喘息をよくし治すために(2009)

203. 記念の年を貴重な年に

喘息をよくし治すために(203)
喘息大学学長 清水 巍

 あけましておめでとうございます。毎年の恒例ですが、野口正路さんの「新年に贈る言葉」(土曜美術出版販売)から詩を引用し、冒頭を飾ります。

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 ( )内に(草原)と(わかば)を入れたのは私です。このような新年の光景を想像し、冬の正月であったとしても、若い緑したたる(若葉)1枚でも、この(わかば)でも、初陽に捧げれば天空に明るい歌がひびいてくるような気がしませんか。
 ある人が「人間の一生はレコード盤のようなものだ」と表現されました。生まれた頃の1年という1周は長いけども、年をとるにつれ1周する時間が短くなり、1年の過ぎるのが早く感じられるからだと。
 確かにそのような実感があるかもしれませんね。しかし先に掲げた1本の樹木は年輪を刻み、毎年、若葉を茂らせ紅葉・黄葉を輝かせてきたのです。その木が新年に捧げる「若葉」はそれまでの年月を凝縮させた一瞬ではあっても、これまでの年月をもまた示しているのです。
 ベートーベンの交響曲にたとえれば、皆さんの今は第3番の「英雄」、第5番の「運命」、第6番の「田園」、第7番?、第9番の「合唱付」でしょうか。それとも弦楽四重奏曲の世界でしょうか。どの曲がひびいてくるでしょうか。
 幸いなことに、レコード盤とは違って、老いも若きも365日は同じ時間として現実にはあります。同じ時間を「若い時の2倍くらいに感謝しながら、1日、1日を大切に濃密に生きて」いきましょう。
 前置きが長くなりました。それぐらいの濃密さと価値をおいて、石川県喘息友の会結成35周年、喘息大学創立30周年、日喘連結成20周年、HP開設10周年を共に祝い、貴重な年にしたいのです。
 今年は右下のような年賀状を出しました。定年退職を境として、外来診療や無料奉仕の喘息患者活動はそのままですが、立場・役割り最優先の生活から、やりたいことをやりたいように選択して、共存させていこうとする転換の時代に入りました。

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 しかし、変わらずに続けることが4つあります。第1は、左の学会などに学び続け、その中味の重要な部分を患者さんに伝えていくということです。そして喘息を一層よくしていくのです。第2は、喘息の合併症の克服です。匂いの戻ってきた人はたくさんいます。耳や血管炎などの克服を追求します。第3は、余病の早期発見・治療です。年齢を重ねれば癌や成人病がどこかに出てくるかもしれません。その問題も直視して、わかば会に所属していたので早期発見・予防や治療が可能になったということにしたいものです。第4は「生き甲斐」です。日野原重明先生のように長寿でありながら、人のため世のために活躍できるような人生を歩みましょう。
 以上の4つを喘息患者さんと共に、二人三脚で共同の営みで続けることを目指します。来る5月、記念の第8回成人喘息ゼミナールは5月16日(土)、17日(日)に金沢都ホテルで開催されます。オープニングは一丁一管、石川県の至宝と言われる方にお願いをしました。昨年の藤舎真衣さんを超える音楽です。私の「記念講演」も楽しみにして下さい。
 みんなで祝い、次のページ・時代を切り開こうではありませんか。

204. わかばの更新・ゼミの準備

喘息をよくし治すために(204)
喘息大学学長 清水 巍

 「記念の年を貴重な年に」という題で1月号に書きました。その具体化が2月から始まります。
 この「わかば」には更新のための振替用紙が入っています。城北や寺井、けんろくに通院されている会員の方は郵便局に持っていく必要はありません。清水外来受診の時にお持ち下さい。郵便局を儲けさせる必要もないし、無駄な出費をする必要もありません。外来にはボランティアの方々が更新受付に出ています。
 遠くの方々は申し訳ありません。郵便局にお持ち頂いて、2月中に更新手続きをお済ませになって下さい。1年、1年が「よりよく生き抜いてゆくための貴重なステップ」です。今年度が数々の記念の年であれば、なおさら大きな節目として、格段のステップアップを実現したいものです。
 そのためには、ひと月、ひと月が重要です。2月中に「わかばの更新」を済ませ、3月には「記念のゼミに参加するかどうか」決断をしたり、手続きをする月としましょう。階段を力強く一歩一歩上がるようにひと月、ひと月を充実させて過ごしましょう。
 若葉は御存じのように5月頃に真盛りとなります。その若々しい姿のようでありたいと41年前に、寺井の地に若葉会が誕生しました。金沢喘息友の会が出来て合流した、石川県喘息友の会「わかば会」が35周年を迎えるのです。秋でも冬でも「若葉」の息吹を伝える「わかば」が発行されてきました。身体は年齢と共に変化はしますが、その年輪を重ねた分、若葉の輝きは潤いに満ち、豊かに光り輝いているのではないでしょうか。少なくとも心まで老いる必要はありません。「若葉」の精神を吹き込む「毎号のわかば」であるように頑張ります。
 枝から離れるのではなく、更新をして頂いて皆様のお力を枝や根に、そして他の葉に与えて下さい。支えあって生きてきたこの35年間でした。これからも支えあって絆を磨き合い、この1年を充実させましょう。
 1月25日の石川県喘息友の会新年会では、昨年の11月15日にBS日テレで放送された徳田悠輔君(前会長徳田さんの息子さん)のビデオを見て頂きました。「いのちキラめく」という題名でした。若い力と挑戦、見守るお父さんとお母さんが印象的でした。私が診察している場面も少し出て、運動誘発性喘息について解説しました。
 もうひとつのビデオは、88歳になって2000回出演という前人未踏の記録達成を目の前にした森光子さんの紹介でした。1月に放送されたものです。そして私が現在の薬物療法の到達点をお話して、「記念の年をみんなで」という講演を行いました。若・壮・老の3つを演出したつもりです。
 さらに続くものとして「アレルギー週間」があります。2月18日(水)は私の休みを返上して、午前・午後・夜と新患教育を実施します。対象は、初めて教育を受ける人に限ります。2月20日(金)の講座も協賛行事、これは誰でも参加可能です。
 「わかばが年をとっても充実?」と疑問を投げかけてくる人に御紹介します。数々の記念行事を兼ねた「第8回成人喘息ゼミナール」の予告を見て頂ければ、疑問も氷解するのではないでしょうか。

