喘息をよくし治すために(2014)

263. 40年の水の流れ

喘息をよくし治すために(263)
喘息大学学長 清水 巍

 あけましておめでとうございます。毎年の恒例では、野口正路さんの「新年に贈る言葉」(土曜美術出版販売)から詩を引用し冒頭を飾ってきました。今年は、わかば会40周年、年の初めですので、102歳になられた日野原重明先生の詩を掲げます。

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 城北病院で呼吸器を研修され、東3病棟に入院されていた喘息患者さんを評して、次のように語られた先生がいました。「私は皆さんを見ていると、喘息を克服されようとしておられます。これまで喘息を悪化させた一滴一滴をここで捨て、清い一滴一滴の水をここで入れ換え、健康を回復しておられるように見えるのです」。
 日野原先生の水の流れや一滴一滴は大きな一滴であり、水の流れです。私や患者さんの一滴一滴や流れは、小さなものかもしれません。しかし、「水のように、音なく合わせてきた40年の流れを刻んできた歴史」、それは日野原先生の言う「至福と呼んでもよい歩み」だったのではないでしょうか。
 40年前、喘息はとても苦しい病気でした。それを「わかば会」を作り、克服しようとしたのです。そして喘息大学、日本喘息患者会連絡会、全国各地に患者会ができ、小児喘息サマーキャンプや成人喘息ゼミナールなどを行ってきました。
 40年経って、喘息はとてもよくなったのです。第1は医学の発達、喘息薬の改善、進歩です。私たちは、①教育 ②鍛錬 ③交流、「してもらう」から「してあげる」のスローガンを掲げ、薬のよい使用の仕方を真っ先に受け入れ、紹介してきました。薬や医学の進歩を一時たりとも否定しませんでした。それどころか昨年は、新年のお年玉として「ステロイド吸入の鼻呼出法」を紹介しました。その結果、鼻や耳がよくなったり、さらに喘息がよくなる人が増えました。
 今年のお年玉は、①40年が過ぎての主な喘息薬(新薬も含めて)の紹介と薬価の紹介です。効果を上げることと、値段を考えることも大事です。レルベアは1日1吸入でよく安いのですが、1年間は2週間に1回の通院が義務付けられています。シムビコートは1番高いのですが、その人、自分の状態によって調節が可能であり、具合が悪い時でも、これ1本でのSMART療法で調節が効き、妊娠・授乳にも安全で、高級車のような価値があります。主な喘息治療薬薬価をここに紹介しました。こんな情報を提供するのは、喘息患者さん、会員のことを考える「わかば」のみではないでしょうか。下の「合剤」というのは、ステロイド吸入剤+長時間気管支拡張剤です。

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 ②2つ目のお年玉は、解説と納得です。表を見せられただけでは、十分に納得できるわけではないでしょう。1月の講座、2月の総会新年会での講座、福島県の患者さんを励ます集いでの講演、第13回成人喘息ゼミナール・40周年記念行事での講演などに参加して頂ければ、学習でき、患者さんの使用実体験を聞くことができます。目白押しに講演や行事が続くのですが、どうぞご利用下さい。理解と納得を深めましょう。
 ③3つ目のお年玉は、何といっても40周年記念のゼミ、式典、県民公開講座です。城北病院や寺井病院の歴代看護師さんも参加して、記念パーティを行います。神奈川、関西、三重からも久々に何人もご参加頂くお話も来ております。これまで注ぎ合ってきた日野原先生の言う「一滴、一滴」が再び混じり合い、水が溶けあうように合流する「至福」の時を再体験しましょう。それで日野原先生ほどの長生きと御活躍を約束するものになるかどうかは分かりませんが、喜びや幸福、笑い、快感は寿命の延長や健康に役立つはずです。エンカウンターも再体験して頂きますし、
SpO2(酸素飽和度)の学習も深まります。歴代事務局長とは記念式典で会えます。
 ④4つ目に、水城先生の化学物質・電磁波過敏症を本号で紹介しました。(次頁)
40年の歴史を踏まえた有意義な1年を作ってまいりましょう。

264. 記念の年をしっかりと歩んでまいりましょう

喘息をよくし治すために(264)
喘息大学学長 清水 巍

 もう2月です。年月の過ぎるのは本当に早いものです。この欄の表題としては、珍しく2行にわたる長い表題をつけました。貴重な1年、1ヶ月を「しっかりと歩む」ことが大切かと思い、「長い表題をかみしめ歩む」のもいいのではと、採用させて頂きました。1日、1日、そして毎月を大切に過ごしてまいりましょう。
 2月、3月は会員更新の時期です。残りが次第に少なくなっていく1年を、「わかば会員として過ごすのか、そうではなく断ち切って過ごすのか」では雲泥の差が出ます。空を飛ぶ凧(たこ)の糸が切れてしまえば、どこかに飛んで行ってしまいます。わかばの1枚(会員)として枝や幹、大地と連ながっておれば、栄養を受け、太陽の恵みや酸素、炭酸ガスを出し入れして、緑色に若々しく輝くことができます。40年に及ぶ「わかば会」の歴史、命脈を、会員更新という手続き完了によって、今年も知識や生きる力を継続して受け取って下さい。
 今号3~6頁には「わかば会40周年記念の第13回成人喘息ゼミナール」の案内と申込用紙を掲載しました。右下に「第2回県民公開講座」をご案内しました。会員としての恩恵を「しっかりと受け取って、今後の生活、病気の一層の改善を実現」なさって下さい。

