喘息をよくし治すために(2011)

227. 兎にちなんで「人に優しく」

喘息をよくし治すために(227)
喘息大学学長 清水 巍

 あけましておめでとうございます。毎年の恒例ですが、野口正路さんの「新年に贈る言葉」(土曜美術出版販売)から詩を引用し、冒頭を飾ります。

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 宇宙や月がロマンチックな夢で考えられた時代には、月に兎がいる、見えるだろうなどと語られていました。望遠鏡や双眼鏡でのぞきながら「餅をついている兎が本当に見えるのか」と考えたのは遠い昔です。
 月面のカメラから、地球が昇ってくる映像がNHKテレビで放映されたり、月の石が地球に持ち帰られたりしました。月を見ると「宇宙服の兎」を想像する時代になったのでありましょう。
 昨年はイトカワ(アメリカで発見された小惑星だったけれども、日本の小惑星探査機「はやぶさ」の探査対象となったことから、日本のロケット開発の糸川博士の名前をつけてくれるよう日本側が要請し、アメリカが了承してイトカワと命名された)から持ち帰られた岩石が話題となりました。
 宇宙の研究が進んだり、月と兎の関係が変化はしましたが、ウサギのイメージは「優しい」ということで、変化はないように思います。昨年は虎年ということで勇ましくとか、積極的な行動を!と表紙で呼びかけられていました。今年は「人に優しく」と願われています。年頭にあたり「おたがいに優しくあるように」ということをキーワードにして、今年を過ごしましょう。
 と言っても、そのようなことを考えるのは年頭ぐらいのもので、やがて忘れてしまうのが世の常です。今年は2月の新年会や総会でも確認し、5月の第10回成人喘息ゼミ、秋の喘息デー・喘息克服月間・各地交流会でも「人に優しく、できれば環境にも優しく」というキーワードをかかげて過ごそうではありませんか。
 具体的に3つの提案をします。

 1) 医学の進歩を取り入れ、体にも心にも優しい1年をつくる

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 上左の学会ではイギリスのフォルゲート先生が、「気 道の炎症ばかり問題にされてきたけども、これからは気道上皮の側の研究を進めて、リモデリング(不可逆的な変化・再構築)が起こらないようにすることが大切」と講演されました。やがてそちらの薬も開発されるのでありましょう。
 私の新著は関連の薬が写真入りで全て載っています。文章を書けばきりのないほど長く書けるのですが、1000円の値段にするため最小限に短くしました。これをいつも持参し、薬の名前を覚え活用し、よい身体、心を作りましょう。

 2)経済的にも助かる追求を
日本の大企業は内部留保を溜め栄えても、国際競争力を高めなければと、利益を国民に還元しようとしていません。そのため庶民の生活は苦しくなっています。

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 身体障害者1級、3級、4級などの認定を受ける資格のある人がいるかもしれませんし、会員に「優しいわかば会」ということで、取得のための情報をやがて紹介していきます。障害年金や利用可能な制度を追求する年にします。
 会員1000名以上の達成、障害者割引制度の適用、各種補助金の申請などは会としては助かります。また会員が亡くなると会報は送らないことになりますが、賛助会員制度やわかば会への寸志の御寄附など検討、呼びかけることができればと思います。

 3) 会報やホームページで「優しさ」の追求を
 1月号には、ご覧のように沢山の会員さんから寄せられた言葉を掲載しました。会員相互に優しさを追求し、おたよりコーナー、文芸欄を心がけて充実させてましょう。
 わかば会を通じ、お互い「優しい人」になれるよう今年は頑張りましょう。

228. 「多様な願いの実現を目指す」

喘息をよくし治すために(228)
喘息大学学長 清水 巍

 兎にちなんで「人に優しく」と1月号に掲げて本年を出発しました。人に優しい1年にするということは「多様な皆様の願いを実現する」ということではないでしょうか。
 昨年は名古屋で「COP10(テン)」の会議が開催されました。COPはConference of the Partiesの略語で「生物多様性条約第10回締約国会議」のことです。生物の多様性の保全、持続可能な利用他が追求されました。環境や生物の多様性を守ることは、とても大切ですが、人の多様な願いや夢を実現することも大切です。
 多様な願いの実現の前提は「健康で生き抜く」ということです。多くの会員の皆様が会員更新をして、健康で長生きをして下さっています。それは多くの年賀状にも書かれていました。しかし、道半ばで亡くなられた会員もいます。千葉県の平田良行さん65才もそのお一人です。昨年暮れ「欠礼のハガキ」を頂いてビックリし、奥様に電話しました。
 喘大10期生として千葉で関東交流会開催の中心になられたり、交流会の時にはいつもお姿がありました。四国巡礼、世界七大陸の山々を登る挑戦でもハリキッておられ(下写真)、白山登頂の折りには御一緒しました。庭木の剪定で高い木に登っていて、頭から落下し斗病の末に亡くなられたそうです。ここに謹んでお別れの御挨拶を申し上げ、御冥福をお祈りする次第です。

g228_01中央が平田良行さん ボルネオ・キナバル山頂にて
(2009年わかば1月号お便りコーナー掲載)

 1月号から寂しいお知らせはやめにしようと、この2月号で御報告させて頂きました。人を大切にし、会員を大切にし、優しい「わかば」であるためには、このような悲劇もお伝えしなければなりません。しかし、そうした事故にあうことなく、お互いに人生を大切にする、そういう強い根本のメッセージが必要と思い、2月号冒頭に掲げさせて頂きました。
わかば会の第1の願いは「喘息をよくすること」です。本号に「富山わかば会」の記事が2頁にわたって載っています。その中心の中沢さんは昨年の成人喘息ゼミナールに初めて来られた人でした。ドイツに住んでいた時に「わかば会」を知ったそうです。自分も喘息でしたが、おじいちゃん、お父さんが喘息で亡くなられました。そういうことを無くすためにと、努力を開始されました。