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 オープニングの一調一管は石川県の至宝の芸術です。石川県の私たちのおもてなしの心です。特別講演には、日本アレルギー学会理事長・東大名誉教授宮本昭正先生をお迎えすることになりました。20年前の結成時に来て頂いた先生です。日本最高の講師ではないでしょうか。私の講演の中には次頁で知った「中村久子さん」のビデオの一部紹介、御礼に来る尾辻医師の特別報告を織り込みます。これらは、今後の私たちの生きる勇気と力になるでありましょう。
 心は潤って若返るでありしょう。

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205. 旧いつながり、新しいつながり

喘息をよくし治すために(205)
喘息大学学長 清水 巍

 5月は私の誕生日が存在する月である。1942年(昭和17年)5月20日の夕方、父親は出征して家には居なかった。母親と亡き兄が風呂から戻って家に着いた時、急に陣痛が起こり、産気づいたのだという。母は4才の兄に、「近所の誰かを呼んで来るように」と言ったので、兄は探しに外へ出た。誰もまだ来ない間に「お前は一人でタタミの上に出てしまい、オギャーと泣き出した。一人で世の中に出てきたのだから、お前はお前の好きなように生きて行ったらいい」と母親は出生の時を語ってくれた。
 その話し(原点)を思い出す度に、母のおかげ、兄のおかげ、駆けつけてくれた近所のおばさん、産湯を沸かしてくれた人、産婆さんのおかげで今日があるのだと感謝してきた。これは旧いつながりの話である。しかし、今なお私の出発点として生き続けている。毎年、誕生日や5月になると思い出す。
 1980年(昭和55年)5月は喘息大学出発の年である。38才であった。36人の1期生と出会い、以来23年間毎年新しい入学生と出会ってきた。その後は、5月に成人喘息ゼミナールで出会ってきている。何回も出会った人、1回きりの人、私にとっては全ての人が貴重な新しいつながりである。その出発の年に、北陸中日新聞記者であったペンネーム“千葉龍”さん(本名池端さん)と出会った。新しいつながりの1人として選んで記してみたい。

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 上の記事は大きな見開きの新聞2ページの一部である。千葉さんが取材し、掲載してくれたものである。喘息大学創立の頃の貴重な写真である。
 その千葉さんが先日、亡くなられた。偲ぶ会に出席したが、献花をして手を合わせている私の写真が偶然、新聞に掲載された。そして千葉さんとのご縁で出会った「あすなろ親の会」の写真と記事も、新聞に掲載された。新しいつながりも、こうしてくり返し、貴重な出会いを生んでくれているのである。

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 私は古い御縁、新しい御縁の人、全ての人との出会いに感謝し、人生の秋と冬の季節を迎える契機として、今年の記念の5月を迎えようと思っている。私と出会ったわかば会員は全てが、来る5月の記念の時を「跳躍のステップ」の場にすることを願っている。記念の行事というのはそういうものではなかろうか。
 2月21日(土)に学習会が開催された。講師は約60名の出席者に1月1日から12月31日まで、誕生日順に並ぶよう指示した。私の左隣は城北病院大野院長となった。私の1日前、5月19日生まれという。初めて知った。福島県喜多方市が同郷であり、互いの実家は300mと離れていない。金沢大学医学部の後輩であり、私が城北病院に誘った。私は何も教えることができなかったが、彼は2期生の入学式、2期生の卒業式を手伝ってくれた。自分の力で勉強し、立派な消化器の医師となり、有能な院長としていま活躍している。
 隣り合わせになり、1日違いの誕生日と「病院の未来を託せる希望の御縁」に不思議な感動を覚えた。
 起こってくること、起こっていることは偶然の重なりに違いない。しかし必然だとも言えるのではなかろうか。旧いつながりも、新しいつながりも、寄せては返す波の如く、よい変化の波が共振するようにしたい。
 ①喘息をよくする跳躍の機会 ②合併症 ③余病を改善する機会 ④よい出会いを作りあって、よい人生を築く機会として、今年度の5月をみなさん、御一緒に迎えましょう。その準備を3月中に。

206. 今年の「わかば」も期待できる

喘息をよくし治すために(206)
喘息大学学長 清水 巍

 この4月号の「わかば」は35周年を記念して緑色となりました。今まで使ったことのない緑です。緑の葉っぱにも同じものがひとつも無いように、35年目の「わかば」は、年をとった木(35才のわかば会)から芽吹いたにしても、一号一号が貴重です。

