの吸入薬を使用されているのか、○印が無かったため、判定不能として除外し、84人を評価対象としました。(中間集計結果です。3月号以降、未集計が続々と届いています。)

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 実行・報告した人の4人に1人が鼻に効果を感じたのですから、有用だったと言えます。4人が耳に効果があったと報告してくれました。この結果から3つのことを提案します。
①効果の無かった人は、鼻の炎症が無いか少ない人なので、口からの呼出に戻してもよいかもしれない。
②効果のあった人は「鼻からの呼出」を続ける。
③違う薬剤に変更してという点で、現時点ではアドエア⇔シムビコート交代を試してみるというのが一つです。不都合があれば元に戻せばよいし、よければそれに変更すればよいのです。第2の新情報は次頁のエアゾールを試してみることです。

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 これまで丸いディスカス製剤が主流でした。シムビコートのスマート療法、ステロイド吸入剤が各種あり、それらでコントロールすることを目指してきました。「エアゾール製剤の合剤の方が、喘息や鼻の方にも良い人がいるかもしれない」ので、変更して試してみるという人は、鼻呼出法で試してみて下さい。その効果の程も6月号のわかばでアンケートを取り集約してみます。ディスカスと較べる場合は、エアゾール製剤は朝食前2吸入、夕食前で2吸入、同量にすることが標準使用となります(次頁の医学的新情報参照)。
 実は粉の吸入薬をうまく吸えなかったので、エアゾール製剤に変えたらよくなったという人もいるのです。全て試してみないことには分からないということです。奥さんやご主人、子どもや孫を取り換えてみるということはできませんが、薬は期間を限って「試してみる」ことは許されます。その経験を経て、よい薬物療法が可能となります。合剤のエアゾール剤はアドエアのエアゾール剤しか、今のところありません。シムビコートは粒子が細かいので、鼻に効果があったのかどうか、7人の人が「よかった」と回答しました。アドエア製剤や別のステロイド吸入使用者でシムビコートを使ったことのない人が、鼻呼出法を含め試してみることもよいと思います。
 第3は、ゼミと県民公開講座です。これも参加してみないことには効果は分からないし、効果は得られないのです。ゼミや県民公開講座は、一人一人の体験や効果を越えた専門家の指導やアドバイスが詰まった、1年に1回の場であります。そこに加わることによって、1人でいるだけでは到底得られぬ情報や感動、気づきが得られ、自己変革が起こるのです。参加しようと思い、実行することで早、変化が起きます。喘息患者さんやご家族にとっては、得難い貴重な場です。喘息に関する学習の場を桜との出会いに例えれば、福島県三春の「滝桜」、岐阜県本巣市(旧根尾村)の「薄墨桜」を見に行くくらいの特別な価値があります。県民公開講座は、石川県や県と金沢市の医師会の後援も得られました。39年前に石川県喘息友の会が結成されて以来の大規模な会合です。
 アンケートの礼状を一人一人に出せませんでしたが、皆様のご協力で成果を出せ、ここに御礼を申し上げます。ゼミ、県民公開講座も皆様のご参加で成功させて下さい。

255. COPDとの関連に注目

喘息をよくし治すために(255)
喘息大学学長 清水 巍

 気管支喘息をよくするには、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などの合併症に注意し、その合併症をよくすることが、喘息をよくすることが連ながることを皆様にお知らせをしてきました。
 今号では、2つのことを皆様にお知らせします。1つはCOPDとの関連、合併症があるのか無いのか、あるとすればどの程度あって、どうすればよいのかということです。2つ目には、喘息がなかなか安定しなかったり、改善度が今ひとつよくないという人が、COPDを合併していなくても、COPDによく効く薬が著効を示す場合があり、その使用を試すことによってよくなる人がいるということです。
 これからCOPDのことがよく出てきますので、基本的なことを紹介しておきます。

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 の大文字をとった略語です。潜在患者さんも入れると650万人もの人が日本に存在するとされ、死亡順位が年々高くなることで注目されています。在宅酸素療法が必要な人も増え、医療費の増大もあり、悪化を10年、20年単位で防ぐ重要性が指摘されています。昔は肺気腫になったらよくする薬がないと言われていたのに、今ではよくする薬も出て来ました。
 このような状況ですから、皆様やご家族も含めてCOPDと喘息との関連度を正確に調べ、認識を新たにしましょう。まず下のテストをやってみて『はい』か『いいえ』に○をつけて下さい。4番目の質問は『朝夜』か『日中』のどちらかに○をつけましょう。

