喘息をよくし治すために(1992)

1.はじめに

息をよくし治すために(1)
喘息大学学長 清水 巍

  「着眼大局、着手小局」
 喘息大学1期生の卒論集の巻頭言は「愚公、山を移す・・・・我ら、成人喘息の山を移さん」というものでした。そして私が始めて世に問うた「みんなで治す喘息大学」の本の「はじめに」の出だしは、「成人喘息は良くなるのか?治るのか?」です。
 以来、7年から8年の歳月が流れました。喘息大学は仙台、長野、名古屋、大阪、和歌山、岡山、鹿児島にもでき、石川を含めると8校になりました。卒業生を出している大学も出てきました。全国の各県に1~2の患者会ができ、日本喘息患者会連絡会も結成され、来る9月19日(日)には東京・豊島公会堂と区民センターで、第1回喘息患者全国の集い(仮称)が開催され、翌日、厚生省交渉が行なわれます。
 よくなり治ったと言える人も全国に出現しました。
 ふり返りますと「百歩の歩みも一歩から」というのが実感です。外来のことから話しをしてみましょう。小松みなみ診療所の代診に行った時のことです。私が来ているとは知らず、喘大入学をキャンセルした患者さんにバッタリ出会いました。彼女は何回か喘息と肺炎で城北に入院したことがあります。「あら、先生、こんなとこで」「お久しぶりですね」、診察と投薬の話が終りました。せめて”わかば”を今年から読むように勧めました。
 また喘息が悪化して入退院、好酸球肺炎、細菌性肺炎をくり返して、次第に肺や気管支がボロボロになっていく危険があったのです。患者さんにたまたま会ったにしても、診察するにしても、その人の長い将来を見通して”わかば”を勧めました。
 以上はほんの外来の一コマに過ぎません。入院ではその連続でもあります。城北病院の東3病棟の最長期入院患者、男のNさん、女のNさんを例にあげます。東3病棟に入院したことのある人なら「ああ、あの人か」とピンとくるでありましょう。10数年以上の入院患者でした。この最重症のお二人が良くなり、少くとも退院できるようにならないと、”喘息はよくなり治る”と言っても説得力が無いと、私自身が思っていました。「本にいいこと書いたって、ホラ、あのNさん二人を見てみれば」という声は現実にありました。そのNさんたちですが、男のNさんはすでに退院、女のNさんも病院の近くにアパートが決まり、退院が決まったのです。おめでたいことではないでしょうか。
 男のNさんは「こだま会」の会長をするまでに成長し、退院時には点滴パワー、ステロイドパワーで帰りたいという人もいるのですが、いらないと言って退院されました。女のNさんは手紙を見せてくれました。同室だった川崎の患者さんに救急カードを送ってあげたそうです。手紙には「駅で一歩も動けなくなり、声も出なくなった時、救急カードで助かりました。見ず知らずの人に見せたら、助けてくれたのです。声が出なくなるって本当にあるのですね。」という感謝の手紙でした。
 ここまで来るのには本人の努力、家族の努力、全国の患者さんの努力、わかば会、喘息大学、医療スタッフの力がありました。まだ途中経過ではありますが、祝福してあげてもよいのではないでしょうか。死亡退院ではなく夢みたいによくなられての退院なのです。
 こういう日が来るのを、私は実は8年前から予知していました。喘息大学の1期生が山中温泉で卒業したのを見届けた日に、私は日本中の喘息の人たちが良くなり、治り得ることを確信しました。この両Nさんもよくなるはずだと大局的には見通していました。そして8年間かかって、やっと御本人がその気になってくれたのです。8年間×365日の一コマ一コマの積み重ねが必要でありました。
 『喘息をよくし、治すために』というシリーズの出発点にあたって、私はこういう大局的な長期的な観点に立てば『よくし治り得る』ということを申し上げたいのです。全ての人に希望があると申し上げたいのです。患者さんと御家族も大局的な観点を持って下さい。
 第二に、こういう観点に立った医療スタッフの力、患者さんとパイプを持っていなければ、治るものも治りにくいだろうということです。超重症の両Nさんでさえ良くなっていくようなとことパイプを持ち、その穴がつまらないようにしていけば、全国の大ていの喘息はよくなり、治っていくのだと思います。
 第三の観点について申し上げます。事務局の杉本君が書いているように、医療制度が悪くなるのを防がねばならない、酒井君が特養老人ホームについて書いているように、老後を美しく過ごせるような運動を伴う広い観点を持っていく必要があるということです。
 今よくても、老後がみじめになったのでは高齢化社会をよりよく生き抜くことはできません。喘息がよくなり、治っても老後が安心して暮せなかったら何にもなりません。石川県に1施設を作るという運動ではありません。石川県に喘息大学を始めて作るのに匹敵する仕事と考えています。そういう影響が石川から全国に喘大と同じように発進するでありましょう。
 病院隣接の特養というのは全国で始めてです。不肖私めは去る3月29日、石川民医連(4病院3診療所)の会長に選出されました。喘息の患者さんとの信頼関係、その他の活動が評価されてだと思います。喘息への手はゆるめませんが、仕事が倍に増えました。それら全てを前進させる中で、喘息をよくしていかねばなりません。特養建設の成功は会長として初試練です。
 喘息をよくするのみならず「日本人全体の老後を明るくする善意の一灯」、拠点づくりの御協力を皆様にもお願いを致します。わかばで見たからとか、清水先生の文を読んだからとか、日本人全体の老後を明るくするのに役立つならとか、皆様の思いを書いてお寄せ下さい。
 公害を少くしたり、日喘連の活動を活発にする、自然環境をよくしていく、石川県の手取川でも鮎が釣れるよう運動を進め友釣りにも行く、そんな諸々の広い運動もしていく中で、喘息をよくし、治していきたいなあと考えています。
 孔子の弟子、筍子は「着眼大局、着手小局」を説いています。最近 Think grobaly Act localy (スインク・グロバリー、アクト・ローカリー、大きく考え、身近な所から実行する)の大切さが言われていますが、2400年前に中国では同じ意味の言葉が使われていました。
 そういう長く深い広い眼をもって、みんなで喘息にあたるなら、「喘息は必ずよくし、治せる」のではないでしょうか。

2.最新の吸入療法

喘息をよくし治すために(2)
喘息大学学長 清水 巍

 吸入療法も日進月歩です。1992年時点での(インタール・エアーが出だした頃の)吸入療法を紹介します。このページをコピーして渡せば、どんなふうに当面、吸入すればよいか分かってもらえるようにということを、念頭において書きます。