 第1のビッグニュースとして、「重症喘息に対する新薬・オマリズマブ」を「わかば」は紹介しました。患者さんにこれだけ詳しく紹介しているところは他にありません。次々ページも見て下さい。発売予定と最新のアレルギー学会誌に載った薬が、もう発売となったのです。右ページに「ジャパンメディスン」に掲載された記事を引用、紹介させて頂きました。
 しかし、これだけでは一般の人には難しいでしょう。わかばを読んでいる人は、私の解説で知ることができるし、第8回成人喘息ゼミナールに参加する人は、この新薬導入の元締め的な宮本昭正先生(日本アレルギー学会理事長・東大名誉教授)から直接お話を聞くことができるのです。もちろん、そこで私の解説も詳しく聞くことができます。適応は重症喘息ですが、総IgE値が30~700単位以下、RAST陽性のアトピー型、経口ステロイド依存者という条件を満たせば保険適応になる可能性があるのです。高い注射薬を何回も注射が必要です。

 第2のビッグニュースは「喘息患者の声を届ける会」の全国的な調査に対比した「喘息大学卒業生の現状報告」です。2つの調査は同時に行われ、成績が対比されました。一例を挙げますと、「全国の患者会に属する人は約30%が経口ステロイドを投与されていました」が、喘大卒業生は14%しか使用していませんでした。卒業生は7%が5年以上寛解し、2年以上寛解が7%、計14%がよくなり、治ったも同然になっていることが明らかにされました(詳細はうしろ)。
 前向きに挑戦・実行する人は報われるということを証明したのです。第8回成人喘息ゼミナールは、そのような成果の上に立って開催され、その流れを受け継ぎます。「身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ」という格言があります。捨てるのではく、挑戦・実行によって報われることを先輩は実証してくれたのです。かつて、「難治性で重症だったから先輩は入学」しました。その14%も寛解の可能性ありという事実は、「成人喘息は全員が治るわけではないけれども、よくなり治り得る」疾患であることを証明しているのではないでしょうか。

 第3のビッグニュースは、実際によくなり医師として活躍している尾辻健太医師が「御礼に」といって参加・報告してくれることです。わかば3月号に16才の退院時に大きな涙顔を描き、「今、不安で不安でしょうがないです。寂しくて寂しくてどうしようもないです」と記した少年が、12期生の卒論を書き、沖縄大医学部を卒業し、小児アレルギーの専門の医師となって活躍しているのです。励まし見守った「わかば会員」の皆さんのおかげです。

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 その御礼の報告に来る話が決まったのは、左の写真、東茶屋街の螢屋で一緒に飲んだ時です。「富山で学会発表をするので、清水先生と会って話をしたい」と言ってきたので会ったのです。東の廓(くるわ)の1軒が誰でも入れる料理屋に変わったのですが、それと同じような「変貌」の再会でした。「わかば会員」誰でもが、そのように「変貌」できる実例という話です。

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 かってケナコルト依存者・好酸球性肺炎もあった神さんが記念パーティのオープニングに祝曲「寿」を舞い、関東交流会で出会った横田さんが「癌からの生還」という体験を話してくれます。関西交流会で出会った網香さんが「ひらがなしか読めないけども」と、自己開示され参加されます。
 あなた自身が美しい若葉の1枚になることが第4のビッグニュースでありましょう。それを今年の「わかば」と共に必ず実現しましょう。

207. 35年、20年の感謝  -よき成熟に向かって-

喘息をよくし治すために(207)
喘息大学学長 清水 巍

 2004年5月号の「わかば」医学シリーズ(147)は、5年前のこの欄-これからが正念場-(前々頁、前頁参照)でした。それに60をプラスした(207)がこのページです。12×5年が過ぎたのです。
 無事に石川県喘息友の会35周年、喘息大学創立30周年、日喘連結成20周年、HP開設10周年を迎え、記念号を発行できたこと、記念行事を迎えることができたことを会員の皆様と共に喜び、お祝いしたいと思います。それは沢山の方々の温情、ご厚意に支えられた歴史でもありました。この場を借りて厚く感謝を捧げます。室生犀星の詩を5年前と同じように、ここでも掲げることにします。

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 ピアノ売というのを私は知りません。当時はあったのでしょう。5月の若葉の「美しさやそよぎ」が伝わってくるし、文学や詩の素晴らしさは不滅です。
 室生犀星を最後まで診療した主治医は、私の恩師・本間日臣先生(虎の門病院初代呼吸器科部長)でした。本間先生は呼吸器医療の分野で多大なる貢献をされました。「若い医学徒への伝言」の名著を残され、本間賞を創設されました。
 高校時代に犀星の詩に感動し、私は「金沢大学医学部」を受験しようと思ったこと、本間先生のお仕事の中に「石川県や北陸の喘息治療を改善する力がある」と確信し、研修を願い出たことを考えますと、今日に繋がる1本の「御縁」という線が浮かび上がってきます。その延長線上に「わかば」の御縁ができ、皆様との御縁が実って今日に至りました。
 かえりみますと、犀星も本間先生も輝かしい業績を残されたのに、私は①日常診療、②患者会活動、③学会活動、④民医連の役職と運動、⑤社保協や県民の会など社会をよくする活動に取り組み、どれもこれも十分ではなく、非力を恥じなければなりません。一兎を追っても非力なのに、5兎も追いかけたのです。しかし、この35年、20年の歩み、膨大な「わかば」や「HP」、13冊の著書を振り返って見ますと、皆様方のおかげで「患者会活動については実り豊かなもの」と実感できます。独りよがりかもしれませんが。
 浅学非才、能力的にも人格的にも欠陥の多い私と共に歩んで下さった皆様に、35年、20年の感謝を捧げます。よき成熟に向かって、今後ともよろしくお願い申し上げます。
 5年前には鶴仙渓・山中温泉の「こおろぎ橋」の写真を掲げました。その橋の下で鮎釣りを試みた時は、釣れたのに上の木に引っかかって2匹ともダメにしてしまいました。川北さんが撮影してくれた白山の見える手取川、下は私の好きな釣り場です。そこを中心に昨年は527匹を釣り上げることができました。今年は1000匹以上を秘かに目標としています。