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 私の記念講演・40周年にふさわしい「医学と私たちの進歩」(患者さんの体験発表を含む)、国立病院機構相模原病院の谷口正実先生の「県民公開講座」でのご講演は役に立ちます。谷口先生のご講演は、重症喘息、難治性喘息、アスピリン喘息、合併症の好酸球性副鼻腔炎、鼻ポリープ、好酸球性中耳炎、チャーグ・ストラウス症候群の背景と難治化しないための対応についてです。首都圏や全国からその患者さんが集まる、臨床研究センター・病態総合研究部長としての臨床、研究に基づく「患者さん向けのお話」です。今、悩んでいる人はもちろん、やがてそんな合併症を「経験したくないわ」という人にも是非聞いておいて頂きたいのです。それが「しっかりと歩む」ということにつながるのではないでしょうか。
 以下に、「鼻呼出法の意義を再確認し、もっとアレルギー性鼻炎や杉花粉症、喘息をよくしよう」という提案を行います。
 ステロイド吸入を口から吸って、鼻から出し、もう一度鼻から十分に肺の奥深くまで空気を吸い込んで、鼻から呼出する「鼻呼出法」は、好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎をよくするだけでなく、アレルギー性鼻炎、杉花粉症その他の花粉症もよくし、最終的は喘息をも改善させるのです。「one airway one disease(ワン エアウェイ ワン ディズィーズ =1つの気道で連ながっているので、鼻の病気も気道の病気も一つの病気なのだ)」という概念、考え方が最近注目されているのです。アレルギー性鼻炎も花粉症も鼻に関しては3大症状があります。くしゃみ、鼻汁、鼻閉です。正常な鼻呼吸が困難になるため、口呼吸に移行します。鼻は、「呼気に適度な湿度を与え、冷気を温め、アレルゲンなどの異物を除去しやすくする」とされています。それが口呼吸になると、「外気が直接気道に届く」ため、カゼを引きやすくなり、気管支炎、肺炎、喘息悪化を引き起こすのです。
 喘息の人にアレルギー性鼻炎は60%が合併しているとされ(通常の人には23%ぐらいが合併)、杉花粉症は一般の人に約30%合併とされているので、喘息の人への合併はもっと多いので、ステロイド吸入の鼻呼出法は鼻やその他をよくし、喘息もよくする「一石二鳥」の方法です。
 昨年秋の日本アレルギー学会で、横浜市立大・耳鼻咽喉科の石土谷淳一先生は、「もう一つの気道がある」という報告をされました。「鼻と気道がつながっているだけでなく、鼻と気道は副鼻腔や耳とも耳管を通じてつながっている」。そこも気道と考えて治療すべき、と提唱されたのです。
 その報告を聞き、私は「鼻呼出法」のことを発言しました。石土谷先生は「それは素晴らしいアイディアだ。ステロイド吸入を鼻からやっても副鼻腔や中耳に十分には到達しないが、呼気なら到達しやすい」と言われたのです。そこで、昨年1月からお年玉として提唱し、皆様に実践して報告頂いた成績を、今年5月の日本アレルギー学会(京都)に報告すべく応募しました。
 このように、「わかば」を通じた皆様の実践・報告・協力が、皆様をよくするだけでなく、日本の医療・医学をよくし、他の同病の人をよくすることに役立つ可能性があるのです。13頁の表、裏のアンケートに記入し、郵送、FAX、メール、或いは外来で手渡しで、私宛てに送って下さい。こんな互いの努力もまた、「記念の年をしっかり歩む」ことだと思うのです。

265. ストレスをバネに、良い方向を

喘息をよくし治すために(265)
喘息大学学長 清水 巍

 1月、2月の快挙は何だったでしょうか。小保方晴子さんの「STAP細胞の発見」と羽生結弦(ゆずる)選手のソチ、初の金メダル獲得ではないでしょうか。
お二人に共通していることが3つあるのです。1つは東日本大震災です。小保方さんはハーバード大学で学んでいて、一時帰国している間の3月に震災発生のため、米国の就労ビザが得られず戻れなくなりました。理化学研究所に入り、リケジョ(理研の女性)となったのです。羽生選手は練習中に震災に遭い、スケート靴のまま逃げて避難所生活をし、練習できるリンクを母親と共に全国を探し、転々としました。
 2つめは、「女性の励ましと援助」でした。小保方さんの論文が「生物学の歴史を愚弄している」と拒否されて落ち込んだ時、おばあちゃんが「とにかく1日1日、頑張りなさい」と励ましてくれました。その言葉を胸に、もらった「割烹着」を着て研究したのです。羽生選手は、お母さんに食事を作ってもらうのを、トロントのリンクで練習をしていた時も、ソチでもして頂いたのだそうです。「小さなころからのぜんそくの影響もあり、もともと食が細い」と新聞に書いてありました。
 3つめは「ストレスをバネに、良い方向を」 2人とも発見し歩んだことです。マウスの細胞にガラス管をくぐるストレスを与えたところ、STAP細胞に変わる、酸性の液に浸すストレスでも変化。これもスゴイ話。マウスの細胞でさえ、ストレスをうまく乗り越えようと変化するのです。羽生選手は海外というストレスを変えました。

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 石川県喘息友の会「わかば会」は40年前から、喘息というストレスをよい方向に変え、克服しようと努力してきました。教育、鍛錬、交流にもお金や時間、労力の負担というストレスはかかりますが、それをよい方向に利用して、今日の改善と安心を作ってきました。私たちのような喘息の患者会にオリンピック競技があれば、日本でもトップ、世界でも評価されるかもしれません。あまり無いからです。それはさておき、合併症の克服、より健康での長生きが目標です。
 高齢化の結末で、やがていつかは「人は死ぬ」としても、生きている間に小保方さんや羽生選手に学んで、「各自のストレスをバネに、よい方策を見つけ、よりよい人生を実行」しようではありませんか。
 福島県の滝桜は、「千年以上も花を咲かせている」とか。東日本大震災や原発被害にもめげてないという評価をし、私たちのツアーはその桜を見た上で、福島で生きる喘息患者さんを励まします。四国からの御夫婦も参加されるとか。
 40周年を祝う記念式典、ゼミ、県民公開講座も参加するためにはストレスがあるでしょう。それを羽生選手や小保方さんのように、喘息患者が乗り越えてこそよい人生の基礎が築けるのです。