Ⅰ 交感神経刺激剤の吸入

 気管支拡張の吸入と言ってもよいでしょう。気道の交感神経を刺激する薬を投与すると、気管支の内腔が広がり、呼吸が楽になってきます。気管支を取り巻いている気管支の平滑筋がゆるむわけです。要は気管支の内腔を広げる吸入薬のことです。
 サルタノール(1回2吸入)がメプチンエアー(1回2吸入)が予防的な吸入薬としてよく使用されます。定量噴霧式吸入器 (Metered dose inhaler 略してMDI)で交感神経刺激剤の吸入を行う場合は下表の注意事項をキチンと守るようにして下さい。交感神経刺激剤の内服薬を飲んでいる場合(サルタノールとかメプチンの錠剤)は内服薬の効果が半分出ていますので、1回の吸入は1吸入にして下さい。飲まない場合は1回に2吸入を1日2~4回、定期的に吸うのです。
 下の表については、3のように離して吸入した方がよいという先生、口にくわえて吸ってもタイミングよく吸入を同調させればよいという先生、スペーサー(吸入補助具)を使ってやった方がよいという先生がいます。要は気管支に十分に届き、沈着させる必要があるということです。

(表)正しいMDI吸入療法の実際

  1. 用具を振って製剤をよく混合する。
  2. 口を大きく開けて深く吸いこむ用意をする。
  3. 唇から3~4センチ離した位置から吸気の直前に噴霧する。
  4. 換気を均等に分布させ、また、末梢気道にうまく薬剤を到達させるためにゆっく
  5. り深く吸いこむ(全肺気量レベル)
  6. 吸気後は10秒ほど息堪えをする。
  7. 噴霧間隔を5分以上置く。
  8. やり方上手、下手が大きく影響する。

 従来は3秒間息を止め、2回目をする場合は1分間の間隔をあけるよう指導してきました(みんなで治す小児喘息・合同出版134ページ参照)。それで十分効果のある人は、それでよいのですが、最近では息こらえが長目の方がよい、気管支拡張剤の吸入は5分後に最大効果が現れるので2吸入目は5分後に、がよいとされてきています。
 気管支拡張剤の吸入を定期的、予防的に使うなんてとんでもないとされた時期が長く続きました(ランセットという英国の医学誌にハンドネブライザーの販売量の増加と共に喘息死が増加したという論文が掲載されたため)が、最近では「交感神経刺激剤の内服薬のかわりと考えればよい」という考え方に変ってきたのです。心臓に副作用が少く、気管支のみに選択的に拡張効果のある薬剤が開発されたためです。
 以上を1日、2~4回定期的に使用して喘息をコントロールしようというのが主流となりました。
 その上で更に苦しい時は従来と同じように、アロテック、ベロテック、ストメリン、ストメリンD、メジヘラーイソ、メジヘラーD、セダンゾールイソ、アスミドンエアーなどを1吸入するというわけです。これらの薬剤は成人の1回使用量は1吸入が標準です。計2吸入しても楽にならない時や、4時間以上の間隔が空かない時、次第に3時間、2時間と吸入の間隔が狭くなったり、息苦しさが増す時は早目に、病院に駆けつけて静注、点滴などの治療を受けて下さい。
 サルタノールやメプチンではなく、標準1吸入拡張剤をMDI吸入療法(定量噴霧式吸入療法)として使用される先生、MDI療法をしていても発作が起った時にはネブライザーか超音波ネブライザーで交感神経刺激剤(気管支拡張剤)の吸入を勧める先生もいます。
 1日1回か2回、息苦しくなった時にシュッと一つすればよい人や、それさえしなくても大丈夫な人はMDI吸入療法をせねばならぬということはありません。やがて、やらなくて済むことが理想です。このように幅の広いバリエーション(色々な対応の仕方)がありますが、気道が長く安定するその人に合った方法を主治医と相談して、選ぶことが大切です。

Ⅱ ステロイド剤の吸入

 中等症以上の喘息の人の場合にMDI療法に併用して、BDI療法(ベクロメサゾンという吸収されにくく、長時間気管支に届まって炎症を抑えるステロイド剤を定量的に吸入する療法)を行います。内服や静注、点滴のステロイドと違って、全身的な副作用が殆どありません。
 1回2吸入~4吸入を1日2~4回やります。ベコタイド(ウス茶色)、アルデシン(白色。先の蓋が紫紅色)、タウナスの3種類があります。
 通常は先きのMDI吸入の5分後に吸います。5分空けれぬ人は1分後でもよいでしょう。喉が枯れる、口内炎が出るなどの副作用がありますので、ボルマティックやインスパイヤーエース、その他のスペーサー(吸入補助具)を使った方がよいでしょう。このBDI吸入は間隔を空ける必要がありません。スペーサーの中に2フキないし4フキ入れて、しっかりと3~4回は吸って下さい。1回吸った後は10秒近く息こらえをした方がよいでしょう。
 これのみを1日1~2回やっておれば十分という人はそれでもよいのです。
私はMDIにしても、BDIにしても食前にやることを勧めています。その上でウガイを徹底的にする。それから食事をするのです。そうすると口や咽頭、喉頭部がキレイに掃除され、薬剤は胃に洗い流されていきます。吸収されるとしてもほんのわずかです。全身的には心配いりません。それからテオドールの内服を食後にお茶やお水と共に飲めばよりベターです。習慣化すれば忘れないし、前後にピークフローメーターを吹く(吸入前は黒丸印、吸入後は赤丸印をつける)のです。薬を飲み終って最後に喘息日誌(一冊500円、送料210円。ピークフローメーターを毎日記入できるようにした。申し込みは事業部へ)をつけると完成です。寝る前の吸入の場合は食事をせず、ウガイをし、歯を磨いて洗い流すようにして就寝して下さい。
 次はインタール、副交感神経遮断剤の吸入について書きます。わかば(石川県喘息友の会機関紙)を購読し、吸入療法をマスターし快適な生活を送って下さい。