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 霊峰白山を源流とした石川県の母なる川・手取川は海に注ぎます。石川県一の山であり川です。喘息というささやかな分野では、この山や川のような存在になることこそ、私たちの目標ではないでしょうか。「大きくなくたっていい」「有名でなくていい、石川県一、日本一でなくてもいい」私たち関係者の心の中だけでは、この山のように、この川のように若葉の心を育む大きな存在でありたいのです。
 そういう意味で「若葉会発祥の地である加南わかば会・支部長の川北さん」に、表紙の写真をお願いしました。編集後記をも兼ねるこの欄では、いつものように詩や川もあった方がよいと思い、掲載をさせて頂きました。
 私たちの長い取組みの中で塚田裕子さん、尾辻健太君、横田修一さんが医師となりました。徳田名誉会長の息子さんが教師を目指すことになりました。岩田知子さん(チャーグ・ストラウス症候群)が病気を完治し、看護師となり結婚されました。若い人も成熟に向かっているのではないでしょうか。記念のゼミでの神さん、横田さんをはじめ、熟年会員も全て成熟に向かっています。

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 谷川俊太郎さんの詩です。「ふたしずくの露」のように、あなたと私たちが「みどりの葉の上で溶けあう」、そのような「わかば会」、わかば会報に今後もしていこうではありませんか。

208. 記念行事から学ばせて頂いたこと

喘息をよくし治すために(208)
喘息大学学長 清水 巍

 皆様のおかげで節目の記念行事を成功裡に終えることができました。新型豚インフルエンザの国内発生例が報告され始めていた時です。行事の一週間後には神戸、大阪からの報告例が相次ぎましたから、間一髪のところで皆様をお迎えし、お帰り頂くことができました。
 そういう意味では「天の采配、恩恵」ということも、偶然の重なりではありますが感じました。しかし、天の采配だけで行事は成功するものではありません。「人事が尽くされたからこそ、成功した」というのが最大の学びの点でした。
 オープニング・ミュージックの「一調一管」は、輪島の著名な宮司さん(会員さん)のご紹介でした。何回も演奏者のもとに足を運んで頂き、話をまとめて下さいました。当日も輪島から出て来て頂き、演奏がうまく行くように心配りして下さいました。「石川県の至宝です」とおっしゃったとおり、芸に集中されるお2人の凛とした気迫には圧倒されました。「ピッ、ポン、ピリッ、ピリッ、ポン」と空気を突んざく音色とお姿は一生忘れられないでありましょう。
 宮岸会長の開会挨拶の後、「記念行事を跳躍のステップに」と題し、教育講演させて頂きました。ゾレアに至る新薬やステロイド吸入剤の特徴、スピリーバやメプチンに至るまで、薬物治療の進歩が皆さんのものになるよう話をしました。薬の長年の恩恵もあるけども、それだけではなく、「人と人とのつながりが大事である例」として、尾辻健太医師に「皆様への御礼の報告」をして頂きました。「どん底からのはい上がり」の物語は感動的でした。お父さん、お母さんも神戸から駆けつけてお聞きになり、息子の晴れ姿にお母さんは涙ぐんでおられました。御本人の努力はもちろん必要ですが、城北病院や喘息大学、このゼミの継続があればこそ、実現したことです。城北病院との出会いが無かったら、今日の尾辻医師はなかったと思います。
 そのように「薬だけあればよい」のではなく、「よい医療や人間関係、私たちの取り組み」が必要であることが第1の教訓です。
 第1ラウンドのテーマ別交流会での最大人数の分科会は「耳のテーマ」でした。金沢大学耳鼻科の先生の解説と質疑応答は好評でした。
 耳と鼻のテーマは毎年、進歩を紹介してほしいと感想にありました。望まれたものを取り入れて来たからこそ成功、それが第2の教訓です。今後もそのように努力してまいります。

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 記念パーティは圧巻でした。神 眞澄さん(若柳勒桜)さんの「寿」の舞は一糸乱れぬ優雅さで、沢山の人に感銘を与えました。長年の努力と今回に向けた熱心な練習の成果が大輪の花となって開いたのです。
 日本アレルギー協会理事長・東大名誉教授の宮本昭正先生は、祝辞で「皆さんは日本で最も活発で熱心な喘息患者会の団体です」と評価して下さいました。私はお隣に座らせて頂いたのですが、「宮岸さんの国境の街・連載」を熱心に愛読されていることもお聞きしました。尾辻先生のギターの弾き語り、愛知からの参加者による出し物もよかったのですが、ニューフェイスとして登場された梵天丸さんこと中村みどりさんの透明なボリュームのある歌声は「こんな声を喘息患者が出せるのか?」と皆さんを魅了しました。美声の持ち主である喘大同窓会会長で司会の小酒政善さんが「感動した」を興奮し連発されていました。その素晴らしさが想像できるでありましょう。昨年の関東交流会で初めてお会いした時は、苦しそうにしておられ、ご主人と金沢に来られた時は咳がひどかったのに、私たちとのご縁で「東京の直前での音楽会」を奇跡的に成功させ、今回初参加されたのです。三段跳び優勝のように改善されてきました。来年もご主人が「参加しようよ」と言って下さっているそうです。