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 上の写真は、スウェーデンから私の外来に娘さんと共に、挨拶に来られたお母さんの写真です。年賀状として送って頂きました。娘さんの喘息の件で、インターネット上の「喘息Q&A」で相談にのりました。感謝されて、日本に行った時には「御挨拶に伺います」と返信に書いておられました。言われたことと実行とは違うことが多いというのはよく経験してきましたから忘れていました。それが昨夏に来られてこんな写真となり、スウェーデンから送って頂いたのです。娘さんは「助言で薬が不要となり、医師となること」を目指しているのだそうです。素晴らしいことですね。尾辻君や塚田さんに続くのです。
 タイガーマスクという名前でランドセルを贈るというのが話題になりました。「人に優しくない政治や経済の日本」でせめて優しくしてあげたいという善意が表れているのでしょう。会員に優しくという点で、①心身障害者団体として認められるようにし、「わかば」郵送料1通60円から8円にするという努力、②遠くから記念の第10回成人喘息ゼミナールに参加宿泊する石川県外のリーダー60名分につき、1人5千円分の宿泊費の補助をして頂けるように、アステラス製薬の公募制活動資金助成を申請しました。①②は実現したということではなく、目指して努力しているということです。
 ③多様な願い実現のために、2月の総会で規約改正を提案する予定です。会員の人が亡くなられると、退会とし会報を送らず会員でもなくなるというのが常でした。賛助会員制度というのを設け、故人の意志を継いで会報を受け取るなら3千円の賛助会員、会報を受け取らなくても1千円でも2千円でも個人の賛助会員として残って頂く。企業の賛助会員制度、ゼミへの寄付受付などの新設・提案を予定します。
 最後に、記念のゼミナールではオープニングミュージックに中村みどりさん、山崎雅美先生のピラティス、大川義弘先生の講演、多彩な体験発表などは、多様な願い実現の目玉です。お申込み下さい。少なくとも会員の更新をお願いし、皆様の多様な願いを実現する年にしようではありませんか。

229. 「会員1000名達成・記念のゼミ成功を」

喘息をよくし治すために(229)
喘息大学学長 清水 巍

 石川県喘息友の会総会・新年会が56名の参加で、片山津温泉・ホテル翠湖で行われました。患者さんと職員が楽しく交流しました。そこでわかば会の規約改正が行われました。
 新たに賛助会員制度(個人と団体の別あり)が設けられました。VIPとして無料で会報を送っていた個人、団体の皆様にも可能なご協力を頂くという意味で、賛助会員への移行をお願いしていこうということになりました。対象の方には個別にご連絡を申し上げる予定です。昨年亡くなられた会員のご家族にもお願いしてみることにしました。会社や団体として1万円以上の賛助団体会員になってもよいという会社などにもお願いをすることにしました。
 このような努力を追加すると共に、本命の郵送会員、IT会員の皆様の更新をお願いして、1000名以上の会員達成を3月中に目指します。4月、5月、6月にズレ込む人もいるかもしれませんが、ご協力をまずもってお願い申し上げます。
 翠湖での新年会は「41年目の乾杯の音頭」をとらせて頂きました。1970年(昭和45年)の12月に同じ場所(当時は白楽苑という名前)で加南の喘息患者さん方と忘年会で乾杯の音頭をとらせて頂きました。そして酒を飲み、「患者さんの本音」を聞くことができたことから、今日までの道を一緒に歩んでまいりました。今日あるのは「加南若葉会」「金沢喘息友の会」、そして現「わかば会」の皆様のおかげであります。
 その後、ANAクラウンプラザホテル金沢(旧全日空ホテル)で開催された喘息の研究会で「乾杯の音頭をとるよう指名」を受けました。北陸3県の90名以上の呼吸器・喘息に関心を持つ医師の集まりでした。大学教授や有名病院長もおられた場所ですが、「喘息の研究会ですから先生に」と金沢大学臨床教授F先生に指名されたのです。「40年前は私一人が専門医でした。今ではアドエア、シムビコート、キプレス、ゾレアなどの進歩があります。そして90人近い喘息専門医がここに集まっています。二つの力を合わせて喘息患者さんのために頑張ってまいりましょう」と挨拶をさせて頂きました。「40年ですか、ご苦労様でした」という労いの言葉を懇親会で頂きました。
 民医連呼吸器疾患でも乾杯の音頭をとるようになっていますので(乾杯要員というのだそうです)、現役のつもりでも長老扱いになったのでしょうか。今年の5月20日(金)は、数え年70才=満69才の誕生日です。愛知の大中さんから「わかば会員専用掲示板」に次頁の「古希お祝い」を頂いて、「古希を迎えてしまう」ことを知りました。本当は今年の1月1日で数え年70才になったわけですから、もう古希なのかもしれません。ややこしいので今年から来年の誕生日までを60代最後の年=前古希、来年の誕生日以降は70才=後古希と勝手に言わせて頂きます。年代の節目を2年にわたって感慨深く、一人過ごさせて下さい。それにしても年を取るのは早く、光陰矢の如しですね。

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 昨年の3月号には合剤やステロイド吸入剤の薬価表を掲載しました。今年度は抗アレルギー剤や第2世代の抗ヒスタミン剤の値段表を紹介しました。アレルギー性鼻炎や杉花粉症、アトピー性皮膚炎の人にも大いに関係があるのです。最高1日薬価291.8円~17.6円に至るまでの差があるのです。私は一番下の2つを使っています。皆さんやお知り合いは、どれを使っていますか?
 こんな情報も知って、自分に合うクスリを選ぶことができれば「私のお薬ハンドブックを購入し、わかば会に入会してもお釣りが来る」のではないでしょうか。にも関わらず、保険の効かない民間薬品に大枚を次ぎ込み、医療機関にかかって薬をもらうだけで、学習しようとしない人が沢山いるのです。
 4月からの「わかば」にはハンドブックの見開き2頁ずつの薬価表を掲載していきます。次号は8頁と9頁です。このようにして、患者さんに役立っていこうとする40年を続けてきました。その延長線上を患者さん、会員と共に走っています。医学的にも経済的にも楽に楽しく過ごせる道-----それは「わかば会」であり、「ゼミ参加」ではないかと本号で呼びかけさせて頂きました。

230. 前提の再検討を -東日本大震災を経験して-

喘息をよくし治すために(230)
喘息大学学長 清水 巍

 3月11日(金)午後に未曽有の大地震と大津波を太平洋側で経験しました。それに伴って福島原発の甚大な事故と放射能被害、電力供給障害などが発生し、莫大な悪影響が発生しました。ここから何を教訓として導き出す必要があるのでしょうか。
 日本ではかつて関東大震災、戦争による加害と被害、近くでは阪神淡路大震災を経験してきました。「想像を絶する被害は発生し得ること。しかし、これまでは再生する余力は残っており、それによって復興を成し遂げてきた」というのが第1の教訓だと思います。地球の歴史上から見れば「日本列島全体の沈没や隆起」などを含む地殻変動が起こるかもしれません。そこまでを前提にしては何もできません。
 これまで起こったことの1.5倍くらい震災が起こり得ることを前提とした対策くらいは必要ではないでしょうか。①災害への対策、②原発に頼らない電力行政―あるいは安全神話を完全に否定して、大事故が起こった場合の確実な防護方法の確定、③食料は自給できる国づくり(TPP参加は絶対に中止)、④GDPの向上最優先主義や大企業の内部保留の積み上げ至上主義、利益優先の姿を規制し、富を国民に還元させる、⑤人間は助け合う生き方をする存在である教育と実践などを少なくとも「前提」として確立しなければと私は考えます。