3.インタール吸入

喘息をよくし治すために(3)
喘息大学学長 清水 巍

 インタールという喘息治療の吸入薬は発作が起こらないようにする予防薬です。中には吸入直後に発作が少し止まるとか、薬になるという人もいますが、それは極く一部の方です。
 イギリスのコックスという医師が新薬を開発しようとして実験をしているうちに(喘息のための新薬開発ではなく、別の実験のためだったそうですが)、インタールの粉末(DSCG、デイソデイウム、クロモグリケート)が喘息発作の予防に効果があることを発見しました。どうして、それが分かったと思いますか?その薬の実験を続けていた医師コックスが実は、アレルギー性の喘息(アトピー性喘息ともいってIgE・アイジー・イーが400単位以上あって、ダニや花粉などで発作が起こるタイプ)を持っていたのです。インタールの粉末を吸入しているうちに、自分の喘息があまり起こらなくなったのに気づきました。ひょっとしたらこれは喘息に効くのではないかと考え、喘息の実験に変更して効果が確認され、動物実験、人間への投与、追試が重ねられて全世界に使用される薬剤となりました。
 「ひょうたんから駒が出る」などということわざが日本にはありますが、偶然に大発見の芽が訪れ、それがモノになって世の進歩に貢献することになるなんて面白い話ですね。レントゲンという人が放射線を研究していて、偶然に自分の手の骨が透けて見え、そこからレントゲンの歴史が始まったというのに似ています。
このインタールという薬剤が日本で使用されだしたのは1970年(昭和45年)でした。ちょうどIgEの発見(日本人の石坂公成先生が米国のジヨンホプキンス大学で研究中につきとめる)が伝えられだした頃ですから、これで世界中の喘息は治ってしまうと言った先生もいました。
 その頃、丁度私は虎の門病院呼吸器科で研修中でしたから、恩師の谷本普一先生(現・慈恵医大第4内科教授)が外来で、インタールのダブルブラインドテスト(本物の薬剤とプラセボーと呼ばれる偽薬を一定期間、交互に投与して効果を調べる方法)をやっていらっしゃるのを、興味深く眺めていました。

①インタールの効果

 残念ながら全ての喘息を駆逐するという薬剤ではないことが分かってきました。しかしハウスダストやダニ、花粉、真菌、職業性喘息のみによる喘息の人や、アレルギー性鼻炎、花粉症の人には抜群の効果があることが判明しました。従って、この薬剤をしっかり使って(2週間から1ヶ月間)、バッチリ効果の出る人は外因性喘息、効果がパッとしないという人は内因性喘息が加味していると言っても過言ではありません。
 アレルギー性喘息の予防に効果があるだけでなく、外因型、内因型の鑑別(区別)にさえ役立ちます。成人になって発症した喘息の人は内因性のタイプの人が多いのですが、RAST(ラスト)、皮内テストや吸入誘発テストの結果、「あなたは内因型の喘息です」と言うと、ガックリされる方が多いようです。内因型と言われた方で、「先生はそう言うけど、まだ自分は外因が」と思っておられる方は、是非インタールの吸入を試して下さい。それでバッチリであれば外因型、いまひとつパッとしなければ、残念ながらやはり内因が主なのです。
 また運動誘発性喘息の予防にも効果があります。走ったり、スポーツをする前に吸入しておくと運動中の発作を予防します。

②副作用

 粉の場合は刺激性があります。インタール液やインタールエアーは刺激性が少なくなりました。その他の副作用は殆どありませんが、ごくまれに発疹、肺陰影の出現、悪心、口渇、重篤な気管支けいれんが報告されています。

③剤型と使用法

 粉末の場合はカプセルに入っており、1日4回、スピンへラーという吸入器で穴を開け吸入します。
液の場合はアンプルカッターでアンプルに穴を開け、アロテックやベネトリン、アレベールなどを医師の指示量で混ぜ、ネブライザーか超音波ネブライザーで1日4回吸入します。
 インタールエアーは最近になって使用できるようになった定量式携帯用噴霧器です。1回2フキ、1日4回吸入します。1本で112回噴霧できますから、丁度2週間で1本が無くなるはずです。
 インタールだけで予防できる人はそれでよいのですが、気管支拡張剤を吸入して5分後に、気管が開いてからこの予防薬を使うと効果が出る人もいますので、5月号の最新の吸入療法に基づいて、インタールを使って下さい。ベコタイド、アルデシンの先か後かの問題ですが、どちらも予防薬ですから、気管支拡張剤の後であれば、予防薬はどちらを先にしても構いません。いずれにしても食前に済ませ、ウガイを徹底的にして、それから食事にして下さい。

④合併症への使用

 気管支喘息の方はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、眼瞼炎を合併することがあります。インタールは外因性気管支喘息の予防に効果があるだけでなく、これらのアレルギー性の合併症の予防に効果があります。鼻に対してカプセルを4回粉末で吸入する場合は、ネーサルインフレーサーという器具を使って鼻に噴霧します。
 インタールの点鼻液を4回噴霧する時はマイクロフレーサーという器具で行います。
 インタールの点眼液は直接、目に4回点眼します。
 インタールのアンプル液を鼻からネブライザーで吸入すると、(ネブライザーのゴム管に鼻用のガラス管を購入して取り付け吸入)すると、鼻腔だけでなく、咽頭、喉頭、気管、気管支にも効果があります。気管支の奥の方への到達は、口から吸入した場合より少なくなりますが、鼻の奥、口の上の鼻咽腔、アデノイドのとこがイガイガするというアレルギー性鼻咽腔炎のある人には、鼻から吸入するのを試してみるのもよいでしょう。
 インタールは万能ではありませんが、アレルギー性、アトピー性、外因性の喘息の発作予防薬としては、内服の各種予防薬剤のどれよりも強力な効果を発揮する薬剤です。小児喘息や若い人の喘息には抜群の予防効果を発揮します。効果があるという人は自分に合ったインタールの剤型を継続して使って下さい。各種剤型のインタールを1ヶ月以上試して効果が無かった方は医師と相談して、どうするか相談して下さい。効果が無いのに使用し続けるのは医療費の無駄使いですから。