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266. 喘息と福島を忘れない

喘息をよくし治すために(266)
喘息大学学長 清水 巍

 来月に石川県喘息友の会40周年記念式典と記念の成人喘息ゼミナール、第2回県民公開講座を迎えることになりました。
 40年もの喘息克服の歴史を、石川県の喘息患者さんのみならず、全国の喘息患者さんや御家族と共に歩み続けることが出来たのは、皆様と職員のおかげであります。記念夕食交流会で歴代東病棟看護師さんに参加して頂き、記念式典に歴代患者会事務局長、喘息大学事務局長や関係諸団体代表にご出席を頂き祝うことができることは、嬉しいことです。当日も最後に御礼の挨拶を述べることになっていますが、この紙面で全国の会員の皆様に先ず真っ先に御礼を申し上げる次第です。
 「喘息はもう話題になるような重症の病気ではないので、取材や報道には値しない」という一部マスコミだけでなく、喘息患者さんやご家族さえも「喘息はもう軽くなったから、会報のわかばはもういらない」という人も出てくる今日此頃です。薬の進歩が著しいのは嬉しいことであり、よいことなのですが、その進歩を最も早く享受できるようにしてきたのが「わかば会、会報わかば、喘息大学、成人喘息ゼミ、各地交流会」だったのです。もっとよくなることを目指します。
 今号では、「本当に治っているのか? どこまでよくなっているのか?」簡単に安く検査できる「呼気一酸化窒素濃度(FeNO)測定装置」が開発され、保険診療の一つとして、認められるようになったということを紹介します。「自分の吐いた息を調べて、喘息の炎症が気道でどの程度になっているかを調べられる」ようになりました。(14頁に資料紹介)

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 気道のレベルで好酸球の炎症がどの程度になっているかは、痰の中の好酸球を調べるか、気道粘膜を生検するしか方法がありませんでした。呼気の中のNO(一酸化窒素)が好酸球による気道炎症の総決算であることが発見されました。
 城北診療所でも5月から調べれるようになりました。全身性ステロイドを使っていると低く出ますが、抜けば高く出ます。今のとこの総決算の状態、評価、判定もできます。成人喘息ゼミ参加者で希望の人、外来診察予約の人もやがてできます。
 喘息を忘れない「わかば」だからこそ、このような新情報を提供できるのです。喘息を忘れず、見直す機会(機械)ではないでしょうか。
 40年たっても喘息を忘れない、宮岸会長などは70年近くたっても満州や戦争のことを忘れず風化させないよう「北陸満友会」を立ち上げ活躍されています。

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 ところが、3年前の3月11日「東日本大震災と原発事故」のことは風化しつつあり、喘息と同じように、もう大したことはないと福島のことは忘れ去られようとしています。関係がないと思う人には、「考えたくないことの一つにさせたりする」傾向があります。14万人近い福島県民が不自由な避難生活を送り、関連死は右表です。日本中の地面、海が放射能汚染されている問題が解決されていないのにです。
 福島の現地を一部ですが見て、福島の喘息患者さんの話を直接聞き、千年以上花を咲かせてきた滝桜を見て、不滅の福島と日本の大地、自然に学び触れて、福島の再生、日本の再生の方向を「わかば会」は見つめます。
 「同病、相憐れむ」ではなく「同病、相励まし合う」と共に「より健康になり、よく生きる道」こそ求めます。それが「わかば会」です。
 私の福島での講演は、①最もよい、早くよくなる喘息治療は何か ②鼻呼出法で合併症を防ぐ ③呼気NO(一酸化窒素)の今号紹介の検査と意義 ④福島に学ぶ、です。この同病の人を励ますツアーが、「喘息と福島を忘れない」日になることを願って出発します。

267. 40年、35年の感謝 「40にして惑わず」

喘息をよくし治すために(267)
喘息大学学長 清水 巍

 私たちの会ができて40年、喘息大学の創立・成人喘息ゼミナールに姿を変えて35年、日本喘息患者会連絡会(日喘連)が山中温泉で結成されて25年、ホームページが開設されて15年という記念の年を迎えました。こうして数々の節目の年を皆様と共にお祝いすることができたことを、まず喜びたいと思います。
 同時に、ここまで歩みを支えて下さった皆様に深い感謝を申し上げます。人間の身体は60兆の細胞からできていると言われます。その細胞の一つ一つが働いてこそ、健康に生きることができます。1人の人間でさえ、そうですから、小さいとはいえ患者会の歩み、毎月の会報が順調に来たという事実は、多くの人の支えなしには、実現不可能でした。そういう意味で、お世話になった皆様方、全ての人に御礼を申し上げます。
 石川県に生まれた患者会が、石川県だけで400名、全国の喘息患者さん400名(ここ20年の平均数)と手をつないで40年も歩んで来たというのは、例は少ない、と言っても過言ではないでしょう。その前輪になったのは「患者さんの、よくなりたいという願い」と努力でした。後輪は「医療者の、患者さんをよくしたいという願い」と努力でした。それを示す入会お勧めの下図が私たちの姿でした。

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 40年も歩んできたのですから、「もう惑わず」です。これから50年の歴史に向かって会員の皆様と歩みを続けます。50年というのを、孔子は「天命を知る」と言いました。そこに向かって歩みを進めますが、やがていつかは思い出の中に入り、思い出の中での歩みになるでありましょう。その時まで、どうぞご一緒に歩みを進め、支えて下さい。
 薬や医学、医療40年の進歩も偉大です。活用してきました。インターネット、ホームページやフェイスブックも活用し、時代の進歩についてきました。今回は詩や写真をホームページから引用します。

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 「5月の若葉のようにスガスガしく」という願いから、若葉会→わかば会は生まれました。それにこだわって来たので若々しいのです。さらに見本は日野原先生(102才)でありましょう。94才の時、処女詩集を出版されました。その最後の詩は「おわりに」で

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 この詩から8年も生き、今もなお、元気なのです。「わかば会に所属した私たちにとって本当の自己とは、若葉のように年に応じ若々しく生きる」ことではないでしょうか。その生き方を喘息患者さんや医療者に教えてくれたのが、わかば会です。

 