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 イギリスで産業革命が起こった後に、16時間労働や子どもの労働などが利益優先で公然と行われた前提を、8時間労働や子どもの労働禁止という前提に人類は変更しました。このように「当たり前にされた悪い前提」を「よい前提」に変えていくことが必要です。
 わかば会としては、この号 の3頁にありますように「義援金」を被災喘息患者さんや被災地の喘息患者会にまず送りましょう。わかば会員や喘息患者さんを特別に助けてあげられる組織は私たちのとこ以外に無いのです。私が福島県出身者だからなどということではなく、被災した会員や喘息患者さんを物心両面にわたって心から励まし、支えることが大事です。
 役員会は「喘息患者さんも新規発生し、困っているし、ゼミで一層よくなって頂けるようにと開催する。そして被災者の3000円の参加費は無料にする」と決めました。
 石川民医連は「何次」にもわたる医療班を派遣しましたし、病院・介護施設で被災者を迎え入れることを表明しています。可能なことをやることは勿論です。神奈川県にいる娘や孫にも「いつでも逃げて来い。暖かく受け入れるよ」と電話しています。近く孫が小学校に上がる前に来るそうです。できることの全てを実践的にやると共に「当たり前とされたこれまでの前提を、この惨事に出会って見直せれば」、再検討ができれば、「禍を転じて福」にすることができます。
 喘息患者さんにこのページ、スギ花粉症の患者さんに次ページに役立つことを紹介します。医師は医学的にやっていればよいのであって、患者さんの経済面、生活面のへの配慮は二の次、三の次、という前提も崩すことがあってもよいと思うのです。下は最も多く使用されている合剤の値段表(薬価)です。上段に1個あたりの値段を表示、下段に1吸入あたりの値段を表示しました。

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 私の新著「ハンドブック」の薬の写真に値段を転記しておくとよいでしょう。
 アドエアディスカスには28吸入、アドエアエアゾールには120吸入製剤、シムビコートには30吸入製剤があるのですが、計算すると上記写真のものが一番割安となるのです。割安のもので慣れるか、28吸入や30吸入のものを試すだけとして選ぶか、エアー製剤が少し高くてもいいか、判断と選択は人によります。同様に値段よりも効果、自分に合うものとして、ディスカスを選ぶ人、シムビコートを選ぶ人があってもよいでしょう。
 シムビコート200μg1吸入はアドエア100μg1吸入と同等と考えられていますので、1吸入あたりはシムビコートが安いということになります。シムビコート2吸入を朝晩、計4吸入すると月に2個で11,672円となり、アドエア250μg1個が7210.1円なので、吸入量が多くなると割高となるかもしれません。値段と効果、自分にあう必要吸入回数を医師と相談しましょう。
 費用対効果も考えて、これまでの前提の見直しも進めていこうではありませんか。太陽光の活用、節電、自然治癒力の向上が根本に必要です。

231. 備えあれば、憂いなし

喘息をよくし治すために(231)
喘息大学学長 清水 巍

 一定の備えがあっても、十分でなければ「とんでもない心配な事態になる」ことを日本人は経験しました。原発の事態などはその典型ですね。
 わかば会役員会は「第10回成人喘息ゼミの参加費は、被災地という申請があれば3000円の参加費を無料とする。義捐金を募集する」と決定しました。わかば4月号で訴える前に、城北と寺井の外来で12万円の義捐金が集約されました。被災地の日喘連加盟喘息患者会や2011年度のわかば会員に届けられます。4月号以降も振り込み、外来で続々と集まっており、4月22日現在で約40万円です。
 私は少しでも励みになればと、青森、岩手、宮城、福島の2010年度の患者会代表とわかば会員全員に電話をしました。気仙沼の会員おひとりだけが、電話は鳴るのですが避難をしていらっしゃるのか、連絡がとれませんでした。その他の会員とは全員連絡が取れ、御無事であることが確認できました。起こってしまった以上、できることに最善を尽くすことが、わたし達の使命であります。
 しかし、今後予測される心配に対し、最善の手を打っていくことも必要です。喘息のコントロールはよくなってきて、「薬さえあればよくて、わかば会など必要としない」、「生活が厳しくなり、年間3000円の会費ももったいない」、「会員の高齢化が進み、死亡する人や脱会する人も出る」、「A4判にして大きな字にしないと読めない」などの現実があり、対策が必要です。

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 上は厚労省からのメールでの回答です。石川県は「国が基準を明確にしないので認めることができない」と言い、国は「都道府県が判断すべきこと」と言うのです。
 石川県喘息友の会が「心身障害者団体」として、石川県に認められれば現在1通のわかば発送の郵便料金60円が8円~11円になります。不正ではなく、正当に認められれば、経済的負担軽減にもなります。石川県障害課は最近になって「いつのことか分からないが、手帳保持者が20%以上の団体を認めた前例がある、と聞いたことがある」とようやく数字を明らかにしました。20%以上が手帳保持者であれば、認定を迫ることが可能となりました。
 昨年、調査をして県にも提出したのですが、全国的には全会員の11.79%でした。それでは認められませんでした。20%以上なら可能性が出るということで、石川県内のわかば会員だけで比率を調べたところ、16%の人が身障の手帳を持っておられました。製薬会社の人や喘息患者さんではない人も会員になっておられますし、石川県在住の喘息患者さんだけを「石川県喘息友の会本会員」とし、「わかば」を発行するのはその本会員の団体が発行すると規約変更すれば、限りなく20%に近づきます。その団体が発行する会報を全国各地の人や関係者が適正な料金を払って読む「読者会員」と位置づければ300人の本会員の団体が1000部の会報を発行し、郵送してもよいとされているのです。
 元々、1974年に会が発足した時は石川県の患者さんだけでした。喘息大学やインターネットで全国各地から会員になって頂き、会報を送るようになったのです。それで「元」に戻し、発行するのは石川県在住の喘息患者さんと役員会、及び事務局、編集部。読者会員は全国各地にいるという規約に、来年度の総会で変更してもよいのではないでしょうか。あくまでも決定するのは役員会であり、総会です。日喘連総会もありますので、今号で議論材料として投げかけた次第です。
 その上で、石川県在住の喘息患者会員について、身障者手帳を受け取る資格のある人がもっといないのか、厳密に公正に調べ、取得する人が増えれば、その人や家族にメリットが生じますし、会としても比率が高まります。
 呼吸機能の身体障害者基準は、石川県では動脈血ガス分析が最も重視されています。指先で測るSPO 2(経皮的酸素飽和度)が90を切る人は60Torr以下と考えられますので、認定される可能性が出てきます。