4.副交感神経遮断剤吸入

喘息をよくし治すために(4)
喘息大学学長 清水 巍

 もう一つの作用の違う携帯用噴霧器の一群があります。アトロベント、テルシガン、フルブロンといった名前のものです。聞いたこと、見たこと、使用したことがおありでしょうか?
 喘息の予防薬で、長期に使ってみないと効果が分からぬ薬です。交感神経刺激剤(メプチンエアーやサルタノール)、ベコタイドやアルデシンのステロイド系の吸入予防薬は効果がハッキリしています。それらと違って、使っていてもあまりパッとしないという人が多いので、使用を継続している人は多くないのです。
 でも、長期に(2週間以上)キッチリまじめに、継続的に使用した人で効果のあった人もあります。喘息大学1期生の富山のYさんでしたが、何やってもダメ、ところがアトロベントを使い出したところ、2週間過ぎてから全く発作が出なくなりました。普通の交感神経刺激剤とテオフィリン製剤の常用薬とアトロベント3回で難なく過ごせるようになったのです。
 肺気腫や慢性気管支炎の方、あるいは喘息と合併してそれらの病気を持っている方はベコタイド、アルデシン、インタールより強い効果を認める人がいます。
 副交感神経遮断剤(抗コリン薬)って一体、何だと思われる方も多いことでしょう。吸入薬も薬もいっぱいあって、どれがどれやら覚えられない、なんて難しい病気にかかってしまったと嘆く人もいるでしょう。交感神経というのは気管支を広げる自律神経です。それを刺激すれば気管支は拡張します。しかしいつも刺激されっぱなしというわけにはいきませんから、切れてくるに従って、副交感神経の働らきが強まってきます。特に夜間、早朝は副交感神経の働らきが優位になりますので、気管支が収縮しやすくなるのです。この副交感神経という気管支を狭くする自律神経の働きを遮断して、気管支を広げる交感神経の働らきを優位に保とうという薬剤なのです。
 いずれも1~2吸入、1日3~4回を吸入します。これのみで喘息発作を予防できる人はよいのですが、そういう人は多くありませんから、5、6月号のわかばに掲載したものと併用することを試す価値はあります。このアトロベント、テルシガン、フルブロンは外因性、内因性、心因性、咳喘息、肺気腫、慢性気管支炎合併、どんなタイプにも効くひとには効きます。逆に言えば効かぬ人には少しも効果がありません。
 痰が切れにくくなるという副作用が出る場合があります。緑内障、前立腺肥大症の人には禁忌です。
 そんなに沢山の吸入薬をどんな順序で使ったらよいかという問題があります。まずメプチンエアー、サルタノールで気管支を広げるのが最初です。5分後ぐらいにベコタイドやアルデシンとミックスさせて1度に吸ってもよいと私は思います。一品ずつ単品で食うも良し、丼の上に全部を乗せて食う場合もあるように、好みと手間、時間の問題であると思います。ミックスさせて吸入する方法(ボルマティックやインスパイヤーイース、その他のスペーサーに全部入れて吸う)をミックス吸入療法とか、カクテル吸入療法と私は称しています。厳密な先生は1回1吸入ずつ、少し甘い先生は3フキまではいれてよい、それ以上はもう1回別に吸えと指導されますが、私は甘過ぎるためか交感神経刺激剤だけは先に、あとはどういう順序か、ひとまとめでもよいし、どう分けても良いと考えています。(特にこうだからダメという論拠を見ていないので)
 また、これらの薬剤は鼻用のアダプターをつけるとアレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎に使用できます。特に鼻水の多い時に効果があります。鼻には1吸入、1日4回使用です。但し、かえって鼻閉、鼻出血、くしゃみが強くなる人もいますので、要注意です。
 以上で携帯山噴霧器については全て解説しました。万能薬はありません。その人にあった薬と方法を探し出すことが大切です。
 主観はあてにならぬものですから、ピークフローメーターを吹き、喘息日誌にピークフロー値をつけ医師に見せ相談していくことが現在の段階では最も近代的で良い方法です。総合的に吸入療法を考え、試し、選択して快適な日常生活を送って下さい。

特別な呼びかけ

 以上の吸入薬はもう12年以上も前から出回っていました。それらの有効な使用法確立と普及に今までかかったということができましょう。ここに解説したような丁寧な教育を日本全体の多くの喘息患者さんに普及し徹底を図る必要があります。また、それらの薬剤に頼るだけでなく、教育、鍛錬、交流療法、自省療法、集団療法の大切さを全国的にアッピールしていく必要もあります。
 私達は自分のことだけ良くなればよいということでやってきたのではなく、全国的にも良いものを作り出そうと努力する中で、自分のとこも良くしてきました。そういう努力の中で、少しはまともなもの、本当に良い医療が作られてきたと思っています。
来る9月13日(日)の東京、豊島区立公会堂で開かれる第1回日喘連大会はどうしても成功させなければなりません。それを全国の喘息患者会、喘息の患者さんの全員の力を集め成功させれなくて、本当に一人一人の喘息の患者さんをよくする医療を築くことができないのです。
 石川県に喘息大学ができたように、特別擁護老人ホームを作ろうという運動は、北海道から沖縄までの喘息の患者さんと御家族のお蔭で申請できるとこまできました。まだ募金は続けていきますが、紙上を借りて厚く御礼を申し上げます。御協力頂いていない方には引き続きお願いする次第です。
 本当に良いものを作り、発展させていこうという時には大きな力が集まるものだと実感しました。頭の下がる思いをしてきました。その力を今度は全国的な日喘連の署名とカンパ、大会と厚生省交渉の成功に向けようではありませんか。
 北陸からは30人の代表団をツアーで送ろうという運動が起こっています。関西の中間交流会成功を祈るけど、関西からは日帰りで大拠して全国大会に駆けつけて連帯の範を示してほしいとの要望が全国から寄せられています。
 7月、8月、そして9月初旬まで、第1回日喘連大会成功を全国的重点にして、力を集中しようではありませんか。それをまた全国に分散しようではありませんか。
 特別な呼びかけと訴えを、つけ加えさせて頂きました。

5.スペーサーの活用

喘息をよくし治すために(5)
喘息大学学長 清水 巍

 各種の携帯用噴霧器の利用が効果を上げるようになりました。その上手な正しい使い方いかんによって、日常生活の快適さが左右されるようになりました。しかし、どんなに効果のある携帯用噴霧器でも、うまく十分に気管支の奥まで、吸入薬が到達し付着しなかったら効果は上りません。
 正しい吸入療法のやり方については「わかば」の5月号の本欄に書きました。今回はスペーサーの活用について紹介します。各種のスペーサーが出回るようになり、吸入の仕方の下手な人でも効果を上げられるようになったのです。
 スペーサーとは「一定のスペースの中に圧縮されて入っているボンベの薬液を噴射し、拡散させておいて吸い込む中空容器、吸入補助具」のことです。定義すると難しくなってしまいますが、一度見れば誰にでも分かるものです。