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 横田勝之さんは翌日、余病克服体験をお話下さいました、これから私も含め、会員は年齢を重ねますので、余病克服は重要なテーマです。横田さんは「貧血はおかしい。精査を」と自ら求めて検査することになり、胃癌のあったことがわかったと話されました。喘息克服だけでなく「余病克服」にも「患者が主治医」を貫く大切さを示されました。今後の重要な教訓(第3)です。
 こうしたスターの活躍だけでなく、Mさんという若い人を励ました話、網香さんを観光案内した話、無数の宝石のようにドラマが生まれました。
 こんな取り組みに100名以上の喘息患者さんが参加して下さったこと、わかば会役員・松村事務局長を先頭に職員が心血を注いで準備してくれたこと、「参加」「準備」こそ成功の元(第4の教訓)と学ばせて頂きました。     

209. 学会に学び、学会に報告すべきこと

喘息をよくし治すために(209)
喘息大学学長 清水 巍

 6月は2つの学会に参加しました。以下が分厚い膨大な抄録集に代わるガイドブックです。

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 新しい知見を簡単に紹介しておきます。

①気管支喘息と精神疾患の合併が増加しているのが世界的傾向であり、日本でも同様だということです。ステロイド吸入や薬剤の発達で簡単にコントロールできてしまう人が増えているのですが、うつ病、パニック障害、不安症などの精神疾患が増えており、それらと喘息が合併すると治りにくいので数が増加しているのだそうです。認知症が進行して、喘息がよくなる人もいますが、悪化しコントロール困難になる人もいます。両方を診てもらえる病院にかかるのが理想です。ゼミ参加者は精神疾患合併でもよくなっている人もいますので、お勧めです。

②新薬の知見がメジロ押し・・・ゾレアによる抗IgE療法、シンビコートというメプチンエアー+セレベント+パルミコートのような新薬、モメタゾンという新しいステロイド吸入薬などの発表が沢山ありました。今後、わかばで紹介します。

③アスピリン喘息患者では、鼻ポリープや好酸球性副鼻腔炎の合併が多く、相模原病院の耳鼻科で手術を受けた人は、最近ずーっと改善が見られるとのことでした。

④杉花粉症やアレルギー性鼻炎は増加の一途を辿っており、杉花粉の舌下免疫療法の効果は60%ほどであり、寛解導入できたのは今のとこ2%程度いう報告がありました。減感作療法の方が寛解効果が高いかもしれません。

 その他、沢山学ぶことはあったのですが、私達も報告し発信していくべきことがあります。この秋に秋田で開催される日本アレルギー学会秋季大会に以下のような抄録を送りました。喘大卒業生が日本のどの喘息患者会関係者グループよりも、経口ステロイドの使用率が低かったのです。

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 このような成果を上げているということを報告できるのです。喘息大学卒業生の人は、ゼミナールにも毎回参加されている人が多いし、一切の薬を絶つことができて、元気に生活できている人が先の444名中63名(14%)存在したのです。「努力をすることによって報われる」という証拠ではないでしょうか。秋に東京、京都での交流会が開催されます。集うことによって、一層よくなっていこうではありませんか。もちろん、「わかば」をとること、読むことも大切ですね。(清水)

210. 第17回喘息デー・喘息克服月間  -来年の第9回成人喘息ゼミ成功に向けて-

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喘息大学学長 清水 巍

 活字が大きく見やすくなるようにしてみました。17回目の喘息デーになります。ゼミも9回目になります。年齢が上に行きますので、多くの人に是非読んで頂きたいからです。ご意見ご感想をお寄せ下さい。

 ビッグニュース①は、新しいステロイド吸入薬・アズマネックスの承認と近日発売のニュースです。アズマは喘息、ネックスはネクスト・次を意味するのだそうです。16頁からの内容をご覧下さい。
 承認のポイントは、中枢気道にもよく効くし、末梢気道にもよく効くのだそうです。都合のよい理屈と思えるのですが、2ミクロンの大きさなので、フルタイド等(粉末)とキュバール等(気体・エアゾル)の両方の作用を有し、全身への吸収が少なく、喉嗄れが少ないのだそうです。全て都合のよい宣伝文句ですが、その通りかどうか注目・期待したいものです。
 鼻の方には、ナゾネックス(ナゾは鼻、ネックスはネクスト・次という意味)で市販が既にされています。1日1回2吸入ずつ鼻に噴霧する薬で、最も効果的と宣伝されています。その資料も載せました。

 ビッグニュース②は、喘息のコントロールがいま一つという人に「前縦断(両眼を上にしたタテの断面を切る)副鼻腔CT」を撮影すると、鼻腔、副鼻腔の炎症、腫れ、病態が一目瞭然に分かり、対策をとると喘息がとてもよくなるということです。学会で報告があり、城北で試したところ、これまでの写真よりよく分かり、治療に役立っています(●頁参照)。ゾレアの注射薬を含め、第17回喘息デー・喘息克服月間は、これらの進歩を全国の患者さんに普及する意義を持ちます。関東、関西、各地講演会交流会、私の講座、新患学習会にご参加下さい。