268. 40周年後の出発

喘息をよくし治すために(268)
喘息大学学長 清水 巍

 わかば会40周年記念行事は表紙にもありますように、141名の参加(前日だけ、2日目だけの人も含む)で盛大に行うことができました。北は北海道の患者さんと息子さん、南は鹿児島・奄美の石田律さんと娘さん、東北から中国・四国地方までの会員が参加しました。石川県民公開講座には120名が参加され、相模原病院・谷口正実先生の充実した中味の濃い講演を聞きました。
 ①医師も職員も一銭も受け取らず、ボランティアとして患者さんのために誠心誠意尽くす ②患者さんや御家族は体験交流会を含めて、腹を割って本音で語り合う ③役員の方々は身銭を切って成功のために尽くす ―こんな1泊2日の喘息患者さんへの全国的試みは、ここにしかありません。それを来年からも続けて行く。それが参加者と日本喘息患者会連絡会総会の今年度の決議でありました。
 では、今後はどのようにするのかということです。①喘息の治療はもっと新しくよくなっていくので、その進歩を若い人も含めて学んで頂く ②鼻や耳、その他の合併症の原因を明らかにし、良くする ③高齢化に伴う様々な問題に焦点をあて、より健康寿命を延ばし、生きがいと情熱を持って「人生90歳時代」を快適に過ごせるようにする、この3つの課題の追求と達成こそが、皆さんの課題ではないでしょうか。
 その達成のために前提となる3つの考え方が必要だと私は思います。わかば12月号のここに以下のように書きました。「もう正月が来るのか、時の過ぎるのが早い。だんだん早くなるような気がする」という感じ方です。フランスのジャネという人がジャネーの法則というのを提唱して、「年齢に反比例して、時が過ぎるのを早く感ずるようになる」ことを明らかにしました。これを逆にしましょう。「年に比例して1日が長く、1年が長く過ぎ、より充実した残照、貴重な人生最後の時期となる」という考え方、感じ方、過ごし方です。
 私はこの5月20日に72才の誕生日を迎えました。十二支を一巡りとすると6巡めです。それまでの5巡りと比較すると60才からの一巡りが一番長く、充実していたと思います。これから84才までの一巡りは、もっとゆっくり充実させて、皆さまと共に過ごそうと思うのですが、どうでしょうか。
 年齢や誕生日に関して、もう1つの考え方があります。人間の一生を24時間、1日に例えるのです。3で割るとその人の時間が分かり、残り時間が分かるというものです。3才なら午前1時、36才なら丁度12時でお昼時、まだ半分時間あり、60才なら午後8時、24時までまだ4時間残っていて楽しめます。ところが、私のように72才になると「チーン」と時計が鳴って、24時で終わりです。一生分生きたのだから、あとは「おまけ」、充実させて2回目の人生を生きるのだ ―こんな考え方はいかがでしょうか。

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 3つめの考え方は以下です。今年5月2日に右写真の孫が生まれました。男の子で私と同じ5月生まれです。この孫と共に生きる、小学校4年の女の子の孫、子ども達と共に残りの人生を生きる、やがて命のリレーではバトンタッチが必要となりますが、喘息患者さんや若い職員に未来を託して、共に残りの人生を生きていく。託された者は少しは、何がしか思い出の中に受け継いで生きてくれるでありましょう。丁度、私達が祖父母や父母を思い出しながら生きたように・・・。
 だからこそ、残された人生の考え方、過ごし方が大事なのです。2012年の日本の平均寿命は男性79.9歳(世界5位)、女性86.4歳(世界1位)と言われてきました。その時に生まれた0歳の子が生きれる平均寿命ですから、イコール私達全ての平均寿命ではありません。現在の健康寿命は70~75歳程度であり、残りの10年間は自立が困難な期間とされています。そこを、「自立して生きる」、「感謝しながら生きがいを持ち、運動し、わかば会と共に生きる」ことこそ、私達の目標です。
 千年間も見事な花を咲かす滝桜を見に行って、福島を忘れず、喘息の仲間を励ましました。来年は岐阜の薄墨桜、再来年は山梨の神代桜を見るツアーを行って、桜にあやかって残りの人生を楽しむ企画もよいかもしれません。日本の三大桜制覇です。5年後と10年後の記念の楽しみとする方がよいかもしれません。違った企画も有り得るでしょう。
 「人生65歳時代」で来た日本人は、人生80年の超高齢化時代を迎えました。「人生90年」に向かって進む中に「わかば会」もあります。戦争や原発の事故が多発すれば、一気に戦中、戦後に戻ってしまい、平均寿命は短縮され、皆様のお子様、孫や彦は大変な目に遭います。そうなっても仕方がないのでしょうか。そうならない日本の平和な社会、社会保障の充実を目指して、わかば会も奮斗することが必要です。宮岸会長が満州で生きた時代への逆戻り、安部内閣は危険です。
 50周年目に向かうにあたって、所感を書きました。米国の詩人サミュエル・ウルマンは、「人は年齢を重ねただけでは老いない。理想をなくした時に老いる」と書きました。会員の皆様、残された人生、時間を「わかば会に所属してよかった」と言えるように過ごしましょう。

269. 「してあげる」から「してもらう」へ

喘息をよくし治すために(269)
喘息大学学長 清水 巍

 「喘息と共に歩む7ヶ条」 秋本信子さんの報告が、第13回成人喘息ゼミナール・石川県喘息友の会40周年記念式典で提案され、確認・制定されました。前号の「わかば6月号」4ページに紹介されています。ご覧下さい。
 秋本さんは栄養士の資格を持ちながら、筑波大学で学ばれ、北陸先端科学技術大学院大学・知識科学研究科博士後期課程を卒業されました。博士号論文に「喘息大学研究」をテーマに選び、私の著書全て、喘息大学卒業論文集全て(1~24期生)、論文を書くまでの会報「わかば」全てを読まれただけでなく、全ての言葉、キーワードをコンピューターに入れ、何が大事にされてきたのかを分析、研究され、論文にされたのです。見事、博士号を授与されたことは言うまでもありません。
 その後、「博士号を取ったのだから、そのあとはさようなら」が世の常ではないでしょうか。そうではなく、「その研究と組織が次に、どのように発展するのか、自分も参加しながら実践的に学んでいきたい」と石川県喘息友の会役員になって下さり、今日に至った方なのです。そういう人がまとめた「7ヶ条」を役員会や職員が議論を重ね、発表となりました。ゼミ参加の修了証書の裏にも印刷されました。
 その4番目に、「してもらう」から「してあげる」へ が入っています。40年前から成人喘息の方や、小児喘息のお子さんを持つ親の方々は、「こんなに苦しんでいるのだから、もっとしてもらうのが当然だ」と思っておられました。1985年刊行(今から29年前)の「みんなで治す喘息大学」の表紙は下のものでした。