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 喘息の人は1~3番までが『はい』、4番目が『朝夜』のはずです。もし4番~7番までで、右側の『日中』や『はい』に1つでも○があれば、COPD合併疑い、○が2つ以上はより合併濃厚です。40才以下でタバコに関係ない人はCOPDとは言えません。最終的には医師にご相談下さい。
 呼吸機能検査では、1秒率が70%以下で、「気管支拡張剤の吸入後でも改善が認められないか、わずかであり、末梢気道障害が疑われる人」が、COPD(肺気腫や慢性気管支炎)とされます。
 「COPD合併疑いあり」とされた喘息の人は、喘息だけの治療ではなく、COPDの方も治療すると改善がみられるかもしれません。第12回成人喘息ゼミナールで検査やリハビリの職員に講演してもらいますが、喘息にもCOPD合併の人にも役立ちます。今号のことも、私の基調講演で解説します。
 COPD合併喘息疑いのありの人に対しては、通常の喘息治療とダブる人もいますが、古くはテオフィリン剤、気管支拡張剤(セレベント、ホクナリンテープも入る)、去痰剤が使用されました。今も有効です。最近では、以下が保険で認可されています。

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⑤以下が比較的新しく、⑧は後の頁で紹介する新薬です。こんなにも沢山出ているのですから、どれが自分に合うのかは、医師と要相談です。いずれも1日の吸入回数。

 2つ目にCOPDが関連しないと考えられる人で、なかなかよくならない人の喘息の人に、スピリーバの吸入を付け加えたところ、改善をみた人、著効の人がいることを確認しています。そういう人は、スピリーバを試してみることで、実際に改善が認められますから有効がどうかわかります。無効なのに漫然と使う必要はありません。「年のせいで元気がないのだ、息切れするのだ」と思っていた人が、この吸入でよくなった人もいます。タバコの副流煙(旦那さんがヘビースモーカーだったとか、ご家族の喫煙など)で、肺気腫が起こったり、公害の影響を受けた人にも効果があります。
 ただし、緑内障、眼圧亢進のある人、前立腺肥大があり排尿障害のある人、心疾患や他疾患のある人は医師判断が必要です。
 喘息治療薬もどんどんまた新しいものが出てきます。COPDの薬も「シーブリ」以外はわかばで紹介してきました。カタカナの薬がどんどん増えます。わかばを手元にためておいて必要な時に出すということも大切です。10、11頁に①~⑧の薬を紹介。
 各地の交流会や毎月の私の講座にしても、「もう進歩は不要」という人は別として、学んでいくこと、試していくことは必要ではないでしょうか。

256. 来年のわかば会40周年記念行事に向けて

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喘息大学学長 清水 巍

 第12回成人喘息ゼミナール、世界喘息デー・県民公開講座に参加された皆さん、有難うございました。ご苦労様でした。
 私たちは、このような大規模な2つの行事を成功させた次の日から『来年に向けての準備』を始めます。まず、今回の実績を振り返ってみましょう。

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この状況を土台に、皆様にも来年に向けての準備を開始して頂きたいと存じます。

① 薬の進歩さえあればよいということではなく、教育(学習)は大切であり、交流を深めることが大事であることが証明されました。それは多くの方の感想で明らかです。キャンセル10名(事情あり)が出たのは残念でした。

② 二宮清純さんという「オリンピックで活躍した喘息を持つ選手と交流のある有名なスポーツジャーナリスト」は、「わかば会はスゴイ。396号もの会報を出している。私もIT会員になる」と県民公開講座で公言されました。ゼミにご寄付を頂いた製薬会社の方々を1名ないし2名ゼミに招待しました。職員のミニ講演や患者さんの体験発表にビックリし、感激しておられました。製薬医療関係者でさえ、感心する内容を持つに至っています。

③ 「どうすれば現状を改善できるのか」これが「わかば会の39年の歴史」でありました。その会が来年40周年を迎えるのです。

 以下のような人を沢山生み出すことが、私たちの使命ではないでしょうか。ある人がフェイスブック上で次のような書き込みを送って下さいました。

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 40年目の集大成ということで、来年の行事を迎えます。2014(平成26)年5月17日(土)・18日(日)、金沢都ホテルを予定しました。成功させるために3つのことを追求します。