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 TorrというのはmmHgのことです。呼吸機能検査(FVカーブ)と動脈血ガス分析の検査を受け、上記の基準を満たした時に書類申請が可能となります。
 3級以上に認定されれば、石川県であれば医療費が無料となり、自己負担が無くなる自治体が殆どです。4級でもいろいろなメリットが患者さんに出てきます。呼吸機能障害以外の障害の4級がもうひとつ増えれば3級扱いとなります。
 石川県内の会員さんは勿論、他県の会員さんも「自分は該当しないか」、先生と相談してみて下さい。相当苦しい発作が続かないと駄目ですが・・・。他の障害での手帳取得もあり得ます。これも「備えあれば、憂いなし」につながるのではないでしょうか。ゼミでの大川先生の講演も同様です。会にとっても、会員さん個人にとっても大きなメリットが出てくるかもしれません。

232. 私が早期?肺癌?の手術を

喘息をよくし治すために(232)
喘息大学学長 清水 巍

 全国から約90名の成人喘息患者が参加する5月21日(土)、22日(日)の第10回成人喘息ゼミナール(於:都ホテル)を終了した次の日・23日(月)に、金沢大学呼吸器外科病棟に入院します。北陸の肺癌手術では最高の権威、小田 誠教授の執刀により、胸腔鏡での右上葉切除と肺門リンパ節郭清の手術を5月25日(水)に受けます。今後の喘息治療にも影響が出ますので書かせて頂きます。
 このようにしなければならないということが分かったのは、4月18日(月)の胸部CTの検査の結果でした。右肺の外側上部・肺尖部に直径1.5cm大の腫瘍陰影(胸膜を巻き込んで成長し、内部に核を形成・腺癌と思われる)が見つかったのです。その時・同時に胸部正面や側面の通常の胸部写真も撮影しましたが全く正常に見え、陰影は鎖骨や第2、第3肋骨に重なって、異常は絶対に指摘できない所見でした。病院の定期検査では約4ヶ月前の前年12月8日にも写真を撮っていました。それと今回の写真と比較しても、呼吸器の専門医を自認する私も、他の専門医も異常を指摘することは全くできない状態でした。
 それでは、どうして胸部CTを撮影してもらおうと思い立ったかということです。2011年になってから、「夕方になると左胸部の下の方に痰がつまっている」のが分かり、排痰のために咳をすると「粘液栓が出る」ようになりました。しつこく咳をすると痰も出るのですが、咳のし過ぎで血管が切れるのか、線状の赤い血線が出ることがあったのです。昔は20歳から40歳までヘビースモーカー(喘息大学をやるようになって、皆様のおかげで完全に禁煙に成功しました)だったので、その天罰ないし自業自得で肺癌(扁平上皮癌・・・タバコ飲みにできやすい癌で、主気管支や太い気管支の表面にできやすい)になり始めたのではないかと考えるようになりました。本当は気管支ファイバーをやるべきなのですが、その検査はひどいので、まずCTを行ってもらいました。

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 症状を感じた左下は何でもありませんでした。ところが、反対の右側上部にお月さまのように浮かぶ「結節性陰影」が見つかったのです。CTを撮らないことには絶対に分からない陰影でした。もっと早くからできていたのでありましょう。しかし2004年にCTを撮った時には全く異常なしでした。今になって見返しても陰影存在の指摘は出来ません。7年以内に成長したということです。右の写真はタテ断面のCT写真。矢印の先、白くなって見える部分が陰影です。
 普通の胸部写真で分かるようになった時や症状が出てからの診断では、完全に手遅れになったでありましょう。何が幸いするかわからないものです。「肺癌になるかもしれない」とは以前から思っていました。父親が67歳で肺癌とその転移で亡くなりました(私の病院には検査を勧めても来ない人でした)。母親も80歳の冬の朝、散歩中に氷の上で滑って転び大腿部骨折を起こしてから、私の病院に検査に来なくなったあと、85歳で肺癌とその転移で亡くなりました。母方の祖父も肺癌、祖母は胃癌が死因でした。癌の遺伝子があると思っていたからです。それに加えて、若い時はタバコ飲みでしたからなおさらです。「せめて、自分の肺癌くらいは、呼吸器の医師を名乗っているのだから自分で診断できないと」と密かに思っていたのです。それが、こんなに早くこんな形で来るとは思ってもいませんでした。肺癌は大きさ2cm以内のものは、手術で根治可能な早期肺癌と言われてきました。ただし外に大きくなっては中心が収縮し核を作りますので、2cm以内の大きさでもリンパ節転移や全身への血行性転移を起こしている場合もあります。
 なってしまった以上、切除するのが一番です。「5年くらい放っておいても大丈夫だろう。その後、癌になるのだ」という意見、「胸腔鏡による局所的部分切除で大丈夫、切除できるし4日で退院でき、その後仕事もできる」などという専門医の意見もありました。しかしセカンドオピニオンによる意見も参考にしないで決めたのでは、後からなんと言われるか分かりません。肺癌の手術にかけては北陸の権威、小田教授は「陰影の大きさからして5%ぐらいの確率だとしても、リンパ節への転移などで清水先生を苦しめてはならない。右上葉を胸腔鏡下で切除して、とれる肺門リンパ節は全てとった方がよい」というご意見でした。
 4月18日に疑われてから、5月22日ゼミ終了の約1カ月の間に、リンパ腺や全身に癌が飛び散っていく危険性、胸膜に飛び出し癌性胸膜炎になる可能性もありました。しかし、ゼミ終了を優先させ、次の日入院、5月25日に手術ということにしました。こうなったのも運命、発見できてこの日に手術というのも、運命の巡り合わせと覚悟しました。 
 