 ビッグニュース③は、来年5月29日(土)、30日(日)の第9回成人喘息ゼミにはお2人の素晴らしい講師をお迎えすることです。西野流呼吸法の西野晧三(にしのこうぞう)先生は、女優の由美かおるさんの師匠で、第3の呼吸・気の流れを改善して生きることを唱え実践しておられる先生です。以前より交渉していて、来年度にやっと実現することになりました。「よりよく生きるパワー」が得られるでしょう。
 再来年の講師として、「生き方・ユーモア・人間の死」に造詣の深い上智大学名誉教授・アルフォンス・デーケン先生(ドイツ人・日本語を含め6カ国語ペラペラ)に是非ともと交渉したのです。「再来年の予定は受けていません。来年の5月29日(土)なら、その日のみ都合をつけ、講演に行けます」と言われたのです。以前、喘大の講師にとお願いしたら、ドイツに帰ってしまわれていました。最近日本に戻られたと知って交渉したらそういう御返事でした。河合隼雄先生並みに、喘息の人には是非ともお話を聞いて頂きたい先生です。
 上記のいきさつで、お2人を来年お迎えすることになりました。会場費30万、講師はお2人とも秘書さん共々に前泊されますので70万、計100万くらいは準備しなければなりません。1人2000円の参加費でも500人の参加が必要です。そんなに集まりませんから大変です。お金の問題よりも「喘息の患者さんのために行きましょう」とおっしゃって下さった信義に応えることが大切です。それが私の信条であり、わかば会の姿勢です。元々そういう信条で行われているのですから。
 わかば会が借金しても私が私財を投げ打ってでも、この講演会を「喘息の患者さんの生きる糧(かて)」となるよう成功させます。皆様もゼミの参加、少なくとも講演会の参加のみは今からご予定下さい。
 そのステップとなっていく「第17回喘息デー・喘息克服月間」を全国各地で成功させていくための準備を今から開始しましょう。  

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211. 現時点での交流の意義

喘息をよくし治すために(211)
喘息大学学長 清水 巍

 40年から10年くらい前までは、「秋の冷気が気管に入ってくると、喉がキューっと締まってくる」とおっしゃる患者さんが多く存在しました。しかし、今ではどうでしょう。「あんなにひどかった喘息発作がどこに行ったか、とんと起こらなくなった」という人が多いのです。
 薬物療法の進歩は状況を大きく変化させました。「喘息治療ほど目覚ましく改善を生み出した治療はない」と、ある大学教授の先生が語っていましたが、皆さんもそれを実感・享受されているのではないでしょうか。そういう時代になりますと「環境の改善が第一」と言われた基本テーゼにも変化が起こります。ダニがいくらいても大丈夫、アレルゲンとなっているウサギを4匹飼っていても「ステロイド吸入をしっかりやっておれば大丈夫」などということも起こり得るのです。
 薬物療法の進歩が今ほど十分ではなかった時代に、光を放った喘息大学の三本柱(教育・鍛錬・交流)にも変化は及んできました。鍛錬を一生懸命やる人も少なくなりました。交流会に参加するということも、昔ほど求められなくなってきたというのも事実です。そういう中にあって、日本アレルギー協会理事長・東京大学名誉教授・宮本昭正先生は、第8回成人喘息ゼミナールの特別講演に来て下さり、「全国どこの喘息患者会も会員数が減少し活動が低下傾向にあるのに、
皆さんのところは最もよく頑張っておられる」とほめて下さいました。そのお言葉は7月号の裏表紙(申込方法記載あり)で紹介された右写真のDVD・ビデオに収録されています。好酸球性中耳炎専門医(金沢大耳鼻科)の講演も全部入っています。

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 10月からは関東、関西、愛知・岐阜、茨城、石川で講演会や交流会、秋田でのミニ交流会が開催されます。

 第1の集う意義は「薬がいくら進歩しても、根本的によくなったり治っているのではない」という現実があるということです。薬を止めると元の地肌が出てしまう人が多いのです。交流は「薬を減らしても大丈夫にし、全く止めても何でもなくなった」という人を多く生み出してきました。そういう根本的な改善は交流の力が実現しているのです。

 第2は、薬の発達は終わったのではなく、現在も激しく進行中です。どれが自分に一番よいのか知ることは決定的に重要です。

 第3は、アレルギー性鼻炎、花粉症、好酸球性副鼻腔炎(匂いがない)、副鼻腔炎、好酸球性中耳炎(耳が聞こえにくい)、アレルギー性肉芽腫性血管炎、好酸球増多疾患などの喘息の合併症は増加し、深刻化しています。その悩みを解決する最善の情報は交流や講演会でしか得られません。

 第4は、高齢化に伴う変化、余病併発の問題です。この点でも交流会はヒントを与えてくれるし、人の体験を知ることによってよりよい人生、余生が可能となります。

 第5は、人生の過ごし方、生き方、生きる勇気や知恵の問題です。交流会に参加することによって喜びや勇気、展望を自分のものにできるのではないでしょうか。

 私も研究会や学会には参加するようにしています。そこで学び交流することによって、患者さんにもよいものを提供できるようになると信じているからです。いくら薬が発達しても、いや発達すればする程、正確な知識や情報提供のために学習や交流が必要です。その努力を止めた医師に皆さんはかかるのでしょうか。
 また、趣味の鮎の友釣りにしても学習や交流は必要です。名人や先輩、本に学ぶことは実に多いのです。皆さんの趣味、俳句、芸能、ゴルフ、登山、園芸、何にしても学びや交流は必要です。それを止めれば進歩は止まるでしょう。
 「おっくうになること」は老化最大の特徴です。それに従えば進歩はありません。行動や参加は長生きや健康を生み出します。会員の高齢化が進み、余病も噴出している、交流しにくくなっている中での「交流の意義」は「みんなの力で生命の灯の芯を太く豊かにする」ことにあります。
 DVDの写真の笑顔を見て下さい。生きているパワーが伝わってきます。そのような「パワーと情報」の交流を秋にも皆んなで実施しましょう。