Ⅰ)40年の歴史の中で、よかったと思われるものを拾い出す。例えば、体験交流会の前の「エンカウンター」、好評だった先生の講演など、広く意見を聞いてよかったものを取り入れ、新しいテーマに変更し再現します。

Ⅱ)喘息の人は目新しいものが大好きです。職員の講演、上原先生のアートワークなど、初めてのものに感動し、高い評価を下さいます。新しい企画、内容、初めてのもので何を選ぶか・・・これを探します。

Ⅲ)わかば会員なら誰でも参加したくなり、参加できるようにするためにどうするのか、40年記念式典に相応しい取組みを考えていきましょう。喘息大学創立35周年、日本喘息患者会連絡会結成25周年、ホームページ開設15周年を同時に迎えます。全国の関係者にも参加して頂ける企画が必要です。

 「自分なら、どんなものを期待するか」 どうぞご意見をお寄せ下さい。みんなで作ってまいりましょう。

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 好酸球性中耳炎の権威・飯野ゆき子先生は「好酸球性中耳炎の患者さん全てに鼻洗浄療法をお勧めし、全員がやっています」と、今年度春の学会で話をされていました。「強い圧をかけないでやること、耳に水が行かないよう注意してやること」と話されていました。わかば会員の好酸球性副鼻腔炎・好酸球性中耳炎の人は、全員やっておられるでしょうか。
 鼻洗浄療法も大切ですが、毎日のステロイド吸入療法で、吸った薬を鼻から呼出するということも人によっては大事です。次頁に追加最終報告用紙を掲載します。FAX、郵送、外来への持参などでご報告下さい。但し、一度提出した人は変動があった人のみで結構です。データを再集計して、皆様に報告致します。
 よい、と言われることを実践して、40周年記念行事を迎えましょう。

257. 目標を持つということ

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喘息大学学長 清水 巍

 当り前のことを「何を今さら」と思われるかもしれませんね。私も「こんなことをこの欄に書く」とは夢にも思っていませんでした。
 「70の手習いでゴルフを始めたこと」皆様はもうご存知でありましょう。ゴルフを長年やっておられる「わかば会員」の人が実に多いということも最近知りました。その人達の足元にも及ばないのですが、喘息ホットニュースとフェイスブックに以下のように書きました。初めてグリーンに出たのは昨年は春1回だけでした。その時のスコアは膨大だったのでしょう。記録が残っていません。今年の春は5回行くことができました。

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 「100」を切ろうという目標が出てきたのです。「百獣の王」と言って、なかなか
100を切れない人が多くいるそうです。足踏みしたり、戻ることは覚悟の上です。
 7月号の表紙は鮎友釣りを定番にさせて頂いてきました。今年は初めてゴルフにしました。では、鮎の友釣りはどうか。昨年は601匹でした。今年は700匹の目標を立てたのです。

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 今年の解禁日は、左34匹、次の日は有休にして右25匹、6月27日現在102匹です。
 しかし振り返って考えますと、700匹という目標があったからこそ、34匹、25匹と粘って釣ったのです。「70才で新しいことに挑戦しよう」という目標で、ゴルフの練習を始め、鮎は700匹という目標があるので、結果は最終的にどうなろうと楽しめると気づきました。釣るのが趣味で、食べるのはせいぜい1回の釣行で2匹です。あとは体力作りになった、運動になった、という結果と「もらって頂いた方々に少しは喜んでもらえる」という喜びです。お世話になっている人のほんの一部ですが、「ささやかな恩返しができる」ということです。
 白髪も増え、年を感じる世代だからこそ、目標を持つことの大切さを感じました。そして、それを達成するための方法は「鮎は釣られて減っていくので、有休をとるなら早目にとった方がよい」とか、ゴルフなら「まっすぐ飛ぶように指導してくれる先生に習うこと」などの手段と方法の大切さにも気づきました。
 合わせて今年は参議院の選挙の年です。アベノミクスは「小泉さんの構造改革」と言葉違っても、やることは一緒です。大企業や財界は喜ぶけども民滅ぶ。社会保障を削り、原発を世界に売り飛ばす。戦争のできる国にするため憲法を変える。こんな政治は変えなければなりません。700人との対話も目標です。6月28日現在、355人、目標比50.7%まで達成しました。わかばに書かせて頂いても対話したことの数には入りませんが、私の意見や主張を理解して下さる人もおられるでしょうし、共感や支持が広がるかもしれません。但し主義・主張は個人の自由で尊重されます。
 私の個人的目標ばかり書かせて頂きました。しかし、それを達成するという点では「ケガや失敗をせぬよう、皆様に心配はさせない」約束を致します。その上で、医師としての本命「皆様に役立つこと、皆様をさらによくすること」を来年のわかば会40周年記念行事までの本命目標にしたいのです。今号の札幌の報告やお便りのコーナーでは、宮下武さんをはじめ、ご苦労の暁に目標を達成されたお手紙が並びました。どうぞ、お読みになってみて下さい。その上で皆様も「喘息、健康、趣味、生き方」の目標について、再チェックしてみて下さい。
 皆様のご協力や、ご努力、ご奮斗が無ければ、私の本命とする目標の達成は有り得ません。皆様もできそうな目標を立ててみて下さい。その目標を達成して「40周年行事に金沢へ行き、話そう」とか、「この誌面を契機に、さらによい目標を立て」人生での達成に向かって挑戦して下さい。
 それらの交流も伝えあう「わかば」として、今後の「わかば会活動」と誌面を作ってまいります。目標への挑戦が喘息や合併症をよくするに違いないと思います。