  1. スペーサーの種類
    簡単なものでは紙コップの底に穴を開け、広い飲み口の方を鼻から口にあて吸入します。点滴の袋、醤油やソース、マヨネーズの容器、コカコーラやウーロン茶の大きな容器の底に穴を開け、活用する人もいます。
  2. ボルマチック
    これまでは私達はボルマチックをどちらかというと推薦してきました。口腔内への沈着が少く、気管支の奥の方に付着するためです。しかし、大きいので携行するのに不便、各種の噴霧器と口が合わない(サルタノールとベコタイドは合うが、メプチンエアーやアトロベントなどとは合わない)等の欠点がありました。
    それらの欠点を克服したのがインスパイヤーイースです。
  3. インスパイヤーイース

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 これも活用できたらと喘息大学第13回交流会ではメーカーと交渉し参加者には無料で1個ずつ試供しました。その追試結果と城北病院や寺井病院の薬剤師さんとの検討の結果、インスパイヤーイース推薦に切り換えることを決定しました。理由の第1は多くの人にスペーサーを使ってほしいが、ボルマチックは2,000円の実費がいる、インスパイヤーイースはアルデシンを使う人には無料提供される、第2は薬局で統一的にやり方を指導できる、第3はカクテル吸入療法やミックス吸入療法に都合が良いし、どんなボンベにも合う、第4は携帯に便利、どこででもスペーサーが使用できる、第5に吸入が下手だとピューと音がするなどであります。
 容量も700mLありますので、従来のアルデシンはベコタイドより噴霧が強い欠点をこのスペーサーを使えばカバーできます。何よりも各種ボンベとインスパイヤーイースを持って歩けば、どれにでも合うし、かさばらず軽量ですむというメリットがあります。
 以上より、城北病院、寺井病院系列では小児科も含め、8月を移行期としながら9月から一斉にベコタイドを中止し、アルデシンに切り換えます。中味の薬効には全く差がありません。アルデシンの方が10フキぐらい多く出ます。
 勿論、慣れたスペーサーの方がよい人、他院所でベコタイドをもらっている人は従来のままで構いません。基本的には一緒です。私達は現在までの慎重な検討の上でアルデシンに切り換え、インスパイヤーイースを採用することに若干のメリットがあると判断し決断したということです。
 御自分に都合のよいスペーサーを活用し、快適な日常生活を送って下さい。
 メプチンエアーとかサルタノールを先にインスパイヤーイースに入れ吸って、その5分後ぐらいにアルデシン等を入れ吸うことはお忘れなく。気管支を広げた後にアルデシン等を使うのです。

6.日喘連大会を成功させよう

喘息をよくし治すために(6)
喘息大学学長 清水 巍

 いよいよ、来る9月13日(日)には’92喘息患者の集い―イン東京―「第1回日喘連全国大会」が豊島区公会堂で開催されます。
当日の午前10時からはプレリュードとして、劇団「日の出会」による笑いあり、涙あり(?)の2幕物の構成劇が前座を飾ります。脚本家は新身気鋭のH氏(喘大10期生)とのことで、読み合わせ猛訓練が始まっているようです。聞いたことのない劇団と脚本家ですが、同じ喘息の仲間が献身的に準備してのことですから、上手下手は別として乞う御期待です。
 その構成劇の裏か横では懸命にピアノの調律が行われます。斉藤忠光さんの記念講演とピアノ即興演奏が一つの目玉でありますが、プロで指定の調律師でないとピアノの音が整いません。前夜、別のとこがピアノを使うそうで、翌朝とか公会堂は調律させてくれません。調律の音をバックに、並行して名場面のセリフを聞き、観劇せざるを得ません。調律の方にも劇団の方にも、また観る方にも悪しからずと事前にお願いをしておきます。それ程切迫した中での開催となります。
 そして午前11時から開会です。石川県代表団もそれまでに到着の予定です。8月31日の段階で日喘連大会東京準備室、郵便振替番号、東京8-757771に振り込まれた集約人数は北海道6、東北15、甲信9、関東216、東海6、近畿3、関西2、四国6、九州2、これに北陸から30名がプラスされますので、290名が出席予定です。
 申し込みまだの方は東京準備室に早目にお申し込み下さい。ただ今月号のこの「わかば」が届く頃は大会が迫っております。どうしても連絡を事前にとりたい方は個人のお宅ですが、東京準備室の青山さん(03-3950-8514)へ電話して下さい。各種問い合わせは日喘連事務局(0762-51-6111ないし、0762-52-6746)へ行って下さい。
 当日突然の参加という方は昼食持参でお願いします。会場近辺に昼食をとる所もあるでしょうが、この昼食時間帯も貴重なのです。各患者会の代表の方は昼食をとりながら「日喘連第4回総会」へ出席して頂きます。一般の方は会場で昼食をとりながら交流ということになるのですが、薬剤師の李先生コーナー、看護婦の新さんコーナー、成人喘息コンサルタントコーナー、各種展示・販売コーナー、後半からは清水先生コーナーがありますので、そこで挨拶や指導を受けて下さい。
 13時40分からは2時間30分に及ぶメインエベント、フォーラム「ぜんそくはある時突然!・・・・・・・・その時あなたは」が開催されます。司会は喘大事務局長でMSWの酒井君、東京都豊島区の保健婦小林さんにお願いしてあります。ここで、救急カードを普及してきた日喘連が日本から喘息死(毎年6000人)をなくす道を議論し、明らかにするのです。主報告はNHKテレビに出て「生還は難しいだろう」と報道されつつも、奇蹟的に生還された加藤恵子さんです。言語障害がまだ残っておられますが、御主人と共に御参加の予定です。
 コメンテーターとしては清水先生、大阪喘息大学学長の大野啓文先生、愛知喘息大学学長諏訪和志先生などが予定されています。このフォーラムの成功のために全員が発言するつもりで御参加下さい。大会宣言を採択した後は18時~20時まで池袋駅の西口に回って豊島区勤労福祉会館の懇談会です。関東青葉の方々、大挙参加の石川県代表団、全国からの参加者で華やかに盛り上がることでしょう。今から楽しみなことです。
 翌日の9月14日(月)は午前10時半から1時間の厚生省交渉が行われることに、今年も決まりました。喘息の統計を入手すること、各種の陳情は貴重です。ロビーに10時10分までに御集合下さい。但し、共用会議室に入れるのは20名~30名に限定されますので前半と後半を入れ換えて交渉に参加して頂くということになるかもしれません。
 この交渉を成功させるために、また日喘連大会を成功させるために、全国始めての署名とカンパ活動が行われました。現在の状況は宮城の喘克会420、関東青葉800、石川若葉が492、カンパ263,000円といったとこが多い所です。署名簿がウスッペラでは笑われてしまうでしょう。
 石川の代表団で希望者は翌日、日光東照宮、猪苗代、野口記念館などを経由して、東山グランドホテルに一泊します。この東山グランドホテルは昨年、私の高校の同窓会が30年ぶりに開かれたところで、山中温泉の翠明に建物、料理も負けず劣らずの仲々よい所です。宮城、福島の人で、ここへ合流される方もいます。翌日は裏磐梯を回った後、清水先生が高校時代に苦しみ・悩みながら本を読んだ、全国的にちっとも名所でないおんぼろの家と三畳の汚い部屋を見学して頂きます。それから美味しい特製喜多方ラーメンを食べ、帰途につくという「ラーメンと蔵のまち」オプショナルツアーがあります。
 以上が今年の日喘連第1回大会の概要です。シュミレーション風の御紹介を致しました。参加する方も参加されない方も、力を東京に集めて頂くこと、一人でも多くの家族と共に参加して頂くこと、署名やカンパ、祝電、メッセージを寄せて頂くことを、この場を借りてお願い申し上げます。久保先生は2回目の手術を最近成功裡に終え大要次のようなメッセージを下さいました。