 この後に続くことは手術後に書くことができれば、書きたいと思っております。やりたいようにやって、皆様のおかげでここまで頑張って来ることができた人生、これで終わっても悔いなしです。しかし、無事に復帰し皆様のお役に立っていくのも大切なことです。頑張るつもりです。見守り応援してくだされば有り難いし、それだけで充分です。
 皆様におかれましては、つつがなくご無事でありますように、またご健康とよい人生を祈念申し上げ報告とさせて頂きました。あなたさまとご一緒にこれまで歩んできた人生、作って来ることができた思い出と人生、私にとっては最高でした。心から感謝を申し上げ終わります。「病気は人を成長させるか、葬ってしまうかという試金石である」  清水 巍(たかし) 69歳の誕生日を迎えて。5月20日記。 
 
 手術でどうなるか分からなかったものですから、以上をここの原稿にして入院しました。5月25日(水)午後、手術を受けました。1.5cmの肺癌・腺癌で腫瘍は完全にとり切れました。手術前日に病院の地下1階から11階まで3分58秒で階段を昇りました。術後2日目には4分58秒で昇りました。元気で順調です。6月6日(月)から外来に出ます。お願いが2つあります。もう無事に終わりました。お見舞いや電話、手紙は一切無用です。返事をしなければならないからです。ホームページ上では、会員専用掲示板はいいですけれども、一般の掲示板には絶対に書き込まないで下さい。削除します。会員の人だけに申し上げたいし、一般の人に議論してもらいたくないからです。会員の皆様にだけ感謝し報告しました。

233. ゼミと手術の成功・その教訓

喘息をよくし治すために(233)
喘息大学学長 清水 巍

 定員目安80名という予定の第10回成人喘息ゼミナールは、全国から90名の参加を得て、無事に成功させることができました。
私の教育講演、ピラティスの山崎先生の講演と実技、大川先生の特別講演は、これからどのように生きていくべきかという点で、参加者に示唆を与えるものでした。
 4人の体験発表(阿里さんのメールは後掲)は感動を呼びました。参加できなかった人のために、ニッカイのカセットテープ、廣田さんご夫婦がやがて作って下さるDVDで紹介します。何よりも、この会報「わかば」でエッセンスを紹介して行きます。
 もっと広く会員に参加して頂けるようにするために、城北診の待合室などを利用して、会員なら無料で参加できるゼミにすれば参加者は増えるかもしれません。しかし、ボランティアで協力している職員や役員さんのことを考えると、とても大変です。都ホテルで今年のようにやることが一番無難なのではないでしょうか。必要なお金をかけないとゼミも手術も成功しません。
 中味を充実させ、より役立つ第11回ゼミは今から討議と準備を開始します。秋には10月2日(日)茨城野バラの会結成10周年記念行事、10月9日(日)京都での関西交流会、10月16日(日)関東交流会が開催されます。ここが盛り上ってこそ、裾野が広がります。いずれも日帰りで、交通費も少なくて済みます。皆で成功させましょう。そして第11回ゼミを迎えましょう。
 3月11日の東日本大震災という外からの災害に負けず、励ます意味でも開催しようと決めたのに、4月18日に「体に仕掛けられた時限爆弾のようなもの」が私の内側に発見されたのです。その解除(手術)を行ってからの開催は無理でした。「中止か?延期か?実施か?」3つの選択肢がありました。
 私と職員、役員会は「利他を優先して天命を待つ」、最後を選択しました。ゼミ成功の第1の教訓は、外と内側からの災難にめげず、成功させる道を選び、天や神(そういう存在があるのかどうかわかりませんが)は、利他優先を評価してゼミも手術も成功させてくれたというのが第一の教訓だと思います。
 6月23日(木)午前に小田教授の「術後結果に基づく診察」がありました。その結果は以下のようなものでした。
肺癌の中の小型肺癌には、AからFまで6つのタイプがあり、「清水先生のは真ん中のCタイプであった。しかし、そのCの部分は2%で98%は一番よいA.Bであり、再発しない率は98%である。しかし、1.5cmと早期で小さく上葉を全部とり、リンパ節も全部とった(転移は見られなかった)ので、100%転移や再発は無いと私は思っている」とのことでありました。
 おかげさまで一件落着、間に合ったのです。もう当面ご安心下さい。しかし、震災と早期癌を考えると、世も人も外見だけで判断してはいけないのですね。
 第2の教訓は「医学の進歩と自分の実践」だと思いました。
 術後、意識を回復してからの12時間は地獄でした。集中治療室では頻回の体位変換、各種バイタル測定、痛みや血痰のため眠れません。脚には血栓形成予防のための圧迫が繰り返されました。12時間過ぎてから尿道カテーテルが抜かれ、酸素吸入が外され、元の病室に戻ってからは楽になりました。
 術後2日目には金沢大学病院の地下1階から11階の屋上まで、硬膜外麻酔の袋を手に持ちながら昇りました。朝・昼・晩と3回昇り、20秒ずつタイムを縮め、術後4日目には同じコースを術前を上回るタイムで昇ることができました。術後10日間は入院をと言われて、その予定をしていましたが、術後6日目で退院することもできました。
 日本で最小の傷を4か所作り、そこから胸腔鏡下で手術を行う画期的な手術でした。「術後はリハビリ、歩け、歩け」の教授の指導のもと、実践の結果は研修医に「こんなに早く元気になって退院する人は初めて」という評価を頂きました。

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 小学校にあがったばかりの「乳歯の抜けた孫の写真」を病床のテーブルに置き、励まされました。全く人並みのじじいですね。家族や役員の方々、病院医局の方々のお見舞いや励ましは嬉しいものでした。第3の教訓は「人の励まし」でした。
 以上の3つをゼミと手術・両方を通じて学ばせて頂きました。「早期発見と早期のよい治療」で、皆さまに今後役に立ちます。チャーグ・ストラウス症候群の人が「わかば6月号で先生のことを見てビックリした。私の場合、シビレの症状が出ても放っておいて失敗した」と語っておられました。外来で私が早期に発見した女性は「シビレが軽快し、2人めの子ども妊娠中」です。
 「もっと文章が上手に書けるようになる必要性」も痛感し、4冊ほど本を買って入院中勉強しました。「痛感したことを生かす」「病気に学んで生きる」を体験しても伝えられないでは困ります。でも、いい文章書けませんね。

 