258. ステロイド吸入鼻呼出法まとめ

喘息をよくし治すために(258)
喘息大学学長 清水 巍

 1月号に「お年玉」を、お互いに交換しましょうと、私からは「鼻から呼出しては」という提案、皆様からは「結果報告」を頂くことにしました。その実践結果がまとまりましたので報告致します。

Ⅰ)実施状況の調査と報告
 会報「わかば」郵送の場合は振込用紙で更新をお願いしています。その他に城北診と寺井病院の外来で、その振込用紙を使わずに更新受付がされました。とにかく振込用紙を使って更新された今年度の会員の人は654名おられました。そこに鼻呼出法について○印をつけて頂いた調査結果をまず報告します。

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 30%の197人≒約200人は実践されたということです。「わかば」を読まないことには返事を書けませんから、かなりの人がお読みになり、誠実に返事を下さったということです。

Ⅱ)中間集計結果・「わかば4月号」の掲載
 84人の2月末までの実践報告が4月号に載ったのですが、鼻に有効だった人が24%、耳に有効だった人が4.7%でした。有効と思った人がおられることが分かりました。

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Ⅲ)最終集計結果
 アドエア←→シムビコートを交代した人、アドエアディスカスをアドエアエアゾールに変更した人、その他様々に変更を試みたにしても、最終的に5月、6月の時点でどうなったのかの最終報告を頂きました。
 中間集計とダブる人がいたり、今回初めて報告する人がいたりしましたが、その区別は特に問題にせず、中間集計を上に再掲し、下の最終結果と比較しました。
 結論は、最終集計者の方に鼻や耳に効果があったという人が多かったのです。

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Ⅳ)書かれてあったコメントから
 鼻呼出法を開始したら、3日後から鼻づまりや鼻水などの鼻症状が改善し、ビックリしたという人がいました。「自分は効果が鼻や耳に対しては感じられないので、中間集計時には報告をしなかった。しかし理論的には鼻から呼出した方がよいと賛同し、ダメ元でもよいからと続けてきた。5ヶ月続けてきたら鼻の匂いが戻ってきたし、耳も聞こえがよくなってビックリした。それで最終報告に応募した。」という人もいました。
 中には「喘息もよくなり、長い間プレドニン1錠を減らせなかったのに、1錠と0.5錠を交互にして、今では0.5錠毎日に減量できて嬉しい。」という人もいました。「耳のウミが少なくなった」 「好酸球性中耳炎がよくなっていると先生に言われた」 という人もいました。難治性の好酸球性中耳炎がよくなる人もいるということは、「いかに毎日毎回の、うまずたゆまずの努力の蓄積が重要か」 ということを物語っています。よくなった人はどんなに嬉しいことでありましょう。
 勿論、「まだ効果は鼻にも耳にも認めません」 という人は多いのです。そういう人の中にですが、「喘息だけは少しよくなったように思う」 という人はいました。その延長線上で、鼻や耳にも少し効果がやがては出てくるかもしれません。