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 「してあげる」ということの大切さに、ハッとされた人が多くいました。その努力の結果、石川県喘息友の会役員の方々、全国の喘息患者会役員、お世話下さった方々の努力は、並大抵の努力ではなかったのでありましょう、皆さん、よくなられたのです。この40年間、この言葉の大切さを実践してきました。それはこれからも続くので、7ヶ条に入ったのですが、これからの40年目以降はその反対も見る必要性を感じました。
 それが逆の「してあげる」から「してもらう」です。役員の方々や多くの会員は、「よくなったのだから」、実は「してもらった」のではないでしょうか。薬物療法の進歩、会報「わかば」、各種行事の中で「よくしてもらった」のです。このような逆転の発想や評価を取り入れていくことも、これからは大切だと思うようになったのです。
 気づかされたのは、3つの体験からです。同じ前号の編集後記に書きましたように、医学部同学年の同窓会に参加して気づかされたことが第1です。殆どの同期生が第一線の診療を退いていたのです。私は皆さんのおかげで、「若く見える」とか、「なんで診療や活動をそんなに元気にやれるのか」とか、お世辞もあるでしょうが言われたのです。私が会員の皆様に「実は一番してもらっていたのだ」と気づかされました。遅い気づきです。

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 2番目は、沖縄の高江にいる長男が「長男を評価して下さる石川県の方々」に呼ばれて、「とつとつとした講演」を行ったことです。私はずーっと、「恥をかくだけではないか」と心配ばか
りしていたのです。
 講演が終わってからの囲む会では、「暁(あきら)と名付けられた自分の名前を誇りに思っています」などと語ったのを初めて聞きました。子どもたちには「してあげねば」と思ってきて、「子どもは不十分だ」と思い続けてきたのに、「そうでもなかったのだ」、「教えてもらうのは私の方だ」と初めて分かったのです。皆様とは随分違って、気づきの遅い父親でした。

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 3番目。上の写真は孫娘が「してあげた」写真です。弟にとっても、姉の孫娘にとっても、「してもらった」「させてもらった」という思い出の写真にやがてなることでしょう。
 秋本さんの解説には、「ひとは誰かの役に立てることで、受けるよりはるかに深い喜びを感じます」とありました。秋本さんならではの感想です。その上で、「してもらっている」ことに気づき、喜びを感じることも、これからは大切だと思うのですが、いかがでしょうか。

270. 相互交流の大切さ

喘息をよくし治すために(270)
喘息大学学長 清水 巍

 「してもらう」から「してあげる」という皆様の長年の御努力は、とても大切でありました。前号で、その逆の「してあげる」から「してもらう」という観点も大切だと書かせて頂きました。すなわち、双方向性が重要だということですね。
 8月は「9月から3ヶ月間の喘息好発、喘息克服月間」を迎える前の月として、重要な意味を持つ月です。9月には石川県喘息友の会金沢支部・加南支部の合同行事、各支部総会と昼食会が行われます。そこを皮切りに、10月には関西交流会、関東交流会が開催されます。そこで双方向性を持つ相互交流を楽しみ、有意義に学び合い過ごすという値うちを8月に確認しておきましょう。
 石川県喘息友の会「わかば会」も40周年記念行事を終えて、あと10年は皆んなで頑張って行こうということになりました。1年、1年、寿命が縮まっているのは確実なことですが、お互いに元気で生きている間、よい相互交流を重ねていきたいものです。それこそが値打ちでありましょう。
 第1に、患者さん同士の相互交流、患者さんと医師や医療スタッフとの交流を充実させていきましょう。それは参加しないことには味わうことができません。お互いによいものを持ち寄って交流しましょう。今年の関西交流会には東京の横田勝之さん(日喘連東京事務所代表)が参加されます。関東と関西の相互交流のはしりとなれば幸いです。皆さんの貴重な経験と私の講演を聞いて頂きます。
 第2に、質の高い情報の相互交流は、確実なレベルアップを生むということです。鮎の話で恐縮ですが、喘息患者さんと好きだからということで、釣りに行っているだけの時は、上達は十分ではありませんでした。石川県鮎人会という鮎釣りを職業にしたり、毎日楽しみに出かけているという人達の仲間に入れて頂いてから飛躍的に上達しました。

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 上写真は、今年50匹釣った鮎ですが、Mさんという人に場所を口コミで紹介され、釣ったものです。私の鮎釣り歴の中では史上2番目です。(その後42匹、30匹です。)
 これと同じく喘息克服のレベルアップは、わかば会の会員、ゼミ参加者、各地交流会参加者の交流で得られます。口コミの情報で、人は参加し、動くものです。情報が溢れている今の世では、口コミのお誘いが一番信用され、確実です。皆さんのお知り合いに、ダメ元で声をかけてみて下さい。
 第3は、医学、医療の進歩との相互交流です。薬の発達と上手な使い方をわかばや交流会で学んで、今日の安心できるよい状態が得られたのは、間違いの無い事実です。個別相談や講演は、ステップアップの機会です。声をかけ誘い合いましょう!
 最近、COPD『Chronic(慢性)Obstructive(閉塞性)Pulmonary(肺)Disease(疾患)』が広く問題になっています。典型的には、タバコ喫煙の人に最もひどく起こる病気です。タバコと加齢により、肺胞が壊れ、気管支や細気管支が痛み、階段昇降や歩いても息苦しくなる病気です。それがタバコの副流煙、大気汚染物質で広く影響していることも問題になってきました。御主人の喫煙で奥さんも影響を受けているとか、潜在患者が相当いると分かってきたのです。下は2001年、今から13年前の日本のデータです。