先進国中最悪と言われる本邦の喘息死は毎年約6000人もあり、大きな社会問題になっています。近年の喘息治療の進歩にも拘らず、現時点では、その恩恵に浴している人は決して多くはありません。
喘息患者さんは何よりも、正しい情報と最近の治療を受ける権利を持っています。日本喘息患者会連絡会の益々のご発展をお祈りして、お祝いの御挨拶とします。

日本喘息患者会連絡会 顧問
久保 裕

 この間、青山さん、村田さん、杉本君、その他沢山の方が大変な努力を傾注されました。また各患者会の奮闘を聞くにつれ頭の下がる思いを深くしております。
 みなさん、日喘連大会が無事成功したら、今度はゆっくりしましょう。それまでは石にかじりついてでも頑張ろうではありませんか。

 付記:インスパイヤーイースをどうしても使ってみたいという方がおられるようです。城北病院に精密検査や指導を受けに来られれば、診察終了時に出すことは可能です。清水先生の診察日と時間帯を確認の上でお越し下さい。大会での情報入手も一方法です。

7.鼻及び全身の管理

喘息をよくし治すために(7)
喘息大学学長 清水 巍

 第1回日喘連大会は全国の皆様の期待と御支援によって、400名の参加(主催者最終発表)で無事、成功しました。
 つい先日、9月27日に関西の中間交流会がありました。兵庫の方々が1年前から毎月集まり、関西では最高の大成功をおさめました。来月号に詳しく紹介があると思いますが、それはそれは入念に丹精こめて作り上げられた立派な集会となりました。来年は奈良が引き受けますと力強い意志表明があり、苦労してこられた京都の方々や関西の皆様の努力が、いにしえの都、奈良の「わかくさ山」(奈良の患者会はわかくさ会)に燃え移ることが確実となりました。10月10日は北海道喘大中間交流会、11日は北海道の喘息をよくする会(北のこぶし会という愛称が討議中)青葉、若葉のもっと先のこぶしの花が誕生するかもしれません。11月8日は東海の交流会で李先生が呼ばれます。
 こうした成功は大きなネットワーク、中ぐらいのネットワークの完成を意味します。さらには単位の会員一人一人が、大、中、小のネットワークと連ながりを持って自己管理ができるようになったということを意味します。会員もようやく自立と連帯を身につけ、地方の各患者会、各ブロックの交流会、日喘連が自立できた、連帯できるようになった時代と言えるのではないでしょうか。
 喘息の組織がこうして大、中、小のネットワークをよりよく作り上げたように、皆様自身の身体の大、中、小のネットワークも点検し、充実させて頂きたいのです。これまでの勉強、吸入療法などによって喘息の管理は前進しました。そしたら最近、鼻の具合が悪くなったという人が多くなったのです。

  1. 鼻の管理
     鼻粘膜や副鼻腔、鼻咽腔(鼻と口の中間にあるアデノイドのある所―よく口の上、鼻の奥から下がイガイガするという人は鼻咽腔炎が存在する)、咽頭部は矢張り呼吸器の一つで、中ぐらいのネットワークにあたります。
     眼の結膜や耳、皮膚はアレルギーの出やすいところですから、これはアレルギーの中ぐらいのネットワークであります。
     喘息がよくなると、もぐらたたきと一緒で別のところにもぐらが顔を出すように、別のとこに症状が強く出る場合があるのです。強く出なくても喘息がよくなると他が気になるということもあります。逆の場合もあって、アレルギー性鼻炎がよくなったら喘息になった、鼻のポリープをとったら喘息にという場合もあるのです。
     ですから呼吸器全体、アレルギーの臓器全体をよくすることは、大切なことです。
     アレルギー性鼻炎にはインタールの点鼻薬を1日2~4回、リノコートを1日2回、アルデシンないしベコナーゼを1日2~4回、アトロベントないしフルブロンを1日2~4回、鼻に噴霧するという予防法があります。これを一つないし二つ、多くて三つ併用し、あとは薬の内服で匂いは出てくるし、鼻の管理も十分となるでしょう。鼻をしっかり治療し過ぎるとまた喘息にくるから、鼻ぐらいはと少し水路を開けておくという人もいます。気管支拡張剤のアロテック、サルタノール、メプチンエアー系統以外の吸入療法の薬はみな鼻のアレルギーにも効果があるのです。
     副鼻腔炎の場合は抗生物質の服用が必要です。鼻咽腔炎の場合はインタールのアンプルの液を鼻から1日4回ネブライザーで、鼻用のガラス管で吸入するのが効果的とされています。
     アレルギー性眼瞼炎にはインタールの点眼液を1日2~4回点眼するとよいでしょう。症状の強い時のみステロイドの点眼液を使用して下さい。
     アトピー性皮膚炎にも色々な治療法がありますが、決定的な効果を上げるのはステロイド系の軟膏です。これは弱いのから強いのまで各種ありますから、医師によく相談して使って下さい。
  2. 全身の管理
     福島県から喘息で入院し、私が主治医となった人ですが、喘息がよくなっただけでなく、胃に放っておけば癌になる病変が見つかりました。胃粘膜の切除術は腹を切らずに、内視鏡下で楽に施行されました。喘息がよくなり治っただけでなく、胃を切らずに治してもらった、喘息よありがとうって全くだと喜んでいました。今は内視鏡でとる時代になったのです。その治療を城北病院で行ったのは消化器のチーフとして活躍している福島県の私と同じ喜多方高校出身の後輩の医師でした。同じ金沢大学の出身ですが、学生時代に彼と話合い、彼も城北病院で一人前の医師となることを決意してくれたのです。彼の実家はカメラ屋さんですが、私の実家と300mぐらいしか離れていません。これもネットワーク形成による成功の一つでありましょう。
     年に1回は最低、次の項目は精密検査として受けておいて下さい。かかりつけの先生にお願いするなり、やってくれる専門医を受診して下さい。