212. 新型インフルエンザと喘息

喘息をよくし治すために(212)
喘息大学学長 清水 巍

 秋が深まるにつれ、寒さがつのってまいりました。「風邪に気をつけましょう」がこれまでの合い言葉でありましたが、今年は「新型インフルエンザと季節性インフルエンザに気をつけましょう」が合い言葉です。断片的には警告や情報を提供してまいりましたが、ここで本格的に取り上げることにします。
 基本的な情報と注意事項が主です。私がこの原稿を書いているのはシルバーウィークの最中です。〆切の関係でそうなるのですが、皆さんの手元に渡るのは10月11日以降です。3週間くらいのズレが生じますので、新しい情報や流行の問題については、マスコミ、喘息ホットニュース、その他で見て、各自で判断するようになさって下さい。
 喘息はあっても、わかば会員であったがゆえに、①予防ができて、両インフルエンザにかからずに冬を過ごすことができた、②かかったけれども軽く済んで、喘息発作も起こらなかったし入院もしなくて済んだ。勿論、ウィルス性肺炎やその他の肺炎(肺炎球菌肺炎が一番多い)にもかからなかった、③家族や同僚にもうつさずに済んで、喘息も改善し、生きる自信や勇気、慎重さが大切なことを学んだ、以上の3点を達成することが課題です。

 第1は、「予防にまさる治療なし」です。喘息も「予防にまさる治療なし」を学び実践してきた皆さんです。他の一般の人よりもベテランであるはずです。マスク、手洗い(水やお湯でもウィルスを落としますが、ゴージョーなど病院の入口・出口に置いてあるのはウィルスを殺すとされています)咳エチケット、発病している人には近づかない、などが一次予防です。
 二次予防としては、ワクチン接種(10月末頃から実施と言われています)が重要です。やっておけば絶対大丈夫ということではありませんが、有効性が証明されております。ワクチンは新型ウィルス、季節性インフルエンザ、肺炎球菌の3種があります。喘息患者さんは右頁の表のようなデータがありますので、優先接種順位を高くするよう私たちも働きかけてきました。日本には450万人の喘息患者の人がいるとされています。COPD、糖尿病、腎臓病、心疾患、妊婦、免疫不全の人も優先となると2000万人くらいが優先となります。重症度で順位が変わるのかどうかがありますので、主治医とよく相談なさって下さい。

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 第2の「万が一、かかっても軽く済ます」ということですが、ステロイド吸入、喘息日誌・ピークフローメーター管理を含めて喘息のコントロールをよい状態に保ち、悪化したらベストの治療を受けて喘息を改善させることが大事です。ステロイド吸入は風邪をひきやすくするというデータは無いのですが、止めて大発作になるデータは多いのです。肺炎まで至らなくても、気管支炎の併発で喘息が悪化し、入院になる人も出てきます。季節性インフルエンザでも同様です。痰の培養・感受性テスト、CRPや白血球数、赤沈などの血液検査も併用して、早めに軽く済ますことが大切です。

 第3の「災いを転じて福となす」とするためには、発病しないことは勿論ですが、「発病したり発熱すれば、可能なら完全に下熱しても2日間は仕事に出ない方がよい」とされています。2日というと、1日半でも2日と判断する人がいますので、「熱が下がって48時間後」と考えれば無難でしょう。厚生労働科学研究のパンフ(抜粋)を次頁に紹介。裏表紙も必読!

 タミフルやリレンザは殆どの人に有効とされています。喘息のある人は、新型インフルエンザが疑われたら服用を開始しておいた方がよいとされています。小児や未成年者には主治医から使用後の注意を受けることが必要です。
 この災いが降りかかっている期間も試練ととらえ、合併症や余病の早期発見・治療、喘息の改善、自己成長に取り込んでいくことが大切です。
 幸いにして中高年の人の発症は少ないというのが日本だけでなく世界で明らかに新型はなっています。喘息だからうつりやすいというわけではなく、(喘息などのない人と同等の危険はある)、発作や呼吸不全に至らぬことが重要なのです。わかば会員であったればこそ、日頃磨いた実力を発揮して、来春の無事なる再会を喜び合いましょう。

213. ワクチンの接種について

喘息をよくし治すために(213)
喘息大学学長 清水 巍

 わかば10月号で「新型インフルエンザと喘息」ということで啓蒙記事を紹介しました。第6回関東交流会、関西交流会は朝日新聞や読売新聞にも紹介され、多くの人が詳しく学びました。石川県でもバーベキュー参加者、10月21日(水)の「新患学習会」で対策を学びました。
 今のところではありますが、全国で300万人ぐらいが発病したとされる中で、わかば会員、城北病院や診療所の職員、入院患者の中では1人の発症も確認されていません。予防や対策、知識や学習がいかに大切かが示されました。3ページから紹介した一次予防は実践的に大切です。
 5ページに掲載した二次予防としての「ワクチン接種」が本格的に開始される月です。前月に引き続いて大切な情報を紹介してまいります。

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 各都道府県ごとに「対策本部」がありますので、ホームページや新聞で最新の情報を入手して下さい。喘息の人は11月中、下旬から接種可能(あくまで予定)のようですので、かかりつけの医療機関に受診し、接種予約をされ、その予約日に受診して接種ということになるでしょう。13才以上は1回接種でよいことになりました。しかし、まだ未確定(2回かも)です。