Ⅴ)考察
 もともと鼻や耳が悪くない喘息の人は多数おられます。そういう人がいくら鼻呼出法をしても、鼻や耳に効果を感じないのは当り前でありましょう。しかし、口から吸った薬を放出するのも、鼻から呼出するのも、大気中に放出することに変わりはありませんし、鼻呼出の場合は、鼻から出した後、もう一度鼻から息を吸って気道の死腔スペースに残った薬剤をもう一度、気管支や肺に奥深く吸い込み、そして鼻から放出して終わりとしています。口から出してしまえば、もう一度吸っても残りは死腔に少ないわけですから、鼻呼出より気道への効果が落ちます。
 やれる人は鼻からの呼出をお勧めします。面倒な人とかイヤな人は好きにすればよいのです。人、それぞれですから。
 私はこの調査とお互いのお年玉を通じ、①京大の先生が学会に鼻呼出法の有用性を報告されたこと、質問して確認し試すことができたということで、学会や医学的文献は重要、②調査してみないことには確信できない、③長期に続けた方が効果の出る人は多くなる、④「わかば」で知らせて、広がったのだから、わかば会は重要、という4点を学びました。

結論:吸入ステロイドの鼻呼出法は継続する価値がある。全ての人に効果が出るわけではないが、改善する人もいる。会報「わかば」や「わかば会」は有用である。皆様の報告に感謝。
以上が、当面の私の結論です。

259. わかば400号発行記念

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喘息大学学長 清水 巍

 2005年5月10日、ちょうど「わかば発行の日」に300号を会員の皆様にお届けしました。5月の青空に泳ぐ鯉のぼりが表紙でした。「300号記念誌です。まだまだ天高く泳ぎましょう!」という言葉が添えられていました(裏表紙参照)。
 それから8年4ヶ月目の9月に400号を迎えたわけです。1号も欠かさず毎月26頁の会報をみんなで作り、みんなに配ってきたのです。まずもって会員の皆様、役員会の皆様、事務局や発送作業のボランティア、応援して下さった石川県、金沢市、小松市、石川民医連や公益法人となった石川県勤労者医療協会、職員の皆様、他に感謝申し上げます。
 記念の今号の表紙は何にするか? 9月の青空に輝く「銀杏」の葉にしました。まだまだ9月になっても若葉色、緑色でキラキラ輝いています。古い話で恐縮ですが、私の小学校にも銀杏の大木が校庭にありました。今も健在のようで長寿の木です。秋まで若々しい葉をつけながら、10月には黄色になっていき、11月には銀杏の実をつけ、地上に葉は落ち散っていきます。丁度、第21回喘息克服月間の3ヶ月の間に、変身を遂げます。皆様もこの克服月間の間に、よい方に大変身を遂げて銀杏の実のような収穫を得て頂きたいという願いを込めました。
 3つの嬉しいニュースがあります。1つは地元の北陸中日新聞が、石川県の患者会で「400号もの会報を継続してきたのは珍しい。取材させてほしい」と言ってきて下さったことです。私たちの中では当り前のことだとしても、新聞のようなツールで評価され、他の方々にも知られることになり、他の患者会、会報にも勇気を与えることになります。その記事は新聞掲載されたら紹介しますが、私たちにとっても記念となります。石川県喘息友の会ができたのは1974年(来年40周年を迎える)でした。その当時、患者会として新聞に出たのは「脳卒中友の会」と私たちの会の2つしかありませんでした。北陸中日の記事は40周年記念行事に弾みをつけてくれます。
 2つ目は「喘息克服」に弾みをつけてくれる新薬のニュース紹介です。この秋には1日1回吸入すればよいという新しいステロイド吸入剤と長時間気管支拡張薬の合剤が出たり、他にも色々と新薬が出てくるということです。
 3つ目は、40周年記念行事の一環として、第13回成人喘息ゼミナールと第2回県民公開講座が2本立てで行われますが、県民公開講座の特別講演講師に谷口正実医師に来て頂くということになったことです。(下に紹介)
 先生は私より14才お若い医師ですが、会員にも多い「アスピリン喘息」の権威であり、チャーグ・ストラウス症候群や副鼻腔炎、好酸球性中耳炎についても臨床経験豊富な日本での第一人者のお一人です。このような先生をお招きし、石川県はじめ日本全国の喘息患者さんやご家族が「患者さん向け講演」を直接聞き、質問もできるというのは夢のようなことです。ゼミ参加者は、前の座席で見たり聞いたりできます。一般の方も座席は後ろになるかもしれませんが、無料で参加できます。

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 3つの嬉しいニュースを前にした、この400号発行記念に続く第21回喘息克服月間です。「喘息がよくなった」ということで、「もうこれで十分ではないか」というような油断も見られます。薬の進歩、わかばの継続読者としてのご努力で、「安心できるようになった」ということは喜ばしいことです。長年の夢や希望が実現しつつあるのは嬉しいですね。しかし、社会保障が改悪され、医療制度も改悪され、消費税の値上げや物価の値上げ、年金や収入の低下が予想される時代です。