精密検査項目
 赤血球数、血色素、白血球数、好酸球の比率(%)、CRP、赤沈、肝機能、腎機能、検尿、IgE(アイジー・イー)、RAST(ラストと言って、血液中で見られる抗体を10種、ダニとかポピュラーな抗体をみてもらうこと)、胸部レントゲン写真、心電図、呼吸機能、副腎の働らき(血中コーチゾルの値でよい)、血中テオフィリン濃度。
 以上が年に最低1回は調べてもらった方がよい検査項目です。
オプション(参考までに)として、便潜血ないし便ヒトヘモグロビン、胃のレントゲンやカメラ、超音波による腹部エコーの検査など、全身のチェックもできればしてもらいましょう。自動車にも定期点検があるのですから、ましてや人間、かけがえのない人生ですから、ぜひ点検を受けましょう。
 糖尿病、白内障、副鼻腔炎、その他の合併症を持っている方は、そちらについても精密検査を受けて下さい。

 主治医との関係で面倒だという方は城北病院の外来、ないし検査入院、体験入院で行い指導を受けて下さい。事前に清水先生と直接TELで(手紙は打ち合わせできないのでダメ)打ち合せて行って下さい。
 喘息という小さなネットワークを点検しますし、中、大(全身)もチェックし指導します。各自が自分の大、中、小のネットワークを点検する力を持ってこそ、患者会関係の大、中、小のネットワークも本物になるというものです。
 喘大生、わかば会の全員の皆様、この秋に精密検査を受け(すでに終了した人はしなくてよい)、御自分の大、中、小のネットワークを総点検し、かつ患者会関係の大、中、小のネットワークをよくすることに貢献して下さい。

8.ピークフローメーターでの管理(1)

喘息をよくし治すために(8)
喘息大学学長 清水 巍

 今回は再び気管支の管理に戻ります。ピークフローメーターでの喘息管理です。特に年令、性別、身長別に定められている正常値(標準値)と自分自身の「ベスト値」について説明します。自分自身のベスト値の求め方がハッキリしないため、次号で解説するグリーンゾーン、イエローゾーン、レッドゾーンの区分ができない人が多いのです。よく読んで、ピークフローメーターでの自己管理の達人になりましょう。
 まずピークフローメーターの種類ですが、アセスピークフローメーター(縦型)が一般的に普及していると思います。これには青と赤の2種類があります。青は低肺機能用、小児、中等症から重症喘息患者さん用で、375~385までの目盛がついたものです。赤は850~880までの目盛がついたもので、正常者、軽症、中等症の喘息患者さん用です。間違って赤いのを買ってしまって、上がらないのでイヤになっているという人は(青いのを買ったのに上がらないとボヤいている人も同じですが)、吹き出し口の後の赤い丸を完全にはふさがないようにしつつ、横でも縦でもいいからセロテープかビニールテープを張りつけて抵抗がかかるようにし、隅から呼気が漏れるようにすれば上昇します。そんな工夫をして自己管理してもよいでしょう。しかし、そうして無理して数字を上げて他人に自慢しても始まりませんから、コッソリと自己管理する目安にだけ活用して下さい。一時期、680前後の赤のピークフローメーターが売出されていましたが、それはポリテックス社でも取り扱いは中止し、アメリカでも製造中止になっているようです。
 その他の会社の機器としては、ミニライト、ヴァイタログラフ社のピークフローモニター、最新のものとしてフェラーリス社のライトーポケットピークフローメーターがあります。呼吸機能の検査の時にはピークフロー値の数字も出ます。
 正常値ですが、ミニライトので計測したノモグラフは最後に載せました。香港在住の中国人3490名のデーターで作られたものですから、日本人の値とそう違いはないと思ってよいでしょう。御自分の身長と年令をプラスチックの定規で結び、真中のPEFR(ピークフロー値・最大呼出流量)を通る線と交わったとこが、正常値です。男性と女性別に表をつけました。
 アセスピークフローメーターで米国人の正常予測値を示した表は下段に示しました。これはアセスの機器を買った人についているものです。この表で較べて自分が少ないと思ってガッカリされた方は多いのではないでしょうか。アセスで20才、150cmの男性は545ですが、最下段のノモグラムで調べると470です。

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 アセスでの日本人成人の正常値のデーターはありませんので、ノモグラムを使うか、アセスの米国人のを使うか、どちらでも良いのですが、喘息の患者さんは当面ノモグラムの低い方の正常値を使って自信をつけるようにし、よくなり治って越えるようになったら、米国の正常値を越えるよう目標を設定したらよいでしょう。ピークフローのオリンピック並みの競争ということになるのですが、どちらも健常人の値ですから、喘息の人は20%ぐらい低いのは当たり前です。喘息の人の正常値というのは無いのです。ピンからキリの喘息の人がいるわけですから正常値は出せません。要望があれば、喘息大学の学生の性別、年代別平均値を示すことはできます。健常人より劣っているからとガッカリするのではなく、自分は今のとここのぐらいだと自覚し、気をつけていく目安として下さい。健常人より50%以上も低くなったり変動巾の激しいことがある人は特に注意して、喘息死を防ぐようにして下さい。
 次に自分のベスト値を定めることについてお話をしましょう。吸入をした後のを自分のベスト値としている人がいますが、吸入をする前の普段の状態での最高値を仮のベスト値とします。点滴をしたりステロイドを飲んだりした後は当然上がりますが、それを仮のベスト値としてよいのです。そして更に吸入をした後ではなく普段にしていて記録を更新したらその最高値をベスト値とします。但し、吹き方は一定にしての最高値を選んで下さい。たまたま渾身の力を振り絞って、やっと偶然出た値というのは、選ばないで下さい。日中は気道が安定してきますから、その時普通に吹いた値をベスト値とするのです。
 吸入をした後の最高値は、吸入後の参考ベスト値(仮)として区別して下さい。喘息の人は普通は吸入をすると20%程度は上昇が見られる筈です。喘息友の会事業部で1冊300円で販売している喘息日誌に記録をつけて主治医に指導を受けて下さい。自分の吸入前のベスト値を黒線で太く横に引き、吸入後の参考ベスト値は赤線を引いておくとよいでしょう。
 次回はレッドゾーンなどゾーン別の判断、対策について勉強します。
 その次回の講座は第72回講座で12月となります。12月12日(土)石川県喘息友の会総会と忘年会の時にします。
 11月24日(火)から11月27日まで千葉県流出市の東葛病院(0471-59-1011)の外来支援に行きます。検査や診察御希望の近くの方はどうぞ。