234. 喘息死とその他の死

喘息をよくし治すために(234)
喘息大学学長 清水 巍

 2010年度の都道府県別喘息死の順位グラフが手に入りました。石川県は最後の方で下から5番目でした。皆様のとこはどうだったでしょうか。南の方が高い傾向にあります。タバコを吸っている人が多いとか、暑さの影響でダニの発生数が多いのではないかとか、理由が色々言われておりますが、結論が出ているわけではありません。

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 この喘息死は年々減っていますが、高齢者の数が多いというのが下のグラフです。高齢者の喘息死が減れば、日本の喘息死はもっと減るはずです。

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 人口10万人あたり6000人台の喘息死が続いたのは1975(昭和50年)から1988(昭和63年)の14年間です。石川県喘息友の会「わかば会」や喘息大学が喘息死の減少に貢献したことは、会員の皆さんが現存しておられることで十分明らかですが、ステロイド吸入薬の進歩や医学、医療の進歩が大きい要因です。高齢者の吸入療法には下のような調査結果があります。わかば会員には十分な情報や指導が行き届いていますが、認知症、寝たきりなどになると問題な人も出てきます。

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 従って、わかば会員は喘息死の危険は減ったけれども、認知症にならないようにしたり、寝たきりにならないようにすること、その他の病気や災害、災難で「死んでしまうことのないようにする」ということが大切となります。
 主な死因別にみた死亡率の年次推移を見ておきましょう。悪性新生物(癌)による死亡が増加の一途を辿っております。皆様の回りにも「早期発見や早期の治療ができず、お亡くなりになった」「今、苦しんでいる」という人がおられるのではないでしょうか。

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 私も今回、胸部CTを撮影することを思い立たなければ、仲間入りしたに違いありません。「気の毒に右鎖骨と第2、第3肋骨の重なりで陰影が見えず、発見が遅れてしまった。ようやく普通の胸部写真で分かった時は、随分大きくなっていて、リンパ節や血行性転移を起こしていた。癌の家系に生まれたとか、ヘビースモーカーだったとか、呼吸器の専門医だからと言って気をつけていたのに、癌のでき始めた場所があまりにも悪かった。お気の毒に」と言われるところでした。
 少なくとも1つの危機を乗り越えることが出来た経験者として、6月号、7月号にありのまま書かせて頂きました。全く自慢などできることではないのですが、増えていく一方の癌死の曲線に立ち向かう捨て石の1つにしなければならないと思ったのです。会員やご家族の皆様に何かしら参考になり、役だっていかねばなりません。他山の石として、ご自分、ご家族のために役立てて下さい。
 もちろん高齢者の喘息死の更なる減少、肺炎で死亡する人の減少を目指し、その予防と治療(胸部写真をお見せしながら)、好酸球性副鼻腔炎(匂いがしない)、好酸球性中耳炎、その他の合併症・余病克服の話も各地講演会でさせて頂きます。
 秋に向けてご一緒にパワーアップしましょう。是非、参加申し込みを!!

235. 確かな情報の入手と実行

喘息をよくし治すために(235)
喘息大学学長 清水 巍

 8月号の表紙は、日本中に喜びや感動を与えた2011年女子WC優勝なでしこジャパンの、金色の紙吹雪舞う写真でした。勝利の要因は総合力であり、色々あったでしょうが、終盤のコーナーキックで宮間選手が近目(ニア)に打つこと、澤選手がそれを事前に打ち合わせ、蹴られる前から飛び出して行ってゴールを決めたことが逆転勝利のキッカケとなりました。
 「コーナーキックのボールがどこに来るか」という確かな情報があったのです。2009年に続く鮎人会の大会での私の3位入賞(写真)も「確かな情報の入手」が大きな要因でした。大会の手取川の場所は広いのですが、皆さんの釣る場所より遠い小松側の流れに向かったのです。そこは私でも数日前に釣れた場所でした。大会では27匹で3位でした。1位は毎日鮎釣りをしている人で、「橋の下が一番よく釣れる」という情報を何回も通って得ていた人でした。友釣り大会にしても、確かな情報の事前の入手が明暗を分けたのでした。

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 「喘息をよくし、アレルギー性鼻炎や好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎、チャーグ・ストラウス症候群=好酸球性肉芽腫性血管炎などの合併症をよくし、癌やその他の病気で早く死んでしまう」ことがないようにするためにも、確かな情報の入手が必要です。まず第19回喘息克服月間に入りますので、喘息とアレルギー性鼻炎の増加に関する最新情報を紹介しておきます。

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 喘息は小児・成人とも増加しています。しかし、入院する程の重症患者や喘息死は減っています。薬物でコントロールしやすくなり、私の外来でも30人~40人を午前か午後の外来で診察をして、昔によく聞いた喘鳴を聴診器で確認する人は1人ないし2人です。珍しいと感じさえするほど減少しました。
 しかし合併症は問題です。よりよいコントロール情報の入手は以下の方法が確実です。

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1) 第10回成人喘息ゼミナールのDVDの入手
(右写真)。生きた新しい情報を入手できます。(今号裏表紙に入手方法も紹介)

2) 茨城野バラの会、関西交流会、関東交流会、
加南・金沢支部総会、清水先生講座参加などで最新の情報を得ましょう。そこで開催される個別相談を利用することもお勧めです。

3) 電話・FAX相談をご利用下さい。10月5日(水)
 *成人と小児では、時間や電話番号が違いますので、かけ間違いのなきようご注意下さい。

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 以上のようなものがあることを知り、活用するだけでも問題解決に一歩近づき、違った人生や日々を送ることが可能となります。
 次ページの医学的情報に「最新のガイドラインの表紙」と最重要な「喘息のコントロール評価」を紹介しました。わかば会員には喘息のコントロールはA、合併症のコントロールもA、生き方や余病のコントロールもA、を実現してほしいのです。
 その援助・指導を行う医師の私が「肺癌になってしまうようでは」という意見があるかもしれません。しかし、東日本大震災にしても、原発の事故にしても、肺癌にしても、「何が起こるかわからない」のが世の常であり、人間の運命です。「確かな情報の入手と実行」によって普通では分からない早期肺癌を発見し、他人に迷惑をかけない時期を選んで手術し、「医師なればこそ」と術後2日目からリハビリに励み、最短の日数(術後6日)で退院しました。「鮎釣り解禁に間に合うかどうか」も危ぶまれたのに「3位入賞」も実現しました。運もあったと思います。しかし、実行しなかったら現在は無かったのです。
 これからの医師人生、「確かな情報の入手と実行」を実践し皆様にも提供し、会員の皆様にお役にたつよう努力してまいります。皆様も情報を入手するだけでなく、得た情報を実行に移しましょう。そうして一層よくなると共に、「元気で長生き」を共に実現しましょう。わかば会を表紙のような絆として。