①喘息をもっとしっかりよくすること、薬を使わなくてもよくなったり、最小限で十分コントロールできる自分を目指す

②鼻や耳の合併症をよくする ③余病の早期発見や克服 ④よりよい人生の実現       などが、克服月間の目標です。銀杏が実をつけるように、実現して下さい。

 9月29日(日)の加南・金沢支部総会を皮切りに、全国の交流会を成功させ、500号に向けて歩みを進めましょう。
 10月2日(水)喘息相談デーには、皆様からの相談や懐かしい近況報告を電話で直接聞くことができるのを楽しみにしています。 

260. よいコントロールと「かけがえのない思い出残し」を

喘息をよくし治すために(260)
喘息大学学長 清水 巍

 昔から喘息発作好発季節は、秋が一番と言われてきました。皆様の具合いはいかがでしょうか。よいコントロールができているかどうか、試される秋ですね。この期間が全く無事であれば、良好であると判断してよいのです。
 喘息の治療には、「アンダートリートメント(不十分な治療)」、「よいコントロール」、「オーバートリートメント(過剰な治療)」と3つの区分があります。トリートメントというのは、「治療」の英語です。アンダー(不十分)な治療であれば、ストメリンやメプチンエアー、サルタノールなどの短時間作用型の気管支拡張剤が頻回に必要となります。それを何回か使えば大丈夫だから、よいコントロールと思ってはならないのです。それを使わなければならないということ自体、不十分な治療で満足している証拠であり、回数の多い程不十分なのです。発作の回数、ひどさ、点滴の数も不十分さの指標です。
 オーバートリートメントは、使わなくてもよいプレドニンや薬剤を過剰に使って、「何でもないから、よいのだ」と思っている状態です。よいコントロールは真ん中の適切な治療です。それを見極めることが、この秋の課題です。薬物のコントロールさえよければよいのではなく、この会報や交流会で学んで、根本的によくする力を増すのも、この秋の課題です。
 この稿に続く「医学的新情報」に、どの会社の薬剤を使うと、どういうメリットが出てくるのか、3つの「代表的で凌ぎを削っている薬剤の特徴」を紹介したので、よいコントロールの参考にして下さい。
 読むだけでバッチリ分かる人はよいのですが、解説があったり、患者さん同士の評価や意見も聞けた方がよいわけですから、私の毎月の講座(無料)、各地講演交流会、来年のゼミナール参加も検討して下さい。
 このような、当面の必要な努力や学習と共に「かけがえのない思い出残し」が大切だと思うようになりました。わかば発行400号を越え、「わかば会発足40周年記念ゼミ」を迎えるなどを前にしますと、昔を思い出し、昔の記録を探したりしました。写真、わかば、ビデオや記録が残っていると、それは「思い出」を膨らませ、懐かしい貴重な記録、記憶として甦ってきます。
 わかば会も40年を迎えますと会員の高齢化が進みます。50周年記念を無事に皆様と共にお祝いし、迎えることができるのかどうか、考えておかなければなりません。私もその時、82才になるのです。
 先のことはわからないので、仕方ありません。残された貴重な年月と時間、「交流と生きた証し」を皆んなで作り、残していくことが大切ではないでしょうか。そういう点でゼミの記録(右写真)や諸行事、福島の人を励ます集い、来年のわかば会40周年記念行事やゼミは重要です。

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 高知の廣田さん御夫妻の御努力はプロ並ですね。素晴らしい記録です。参加すれば、貴重な思い出や記録を残すことができ、安いお金で買うことができます。但し、パソコンやDVDを見る装置が必要ですが。写真だけでも翌日に買えるような工夫があるといいですね。
 「福島の喘息患者さんを励ます集い」を来年の福島県三春町・滝桜(推定樹齢1000年超えの紅枝垂桜)を見て、磐梯熱海温泉の「華の湯」に4月16日(水)に泊まり、講演と交流会を開催したいと準備中です。石川県からは、20人くらいがバス代その他込み3万円くらいの費用で参加しようと計画しています。詳細が決まり次第ご案内します。
 東北の人、関東や他地方の人も列車や車を使って参加して頂ければ賑やかになります。その他、皆様と共に貴重な思い出を作り、残していこうではありませんか。それが「生きた証し」です。