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 COPDとして治療を受けている人は、530万人の推計患者数の3%、17万3000人に過ぎないというわけです。その中に喘息とダブっている人もいれば、530万人の中に喘息とCOPDが合併している人も考えられます。
 COPDの治療薬の新薬として、次ページで紹介される「アノーロ」(エリプタ7吸入用)の製造販売承認がされたそうです。COPD合併の喘息の人には朗報となるかもしれません。
 このように、医学医療の進歩をいち早く学び知り、それが効くか試すことを検討できるのも「わかば」のおかげです。日本で最速です。
 TBSの「駆け込みドクター!」の番組に、関東の佐藤圭子さんが出演しただけでなく、7月9日のNHK「ためしてガッテン」では好酸球性中耳炎で、東京の小倉さんが出演されました。日本の重症喘息患者さんをよくしたり、喘息との合併症をよくする難治性の好酸球性の中耳炎についても、わかば会員が代表して活躍しています。それらを9月から10月の各地交流会でも見て聞いて頂き、交流します。どうぞ参加なさって下さい。

271. 残った者は何をなすべきか

喘息をよくし治すために(271)
喘息大学学長 清水 巍

-故・久保裕先生に捧ぐ-

 和歌山市で久保クリニック院長をされていた久保裕(ひろし)先生が7月11日にお亡くなりになられました。前月号の「わかば」7ページに訃報として紹介させて頂きました。

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 どんな先生なのか、わかば会とはどんな関係にあるのか、ご存知ない会員の方々もおられます。ここに紹介させて頂きながら、深いつながりと長く特別な御厚誼に感謝を捧げるつもりです。そして御冥福をお祈り申し上げる次第です。
 先生は栃木県に1951年誕生。宇都宮高校を卒業され、和歌山県立医科大学に入学、卒業後は大阪・堺市の耳原総合病院で研修され、和歌山生協病院で長い間、喘息を中心とした医療を担当され、全国で2番目の喘息大学を1985年に開校されました。それに触発され、大阪喘大、長野喘大、鹿児島喘大、宮城喘大、岡山喘大、愛知喘大、計8大学が開設されたのです。
 先生は、御自身が小児喘息を体験され、成人になられても呼吸機能障害を自らコントロール、闘病されながら、患者さんをよくするために誠心誠意尽くされました。夜に喘息発作が起こると、御両親の背におぶわれて明け方を待ったり、町の電話帳を「あ」から声を出して読み、「わ」行まで終えて、また「あ」行まで戻ったという壮絶なお話をお聞きしたことがあります。
 それだけに、先生の喘息克服に寄せる思いは真剣であり、本物でした。私自身は喘息の病気を発症しませんでしたが、祖父が喘息であったり、姪に喘息がありました。医師となってから、石川県の小児喘息、成人喘息の人が苦しんでおられるのを見て、この人達のために役立つ専門医になろうと決意しました。
 久保先生は、御自身が体験の持ち主、私は体験は無いけども同じく喘息克服を目指した医師として、連帯と共同が生まれたのです。久保先生はパソコンを早くから駆使され、オンライン喘息友の会を組織され、活躍されました。1993年には日本で初めての喘息デーを提唱され、東京・大森のニフティ会館で御一緒に電話相談活動を行いました。共著も何冊もあります。

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 インタールを日本で販売した藤沢薬品の偉い役職の方が、「日本で最も喘息患者の立場に立って、医療活動をし、患者教育を行っているのは和歌山の久保先生と石川の清水先生である」と白羽の矢を立てて下さり、患者教育のためのビデオを作製、普及してくれました。その中に久保先生が出演されてますので、遺影の代わりにその2つの写真と(上の写真)、私たちの喘息大学第12回交流会で特別講演をして頂いた写真(下の写真)を掲載し紹介しました。そして深く感謝を捧げますと共に、先生の在りし日を偲ぶものです。

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 その後、久保先生と私の見解が異なるということで、距離が生じました。私は「成人喘息も治り得る」、久保先生は「治らない」という立場を強調されました。御自身の体験を元に断言されたのかもしれません。私は山の斜面が両方あることに例え、両面があると説明しました。久保先生は「自分は軽い喘息の人を中心に診てきた。その違いがあっただけで、本質は一緒だ」と後ほど語って下さり、和解が進み、共同で世界喘息デーや県民公開講座を、それぞれの県で進めることになりました。
 このような長きにわたり共に歩んできた先生を先に失うことになったことは、痛恨の極みです。弔意を表し、残された者としての私の決意を表す場は、この「喘息をよくし治すために」の欄全てを捧げても足りない、しかし私にできることは、それが最大である、その思いでここに書かせて頂きました。
 久保先生は「和歌山県が喘息死ゼロを先に実現するか」「石川県が先になるか」、競争しましょう、と言っておられました。ゼロになるまで私も生きられないかもと思ってはいたのですが、その競争を「目指すべきもの」として受け入れてきました。
 残された者として、何をなすべきか。壮絶な一生を「喘息克服」に捧げた久保先生の御遺志、願いをわかば会と共に引き継いで行く、それが盟友、畏友に捧げる唯一の弔辞だと思います。御家族にとっても、かけがえのなかった久保先生、私たち喘息患者にとってもかけがえのない存在でした。安らかにお眠り下さい。(合掌)。