ミニライトにより計測したノモグラム

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9.ピークフローメーターでの管理(2)

喘息をよくし治すために(9)
喘息大学学長 清水 巍

 今年度の四国での講演会(愛媛・道後温泉の文教会館)で質問がありました。「私はいくらピークフローメーターを吹いても370より上に上らない。いつも、そこの前後をウロウロするだけだし、低肺機能喘息ではないか。吹くのがイヤになる。私の正常値、標準値はいくらか?」というものでした。11月号の「わかば」読みましたか?と問うと、「読んだけど分からなかった」と言うのです。年令は70才、女性、身長150cmだそうです。米国の女性と比較しても364が正常値ですから多いし、中国人の正常値は274ですから、この人は低肺機能喘息どころか、正常人より多いのです。その旨を伝えますと満足そうに安心した表情をなさいました。
 意外と「自分は低い」と思い記録をつけぬ人が多いことが分りました。米国人の身長195cm、20才の男性で710、20才の女性、身長185cmで515、これが表で見る最高です。ノモグラムでは身長180cmの女性で年令16才が最高で478なのです。身長190cmの男性、180cmの女性なんて日本にはメッタにいません。もう1度、前写を出して自分の正常値を確認して下さい。分らない人は喘息友の会事務局にTELで聞いて下さい。事務局の人が簡単に教えてくれるハズです。年令、身長、性別を書いて返信用封筒に宛名・切手を完備してくれれば、正常値、標準値を書いてお送り致します。「わかば」の表紙に新住所とTELが書いてあります。
 さて、今回は先ずゾーン別判定法を紹介しましょう。各国や提唱者によって差はありますが、一般的ガイドラインとして次のものを紹介します。全米喘息教育プログラム「臨床医の手引き・喘息について患者を教育する」(米国立衛生研究所、国立心・肺・血液研究所)より引用したものです。

 グリーンゾーン・安心
 毎日この状態でいることが望ましい。ピークフロー(以下PFと略)は自分の最良値(吸入をしない状態での最高値)の100%~80%で、夜も症状がなく、よく眠れる状態。

 イエローゾーン・注意
 自分の最良値の80~50%、時にこのような範囲に落ちる状態では携帯用噴霧器を使い、グリーンゾーンに戻ることを確認する。戻らなかったり、すぐイエローゾーンにまた落ちる場合は内服薬、ベコタイド・アルデシンの回数や量の増加を検討する。アトロベント、インタールの使用を再検討。

 レッドゾーン・非常に危険
 自分の最良値の50%以下となった場合です。緊急事態であることを認識する必要があります。メプチンエアー、サルタノールエアーなどの吸入ないし、アロテックやメプチン液、アレベールの混合液をネブライザーで吸入してみて下さい。20分から30分しても50%以上にPFが上昇しない場合は病院に行って下さい。そして点滴ないし静注を受けるなり医師と相談して下さい。PFの喘息日誌を見せて主治医と相談し、治療計画を充実させて下さい。4時間よりも吸入間隔がどんどん短くなってくる場合も、受診して下さい。
 早朝吸入前はいつもレッドゾーンだという人も医師と相談しつつ治療薬の種類や量、使用時期を検討して下さい。

 以上、ゾーン別判定法を紹介しました。治療計画をベストに持っていくために何が必要か、ゾーン別判定を継続しながら注意すべき共通項を三つ示します。
 第一は喘息日誌とPFを根気よく長期につけるということです。自分の吸入前最高値に黒線、吸入後最高値に赤線、グリーンゾーンの下限値80%の値に緑の線、50%の値に黄色の線を色鉛筆かマジックで横に引き、黄を割って低下すればレッドゾーンだとすれば見やすいし、医師も判定・指導しやすくなります。
 第二は薬剤の上手な使い方、量の増減、種類や組合わせ、投与時期の検討です。ステロイドの内服薬を使えば安定はしますが、毎日沢山飲んで安定させるのでは「いつかきた道」に戻るだけです。内服のステロイドのみに安易に頼り過ぎることなく、上手な薬物使用を試みなければなりません。
 第三は薬物とPFだけで喘息は全て良くすることができるのかということです。勉強、鍛錬、交流、自省、矯正、実践などの自然治癒力、寛解力を高める根本療法は必要が無いのかということです。イエローゾーン、レッドゾーンに普通の薬物療法をやっていても落ちる人はこの第三が特に大切な人達です。それはすでにやっているのに黄か赤という人は薬物療法の再検討と共に、根本療法が表面的になっていないかの検討が必要です。根本療法が深く行えた人は気道の炎症は減少し、気管支の平滑筋の緊張、収縮、過敏性はとれ、薬物を減らしてもPFは上昇し、元気で明るい表情になるのです。
 この三つが本当であるか否か、体験入院で試して下さい。喘息大学第14回交流会(今年は5月16日、17日、片山津温泉、加賀観光ホテル・イメージ一新する)でケンケン、ガクガクの一大討論を展開します。喘大生もOBもわかば会員も、三つの共通項は正しいのか否か、よく考えて自分の意見を深めておいて下さい。
 PFでの管理の最後に、変動巾の出し方について解説しておきましょう。日内変動率と振幅率の二つを目安とします。

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 日内変動率は(A)でも(B)でも出せるし同じです。20~25%の変動があると喘息だということになりますし、50%を越えると喘息死の危険があると言われます。
 振幅率は(C)でも(D)でも出せるし同じです。正常者は20%以内、20%を越えるのが喘息患者です。
 難しくて分らんという人は石川県喘息友の会総会に出席して講義を聞くか、こだま会から講義のテープを取り寄せて聞いて下さい。しかし最後のとこは要は喘息では巾が大きくなる、上り下りが少く高目安定がよいと覚えて下さればそれでよろしいのです。

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