261. 寒い冬に備えよう

喘息をよくし治すために(261)
喘息大学学長 清水 巍

 台風が10月後半になっても28号などとなって、日本に上陸する異常気象が続きました。今年の冬は暖冬となるのか、それとも昨年よりも寒い冬となるのか、確定はできません。分かることは「備えを十分にしよう」ということです。
 加南・金沢支部総会、関東交流会、関西交流会が無事に終わり、喘息治療の進歩や新薬のこと、「大切な思い出作り」のことなど、お話をしてきました。寒さを迎えるにあたって、会員の皆様がよりよく「乗り切る」ことができるよう必要な点を紹介します。

① ステロイド吸入薬の使用について
 シムビコートのスマート療法について前号の12ページに、定期吸入の上に「苦し
いと感じた時に、サルタノールやメプチンエアーを吸うのではなく、シムビコートを追加吸入すると気道の好酸球が減少し、喀痰の好酸球が減少していくというグラフ」を紹介しました。昨年の8月号のわかばのこの欄で、「 Symbicort Maintenance and Reliever Therapy 」=シムビコートのSMART療法=スマート療法と言うのだと解説しました。これが徹底した人は、「好酸球を減らすことができず、気道を拡張するだけのサルタノールやメプチンエアー」などの携帯用気管支拡張剤を使用する人が減少しました。そして、これまでより良くなりました。
 これと同じようなことが、他のステロイド吸入剤でも「可能になる」方法を紹介します。アドエア・ディスカスやアドエアーを使っている人は、100、200、500などのステロイド吸入含量の薄いものから濃いものまで持っておくと可能なのです。ピークフローをつけた喘息日誌、あるいは自覚症状で、よくなっていれば濃度の薄いのを使用し、ピークフロー値が下がったり具合が悪ければ濃いのを使用して乗り切る、という術を「自分が自分の主治医」としてマスターするのです。
 私が鮎の友釣りをすることは、もう皆様ご存知です。友釣り竿は11m、9.1m、8.1m、7.2m、6.3mを持っています。「川幅」と「どこをポイントに釣るか」で選びます。水中糸は0.1を中心としながらも0.07、0.2、0.3、0.6を選択します。針は6.5、7.0、7.5、8.0から選びます。各種類を持っていて、状況によって選ばないことにはうまく釣れないのです。同じようなことがステロイド吸入にも言えます。
 ステロイド吸入薬もベースとなるものを決めながらも、各種使い残しなどがあれば、使用期限を確認し、濃度や種類を確認しつつ使ってみるのもよいでしょう。喉嗄れが起こればオルベスコの使用で続けて、改善したら次にどうするか決めるというのも一方法です。キュバールやアズマネックスも減量したり、増量したりというのも有り得るのです。名前を付けるとすれば、「状態に応じたステロイド吸入増減療法」ということになるでしょうか。やってみて「よいと確信が持てたら」試して下さい。最高使用量を上回らない注意は必要です。

② インフルエンザの予防
「風邪は喘息にとっても大敵」です。特にインフルエンザは「大敵中の大敵」です。
予防に勝る治療はありません。毎日気をつけた手洗い、ウガイ、風邪やインフルエンザの人に近付かない、マスクの使用など気をつけるべきことは実行しましょう。
 しかし、インフルエンザワクチンは射っておいた方が安心です。100%予防できるというわけではありませんが、かなり予防できます。家族みんなが射っておいた方がいいでしょう。インターネットからの情報を紹介しておきます。成人は11月に1回接種しておけばよいのです。

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③ 肺炎の予防
 肺炎球菌ワクチンは1回射てば5年間は有効とされています。自治体によっては助成されて料金が安くなっている所も多くなりました。5年前にしたという人は、5年が過ぎておれば再接種が可能です。

④ 喘息克服月間の最後の月
 11月20日の新患学習会を利用されるとよいでしょう。秋を上手に乗り切ったでしょうから、冬も上手に乗り切って下さい。

⑤ 11月末に新薬登場
保険が効くようになり3種類が登場します。やがての「わかば」にご注目下さい。

262. 今年を振り返って

喘息をよくし治すために(262)
喘息大学学長 清水 巍

 2013年(平成25)が終わりを告げようとしています。皆様にとって、この1年はどんな年だったでしょうか。「もう正月が来るのか、時の過ぎるのは早い。だんだん早くなるような気がする」とおっしゃる外来の患者さんも多くなっています。1年をしっかり振り返ること、それが次の年、残された人生を全て悔いなく生きるバネになるでありましょう。
 今年の1月号には「おたがいのお年玉」ということで、「毎日使用しているステロイド吸入を、鼻から呼出する方法」を私から紹介、プレゼントしました。皆様からは「その実践報告」を頂きました。10月号の14~15頁にそのまとめを掲載し、三重での研究会に報告しました。