272. マスコミの働きと利用

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喘息大学学長 清水 巍

 9月、10月、11月と喘息克服月間になっていることはご存知でありましょう。それは秋が喘息発作の好発季節だからであります。何故、秋なのか。
 高温多湿の夏に成長し、繁殖した目に見えない小さなダニが死滅し、風化して子どもさんや成人喘息のダニにアレルギーを持っている人に影響を与えることが、第1の要因です。直接的に気道過敏症を高め、喘息発作を引き起こす場合もあるし、潜在的にダニアレルギーの体質にあって、お鏡モチの1つがふくらみ、気温の変化や他の要因と重なってダブルパンチ、トリプルパンチとなって発作に至る場合もあります。
 マスコミもこの季節に喘息を取り上げることが多かったのですが、薬物によるコントロールの発達がよくなったので、あまり注目しなくなり、報道することも少なくなりました。しかし、世界的にも日本でも、喘息で死ぬ人は少なくなったのに(2013年は日本では2000人以下)、患者数は増加しているのです。2010年時点で日本には500万人の患者がいるとする著者もいます。
 石川県の北陸放送(MRO)が、城北や寺井の取組み、わかば会の取組みを取材し、9月24日(水)夕方に「レオスタ」という番組で5分間の放送を行ってくれました。診察の場面も必要だというので、丁度予約患者であった日喘連会長・わかば会副会長の西村昭さんに協力を頂き、インタビューに応じて頂きました。
 片山津温泉の「古賀の井」での、加南・金沢の両支部総会も取材し、放映してくれました。石川県だけの放映ですが、関東・関西での交流会でも見て頂きますし、全国の人にも「わかば」を通じて広がります。
 日本では秋が喘息発作好発季節ですが、ヨーロッパやアメリカなど西洋、オーストラリアなどは、5月頃が喘息発作好発季節ということで、世界喘息デーは5月に設定されているのです。

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北陸放送の取材(城北診にて)

 今年の5月19日、第13回成人喘息ゼミの直後に東京の佐藤圭子さん(古くからのわかば会員、関東交流会の世話人)が、TBSのテレビ番組「駆け込みドクター!」に出演されました。同じく、第13回成人喘息ゼミナールに参加された関東喘息患者連絡会代表の小倉康次さん(東京)が、7月9日放映の「ためしてガッテン・悪魔の中耳炎(好酸球性中耳炎)」に出演されました。

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佐藤さん(駆け込みドクター!)

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小倉さん(ためしてガッテン)

 このように、全国的な喘息や合併症の啓蒙に石川県喘息友の会「わかば会・会員」地方の世話人の方が登場し、役立っています。東京の方に登場が多いのは、全国のテレビ局の中心が東京にあるからです。地方まで取材に出かけるのには費用が莫大となるので、「日本喘息患者会連絡会」「わかば会」の事務所、あるいは常任顧問の私に、「できれば東京の人を紹介してほしい」と注文されるのです。

 このような全国的な喘息と関係する番組、石川県の番組に「わかば会」関係者が選ばれるのは、全国的に「喘息克服のための活動を最も熱心に、長い歴史をかけて取組んでいる」ということが評価されるからでありましょう。40年以上に亘る会報の発行、ホームページでの発信、喘息患者会活動が薬の改善や会員の高齢化のために、軒並み活動が鈍化している中で、精彩を放っているのです。
 それを支えているのは全国の会員さん達であり、地方の役員、世話人、協力して下さる関係者、城北や寺井病院の職員です。皆さんの支える力があってこそ、これまでの長く立派な活動が支えられてきました。その方々の情熱、献身、協力こそ「命」です。絶やすことなく、新たな人の協力も得ていくことが大事ではないでしょうか。
 考えてみれば、わかば会を知ったのも、喘息大学を知ったのも、城北病院や協力してくれる各地の病院を知ったのも、マスコミのおかげ、ご縁があったからという人も多いはずです。その恩恵に恵まれなかったら今日は無いという人も多いはずです。
 「ごろ寝していてテレビを見ていたら、喘息のことがテレビに出てきて、喘息大学や城北病院を知った」とか、新聞、雑誌で初めて知ったからというお話を何度もお聞きしました。
 マスコミで紹介されるというのは「人助け」にも通じるので、各地でもダメ元でよいから連絡をとりましょう。しかし、何よりも「よい活動の継続」こそが、最も大事だということを再確認しようではありませんか。

273. 交流の働きと利用「人は人によって人となる」

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喘息大学学長 清水 巍

 マスコミの働きと利用について、前号で論じさせて頂きました。主に石川県の活動と関東の方々のマスコミへの登場や写真の紹介となりました。マスコミだけが重要か、そうではありません。今号では、「幾つかの交流」を紹介し、その大切さを皆様と共に考えてみたいと思います。

①関西交流会・岐阜ほむらの会・・・・・本号で、2つの交流会が紹介されました。報告記事を読んで頂ければ、貴重な内容が参加者に伝わったこと、そして「わかばの11月号=今号」で会員の皆様に伝わったことが確認できます。
私のレルベア(ステロイド吸入と長時間気管支拡張剤の新薬・合剤)をはじめとした、最新の医学的情報の講演、京都の浅本先生による趣きの違った講演、裏千家・米林宗恵さんのたてて下さったお抹茶(京のお菓子と共に生涯忘れられない味が舌に残りました)、中村貴美子さんの妙なるフルート演奏、分散交流会、夕食懇親会、どれひとつとっても、矢原さんをはじめとする実行委員の方々の力と心がこもる交流会でした。神奈川、愛知、三重、岡山からの参加者も大満足だったようです。

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 オプショナル企画として、翌日の日曜日に有名な「瀬田ゴルフ」にお誘い頂き、台風18号が迫る小降りの雨の中、巽さん、田蔵さん、横田さんという大ベテランと共に遠征でのゴルフを初めて楽しみました。初心者の私は130のスコア(それでも今年のスコアでは最もよかった)で最下位、大ベテランの素晴らしいプレーには遠く及びませんでしたが、貴重な体験をさせて頂きました。そのおかげか、10月15日に学生時代の仲間(30年以上のゴルフ歴)3人とプレイしたら、私にとっては118という史上最良のスコアで3位の成績を出すことができました。「70才後半から始めたとはとても思えない」とベタ誉めを頂くことができたのです。良き交流のおかげです。
 岐阜ほむらの会では、上野先生が「高齢化社会の中で生きる知恵」を、膝つき合わせて語って下さり、皆さん大満足であり、これからの糧として実りがあったようです。 このように、マスコミと関係なくとも続けられる貴重な交流会、色々な交流、それは私たちに磨きをかけてくれる貴重な場だと思います。