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 季節性インフルエンザワクチン接種は、早めに受けるようにお勧めしてきました。新型と同じ日に接種も医師の許可があれば可能とされています。しかし、副作用が出た時に、どちらのワクチンか不明となります。それで分けるように勧めてきました。主治医と相談して11、12、1月中に両方を済ますようにして下さい。
 肺炎球菌ワクチンも65歳以上の人にはお勧めです。これも予約が必要なようです。5年経てば再接種可能という新ニュースも入りました。

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 ただワクチンは万能ではありません。やったのにかかった、という人も出ます。軽く済ますとか、かかりにくくするだけでも効果ありです。私どもは集会には上記の貼り紙を使用してきました。
 一次予防が大切であり、かかりにくくする生活、感染者や発病者に近づかないようにする(家族に発病者が出れば、できるだけ接触を避ける)ことが必要です。次は二次予防ワクチンで、最終は喘息コントロールです。
 タミフルの内服、リレンザの吸入も必要なら早めに受けて下さい。もしも感染したり発病したら、喘息発作の悪化、呼吸不全に最大限の注意を払わなければなりません。基礎疾患の悪化も防いでこの冬を乗り切り、暖かな安心できる春を御一緒に迎えようではありませんか。

214. 第59回日本アレルギー学会から

喘息をよくし治すために(214)
喘息大学学長 清水 巍

 10月29日から31日まで秋田市で、アレルギー学会秋季学術大会が開催されました。日本海沿いの鉄道、車、羽田経由の飛行機などで何回も秋田県を訪れたことはあるのですが、秋田新幹線には乗ったことがないので、大宮経由→盛岡回りで秋田入りしました。田沢湖駅付近の紅葉がキレイだったこと、桧内川(ひのきないがわ)の水がキレイだったことが印象的でした。
 今回、特筆すべきこととしては「注目される好酸球関連疾患」として、初めてのワークショップが開かれたことです。

g214_01↑1374頁の抄録集

 ①好酸球性副鼻腔炎・・・手術をしても再発するのは喘息を合併している場合である。匂いがしなくなる。フルチカゾン点鼻薬の倍量噴霧でよくなった人7例、ベルベゾロンやリンデロン水溶液投与で改善3例、全身性ステロイド投与で9例回復。ナゾネックスやアラミストの投与での改善が期待される。私は投与法について質問した。鼻中隔に添って頭を傾けて投与する方法が効果的とのことであった。

 ②アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎・・・高温多湿地方の人に多く、真菌(カビ)の鼻での繁殖・寄生が原因である。慢性副鼻腔炎の4%くらいの頻度で、鼻の炎症から真菌が証明され診断できる。手術や全身性ステロイドで治療可能である。

 ③特発性好酸球増多発症候群(HES)/慢性好酸球性白血病(CEL)・・・これらの中にはイマチニブという薬が著効する患者が存在する。遺伝子検査を神戸大・血液内科で行ってもらって、効く人かどうか調べる。主治医と相談し血液を送ってもらって調べる。

 ④好酸球性中耳炎・・・仙台日赤の松谷先生、弘前大の松原先生が報告された。アスピリン喘息の人に多く、中年女性に多いこと、好酸球性副鼻腔炎が高率に合併していること、鼻から耳管経由で中耳に好酸球の炎症が及ぶことが明らかにされた。中耳内へのステロイドとヘパリンの投与、全身性ステロイドの併用、抗アレルギー剤各種が有効であり、鼻の管理の重要性が指摘された。完全な聾になると回復は不能であり、聴力低下の回復も困難なので、その手前で進行を阻止・治療することが重要。

 ⑤急性好酸球性肺炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性食道炎・・・これらは組織に好酸球の浸潤が生検によって証明されることで診断される。

 喘息のコントロールは改善してきているものの、目、耳、鼻、その他の臓器や血液の管理、生活や心のあり方、治療のあり方や生き方までを含めた総合的な管理・治療が必要な時代に入ったと痛感
させられた。中でも鼻の管理や治療、コントロールが喘息同様に重視されなければならない。
 以上が、ワークショップの報告です。その他、1本7万503円のゾレアが効果を上げている人がいること、しかし中止すると元に戻る人もいること、いつになったら止められるか分からない人もいること等が報告されました。
 新薬としてはアズマネックスが注目され、ステロイド吸入剤としてはフルタイド、パルミコート、キュバール、オルベスコより強力ではあろう、しかし嗄声の副作用が強くなると報告されました。シムビコート(フォルモテロール+パルミコート)が出ると「喘息治療・夢の決定打」になるかもしれないという話もありました。まだ使用できない医療機関が多いのですが、やがて出た段階では、試したり勉強したりした上で、最も自分によい治療薬を選択すべき時代に入るでありましょう。減感作療法の復活も強調されていました。

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 学会の親睦会で上記写真のような伝統芸能を見せて頂きました。輪島の御陣乗太鼓、富山「風の盆」の踊り、能登のキリコ祭りを連想させるものであり、日本海の文化が海で繋がり、各地の伝統となって今に生きていると感じました。
 1700人のアレルギー関係の医師や関係者が秋田に集まったそうです。それだけ集まった中で喘息患者さんとの交流会、話し合いが持てたのは私だけかもしれません。喘息大学や「わかば会」の実績の報告(次頁)をしました。
 離れていても「出会いは宝である」を生かして、全国各地でたまに絆や宝を出会うことにより磨いて、よい人生を築き上げてまいりましょう。