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 上のような結果を得たのです。鼻から呼出するので、「鼻と耳に開口している耳管を通じて耳が良くなる」のは分かるとして、喘息がどうして「さらに改善する」のでしょうか。鼻と気管支は1本の気道であり、同じく好酸球の炎症があり得るので、鼻がよくなると喘息もよくなるというのが1つの理由です。もう1つは「鼻から呼出するけども、もう1回深く鼻から息を吸い込み、鼻から呼出する=2度気管支へ吸入し、深く吸い込むこと」が効果を上げるのです。
 食前のステロイド吸入→喉ウガイ→口腔のススギ・ウガイ→食事→歯磨き(嗄声と食道・胃カンジタ症防止)→歯間ブラシという、吸入による副作用防止と鼻や耳も含めた効率的な鼻呼出法は、「日本で最も良い合理的な吸入療法」と言えるのです。毎日の習慣的な吸入で、「最も副作用を防ぎ、最も効果を上げる方法」をわかば会は確立しました。それを会員全てに、そして会員外の喘息患者さんにも知らせ救うと共に、真理を伝えるわかばの会報を勧めていこうではありませんか。
 昨年の12月号のこの欄では12ヶ月分の表紙を「年の終りに」ということで掲載しました。今年は主な行事の写真を掲載します。

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 会合に集まっての行事・学習・交流も活発に今年も行われました。全国各地の人と共に、新しい参加者と共に各地で行事を開催しているという喘息患者さんのグループは、わかば会、日本喘息患者会連絡会など私たちだけなのです。岐阜のほむらの会、愛知のわかさぎ会なども活発に動いています。特筆すべきだったのは、三重の花菖蒲の会です。ずーっと中断だったのですが、何人もの会員さんの御協力で花菖蒲が元気になりました。次ページ紹介のお便りは、その典型例の一つです。
 私は全国各地を回り、今年を振り返って「重要なこと」に気づきました。「人は過去にとらわれることなく、今を生きる」というのが大切だという交流分析や心理学を学んで来ました。しかし、「過去の良い思い出を大切にして、過去を生きる、現在に活かして今を生きる」ことも大切なのです。幸せに生きるというのは、今だけを大切にするだけでなく、過去の思い出や人間関係を大切にして生きることではないでしょうか。
 宮岸会長が「満州時代の幼少時期のことを風化させず、全国生き残りの人との交流に出かけ、2世の集いに奔走する」のを見るにつけ、自分も喘息大学時代や同窓生、昔の友人たちとの会合を大切にして、喜びを交換し生きているのを考えると、「人は今だけを生きるのではない。過去の思い出や家族、幼な友達、喘友も大切にし、今を生きるのだ」と年をとったせいか思うようになったのです。
 その大きな節目が来年5月にやってきます。1974年3月に石川県喘息友の会が結成されて40周年記念行事を第13回成人喘息ゼミナールと共に迎えます。喘息大学創立35周年、日本喘息患者会連絡会結成25周年行事も共に行うことになります。この長い歴史・時間に刻まれた思い出は、今を生きる土台の一つになっているのです。「過去を思い出し、現在に重ね、過去も、現在も、未来も、よりよく生きる、輝かせて生きる」キッカケ、場、チャンスにして頂ければ幸いです。
 喘息大学時代の夕食交流会「職員の踊り」も青木元師長の演出で再現します。勿論、神眞澄さんの正統派の踊りで夕食交流会の冒頭に花を添えて頂きます。記念、節目の時に花を添えて頂きました。そういう伝統も大切にする、新しい皆様の出し物も歓迎する、歴代の事務局長や看護師さんにも参加して頂いて、共に祝う、交流する、それは残された未来を悔いなく生きる再原動力となります。
 私は今年各地の交流会で、「50周年まで生きれるかどうか分からない。しかし、あと10年は皆様も私も元気でいたい」「あと10年、当面共に頑張りましょう」と呼びかけてきました。私が一番早くこの世を去るかもしれませんが、「今年を振り返って」に、言いたい放題を書かせて頂きました。よき年をお迎え下さいませ。