②医療費高騰を迎える中での交流・・・・・医学、医療、薬の発達はこれからも進み、医療費が増大するのは止むを得ないのではありますが、その恩恵を受けれる人と受けれない人の格差が拡大するでありましょう。交流会などへの参加は、個人の費用が必要にはなりますが、病気の改善、悪化の予防、医療費の増大を防ぐという点で、貴重な効果を平等にもたらします。(下記の医療費の推移グラフ参照)

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 例えば、認知症予備軍といわれる軽度認知障害を持つ人と発症した認知症患者を加えると、日本には800万人(65才以上の4人に1人)になるそうです。その医療費介護費は馬鹿になりません。
 その発症を遅らす、発症させない、改善するという点でも、よい交流が必要だということが言われています。
 国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の生活機能賦活部研究部長の島田裕之さん(43才)は、「1日1回、外に出て人と触れ合い、楽しく活動すること」が認知症の予防につながると結論を述べています。(機関紙「わかば」2014年11月号18頁新聞記事参照)
 私たちの交流の活動は、喘息をよくするだけでなく、認知症の発症を遅らせ、予防したり、治療にも少なからず役立っています。今号の9頁に最近の合剤値段表を紹介しました。医療費を減らし、喘息改善に役立っていることも明らかです。長く使う薬ですから、財布との相談、皆様のふところを暖めることも会報の役目です。

③いろいろなツールでの交流・・・・・喘息デーでは、電話、手紙、FAX、メールでの相談に応じました。昔からある交流の方法です。これはこれで活用したいものです。ホームページでの交流も盛んです。私たちも3つのホームページを持ち、会員専用掲示板で交流を行っています
(最近、HP表紙をマイナーチェンジ)

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 今は「フェイスブック(Facebook)」での交流が便利で人気です。沢山の人と瞬時に情報をやりとりすることができ、メッセージ機能も有用です。フェイスブックをやれる会員、ご家族の皆様、友達になりましょう。まず、私(清水)に友達申請(リクエスト)して下さい。にほんブログ村というのもやっています。(HP参照)
これだけ毎日やっていると大変です。しかし「人は人によって人となる」。支え合い、磨き合いによって、交流によって、進歩が生まれるのではないでしょうか。裏表紙「喘息克服月間打ち上げ講演・交流会」にご参加下さい。

274. 医学・医療の進歩をためしてみよう

喘息をよくし治すために(274)
喘息大学学長 清水 巍

 今年も残すところ1か月となりました。来年はもっとよい年にしたいですね。石川県喘息友の会「わかば会」は40周年行事を2つ行いました(福島の人を励ますツアーと記念のゼミと式典)。41年目を迎えるのですから、その土台の上に41歳の働き盛りの人のように「わかば会員」として、元気に過ごせるようになりましょう。
 そのための第1は、「医学・医療の進歩」を学び、試してみることです。ご存知のように、「医学・医療はどんどん進歩・変化」しているのです。わかば会員や城北、寺井に通院している喘息患者さんや、COPD、じん肺、スギ花粉、アレルギー性鼻炎、化学物質過敏症、好酸球性副鼻腔炎や同中耳炎、チャーグ・ストラウス症候群などの人は、「わかば」で情報を手に入れることができているはずです。
 しかし、よく知って実行しているか? 学ぶことに熱心か? というと、?の付く人もいます。毎日のことですから、知っているのか? 実行しているのか? で、大きな差が出てしまうのです。例えば、「食前のステロイド吸入療法とウガイ」を実行することは、会員の人では常識になっています。「せっかく口から吸うのだから、鼻から出す=鼻呼出法がお得」も普及したかと思います。毎日それを実行するかどうかで、大きな差が生まれます。鼻洗浄や鼻の管理も同じです。
 今号では、幾つかの進歩を紹介します。

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① レルベア(200)が1ヶ月分以上もらうことが可能に。ためしてみましょう。
 「新薬としての投与制限が12月から切れ」て、1ヶ月投与が可能になったためです。2週間分しか投与できない11月までの間、わかばでは何回も紹介してきました。城北や寺井では、よりよいコントロールを求める人が沢山、この吸入で改善しました。重症持続型相当の人が、1日1吸入でよくなりました。
 有名大病院が林立する関東、関西交流会で、「この薬を使っている人は?」と手を挙げてもらったら、どちらも1人ずつしかいませんでした。大病院は2週に1回も通院してもらうと困るので知らせなかったのです。開業医の先生は2週に1回通ってほしいので、12月からも2週分しか出さないかもしれません。わかばや城北、寺井のように、患者さん最優先ではなく、情報も自分達の都合でコントロールされるかもしれません。
 ステロイド吸入剤と長時間気管支拡張剤の合剤として、レルベア(200)は最も強力、朝晩2回吸入する必要がなく、1回吸入で24時間効くのです。しかも重症の人に安く、3拍子揃っています。
 アドエア500を朝晩1吸入、シムビコート1日8吸入よりも、強力な効果が出る人もいるのです。 
 コントロール不十分だと感じている人は、主治医と相談し、試してみる価値があるということが第1の情報です。朝食前の1日1回の吸入、鼻呼出をお忘れなく。その上で、元の薬がよければ戻せばよいのです。

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②シムビコートのスマート療法による追加吸入療法は、アドエア(250)にメプチン吸入追加療法より吸入回数が少なくなり、より症状改善効果がある。
 シムビコートを朝晩2吸入している人は、具合が悪い時にサルタノールやメプチン吸入より、シムビコート追加吸入の方が、より安定させるという情報です。
 それらも試して主治医と相談するとよいでしょう。

③インフルエンザワクチン、成人用肺炎球菌ワクチンの接種。
 「予防に勝る治療なし」、医療の発展で65歳以上の人の5才刻みの公的助成が始まりました。これについての資料は後に紹介します。

 他の病気治療の進歩享受も大事です。来年2月の粟津温泉「金閣」1泊での、石川県喘息友の会総会・新年会、4月の岐阜・淡墨桜見物と東海地方の人との交流日帰り、5月の第14回成人喘息ゼミナールを楽しみにして、総合的なレベルアップを実現しましょう。来年は喘息も全身も、もっとよい年にしようではありませんか。