236. 念願の優勝!!―切磋琢磨―

喘息をよくし治すために(236)
喘息大学学長 清水 巍

 2011年9月11日(日)石川県鮎人会の後半の手取川大会で、18匹で念願の1位、
優勝を実現しました。前号の「確かな情報の入手と実行」では、2回目の3位入賞をお知らせしたばかりでした。大会は年に2回開催されるのです。
 台風12号の影響で1週間延期になった大会でした。川の状況は濁りが入り、水かさも増し、よくない状況でどうしたかというということです。大会の釣り場が変更になり、私の釣ったことのない、全く前情報の無い場所での大会です。皆さんは川の思い思いの場所に散って行きます。私は前年度優勝者、会長、超ベテランの3人他が、川下に向かってどんどん下って行くので、その後を見ながらついて行きました。3人は事前にどこが釣れるか知っていたので、一目散にそこへ行ったのでしょう。やがて、3人の立ち位置(釣る場所)が決まりました。それを見て、その近辺で邪魔にならない場所を選んだのです。どこがよいか全く分からない私は、名人達の行く近辺をこうして偶然選ぶことができたのです。結果は優勝でした。
 入賞は知力、体力、腕前、運が必要です。3時間の勝負で、釣りあげた匹数で競います。念願の優勝は嬉しかったのですが、これで「古希となり病気もし、手術もしたけども、まあまあ完全復帰したと患者さんに安心して頂いたり、喜んで頂けるのではないか」と納得して頂ける事実を作れたことが一番の喜びでした。
 それで以下のような写真を外来の診察室で撮影して頂きました。この顔なら当面は「心配して頂かなくともよい」のではないでしょうか。左の優勝賞品はタモです。

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 トロフィーは竿を持って釣っている人の姿です。そこに私の名前の入った紅白ペナントが下げられました。これを1年間私が保管し、来年返上するのだそうです。

 鮎の友釣り歴は30年を越えました。先の20年は患者さんと趣味で行っていただけでした。鮎人会に入るようになり、腕前のスゴイ人達と交流するようになって、向上心が芽生えたのです。「切磋琢磨」という言葉があります。新明解国語辞典を引きますと次のように出てきます。「粗い玉を削り、大きな石を切り磨いて、完成品を作ること」これが切磋。切磋琢磨となると、「志を同じくする者が、互いの欠点や誤りを直し合って向上をはかること」だそうです。石川鮎人会に入ったからこそ、趣味やただ楽しむ域を越え、腕前が向上しました。
 「わかば会」や成人喘息ゼミナール、各地交流会も一緒ではないかと思い、長々と書かせて頂きました。表紙の加南・金沢支部の「かんぽの郷白山尾口」をバックにした方々こそ、わかば会を石川県で支える原動力となっている人々です。今年度の関東交流会現地実行委員会の方々が、東京大学医学部の依頼を受けてアンケートに協力したそうです。調査に当たった人も調査された実行委員の患者さんも「とても高いレベルに教育され、自分たちが磨かれている」ことを知り、ビックリされた(今号22、23頁参照)と聞きました。
 長年の努力は「会や交流、切磋琢磨によって実る」というのが今号の結論です。
 これから各地交流会があります。石川県でも11月16日(水)午後1時30分から午後4時まで、今号5頁のような講座と体験交流(寺井は22日火曜日)が開催されます。それらを前向きに受け止めて、喘息や合併症の克服と改善、健康増進、人生を充実させて行くキッカケとして活用して下さい。
 鮎釣りに副産物の発見もありました。「この鮎タビ(川の中を歩くためのもの)」は、今年いっぱい使えるでしょうか?」と馴染みの釣道具屋さんに持ち込んだ時のことです。1cm以上のフエルト(靴底に貼るもの)が2mmくらいに減ってますからダメでしょう、と言われました。1度貼り替えてますから2回目でまた減ったのです。そこのオヤジさんが「こんな靴底(鮎タビの底)見たことない。均等に減っている。たいていの人は外側が減ってダメになるとか、前がダメになるとか、力の入れ具合でクセが出る。川底は石だらけだから均等にならない。先生のは見事に均等に減っている。川底歩きの名人だ」と感心されたのです。思いもしなかった美点(?)の発見でした。
 そうか、3位2回、優勝1回では名人になれないけど「川底歩きは名人」かと、これには妙に納得したのです。思いもかけない副産物の気づきや収穫も、わかば会入会、講演会や交流会で、皆さんも得て下さいね。

237. 各地の情報―周到な準備―

喘息をよくし治すために(237)
喘息大学学長 清水 巍

 第19回喘息デー・喘息克服月間のクライマックスを迎えるような行事が、10月に次々と行われました。その報告は表紙の写真や11月号の本紙でされています。あまりにも内容が豊富なために関東講演会や交流会の報告は12月号に回しました。
 この欄では私でないとお伝えできない情報を報告として紹介します。新薬オンブレスや好酸球性中耳炎に関する情報も終わりの方に掲載されますので、最後までお読みください。
 10月2日(日)には「いばらき野バラの会」10周年記念喘息患者の集いが開催され、私と山本信治さんが石川県から参加してきました。村野会長をはじめとした会の皆さんの努力は「立派な10周年記念誌」(10月号9ページで紹介)と本号の報告のように大輪のバラを咲かせたのです。小さな県でも熱心な人達がいれば、大きなことが可能になることを示しました。「茨城県から30数名の城北体験入院患者さんがいたことが、気心が知れてよかった」と村野会長が語っていました。県難病連にも所属され、A4版の立派な会報が「心身障害者団体発行物」として認められ、格安料金で郵送されています。難病団体の会員の人は動けないので、茨城難病連副会長なども野バラの会が担当されています。

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 5周年の時に「土浦の花火」を見て、記念行事が行われる予定でしたが、大雨で中止となったため、さらに5年越しに写真の花火を10周年で見ることができました。
 土浦には中学時代の友人が2人いて、花火を見る場所を設定してくれました。他に3人の同級生も、東京・高崎から駆け付け、交流し楽しみました。村野さんと私の同級生の友人はすぐ近くに住んでおられ、緊密な連絡の上に実現したのです。次 の1年の花火をランク付けする「土浦花火大会」は花火師にとっては、競いの場で「日本三大花火」のひとつとされています。準備は大変でしょう。周到な準備とご努力、継続の力が「大輪の花」を咲かすのだと教えてくれた花火であり、集いでした。
 関西の矢原さんの文章や大きな鯛の写真が本号で掲載されていますが、上記以上の献身的なご協力と周到な準備があればこそ実現したことであります。京都開催でしたが、夕食交流会は「京料理の料亭」でした。京都の方が「何回も試食に行った」という後日談を聞きました。有難かったし美味しかったです。
 関東交流会は「北とぴあ」で開催されました。小倉さんを代表世話人としながらも、埼玉わっくらの方々や特に若い人が新しい力となって司会をしたり、パソコン操作を担当してくれていたのが印象的でした。詳しくは12月号となります。

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 さて、次は「新薬」の話です。ゾレアという注射薬を開発し、世界に普及しているノバルティスファーマという製薬会社から出たものです。「オンブレス」という名前の長時間作用性吸入気管支拡張剤です。
 セレベントと同じような作用を有する薬と考えれば分かりやすいでしょう。「効果の持続」と「速やかな効果発現」という特徴は、シムビコートの中に含まれるホルモテロールと同じと言ってもよいかもしれません。喘息の患者さんにはステロイド吸入薬との併用が望ましく、単独使用は好ましくない(炎症を抑えないで拡張だけさせてよいとすると、喘息死の危険ありと一部で言われているため)、とされているので喘息患者さんには今のところ保険適応が認められていません。肺気腫の人や肺気腫合併喘息の患者さんには認められています。しかし、これが出たということは、やがてステロイド吸入と合剤となって、アドエア、シムビコートに次ぐ第3の吸入合剤になるという前提で開発されているのです。名前が覚えにくい人には「オンブしてもらわなくてもよくなる薬・オンブレス。レスは少ないという意味や欠如という意味だから」と覚えれば忘れないでしょう、と話をしています。
 「難治性の好酸球性中耳炎には、もっとよい治療がないのか」と待たれています。「ヘパリン」を使うと粘稠な耳の貯溜液が改善したという喘息患者さんが出現しました。他地方の耳鼻科治療の患者さんの例ですが、鼓膜に穴が開いている人限定です。保険はききません。次回にもっと参考となる文献紹介をと努力します。
 周到な準備が交流会でも、医学界でも進んでいます。その恩恵に多くの会員が出会えるよう、この会報はより役立ってまいります。来年は20回目の喘息デー・喘息克服月間を迎えるのですから、一層周到な準備が必要でありましょう。

238. 外と内からの大震災―今年の教え―

喘息をよくし治すために(238)
喘息大学学長 清水 巍

 2011年の外からの影響の最大のものは、3月11日の東日本大震災と原発事故であります。10大ニュースの筆頭に挙げられるに違いありません。
 下の写真は、8ヵ月以上経って初めてマスコミが入った代表の写真です。津波だけなら、こうも無残にはならなかったのでありましょう。原発事故が無かったらこんなふうにはならなかったのです。「過酷事故は起こらない。二重三重に対策をしているので、絶対に安全だ」という安全神話は完全に崩れました。
 私は10月23日(日)に福島県喜多方中学校の53年ぶりの同窓会に出席してきました。同室だった人の中に磐城市や福島市在住の人がいました。「避難で転々とした話」「放射能に脅える話」に身をつまされました。孫、末代にわたり影響を与えるし、その被害は甚大だし、筆舌に尽し難いものです。「安全神話は崩れた」のに、まだ動かそうとしている日本は、第2、第3の「フクシマ」を引き起こすに違いありません。その地は、東海・福井・石川・その他でしょうか。

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 わかば会は義援金約70万6千円を集め、会員や被災地日喘連加盟患者会に送りました。できることをやる「わかば会」ではありますが、「外からの震災にも耐え得る日本」にしておかないと、私たちや家族の安全は保たれません。「原発はもう止めて、クリーンエネルギーで日本が身を立てれば、世界に冠たる国になる」に違いないのです。北陸中日新聞にあった一例を挙げておきます。

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 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加も、原発や地震・津波に匹敵する震災と同じかもしれません。減反で田んぼが少なくなったのに、この加盟で日本の農業はダメになりそうです。医療も今は保険診療か、完全な自費診療に分かれています。ここまでは保険が効くが、それ以上の薬や検査、治療は私費診療だとして、日本ではこれまで許されなかった混合診療が解禁になりそうです。(今号19ページ参照)
 外からの悪影響を最大限に防ぐというのが今年の教訓ではないでしょうか。同時に内からの震災=病気を防ぎ、よくするということの大切さも明らかになりました。私の肺の中には、私にとっては将来の原発事故にも匹敵するような早期癌がセットされていました。通常では分からない場所にあり、分かるほどに大きくなれば完全に手遅れでした。金沢大学外科に入院中、第2の懸案事項であった「左の奥歯のインプラント(人工の歯)化」も、金大口腔外科・歯科を受診し治療を開始しました。これまでは受診する時間的余裕が無かったのです。6ヵ月経って、インプラントの歯が2本入りました。他に癌ができたり、脳心事故などが起こらない限り、禍転じて福、この「ついでの改善」も少しは元気を与えてくれるかもしれません。
誰にとっても、病気は内なる震災と同じであります。わかば会員の皆様は全員、喘息をよくすると共に「合併症や余病」も克服し、「ついでの改善」も得ながら、よい方向に日本も、身体や人生を切り換えて行こうではありませんか。
 今の日本では「金にならないことは極力やらない状態」となっております。医療の世界でもそうです。「喘息の人たちが勉強しあう、体験を交流する、講習を受ける」などということは金にならないし、どこの医療機関でも殆どやっていません。やっていないのが当たり前なので、喘息患者さんも参加したくないのが当たり前となっています。今年の「わかば」発行も各地の講演会や交流会、石川県での11月16日の学習会は「病気をよくし、生きる支えになる」貴重な取り組みでした。 
 私たちは、いつまた外からの大震災、内からの大震災(病気)に見舞われるか予測がつきません。しかし、最大限にリスクを避ける日本をつくること、病気も癌も早めに発見し、ついでの病気や支障もよくしていくこと、得難い仲間や医療スタッフの助けを借りること、それが今年の教えだったと思います。