喘息をよくし治すために(2008)

191. くり返しの中で進歩と感謝を

喘息をよくし治すために(191)
喘息大学学長 清水 巍

 あけましておめでとうございます。毎年恒例ですが、野口正路さんの「新年に贈る言葉」(土曜美術出版販売)から詩を引用し、冒頭を飾ります。

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時の刻みが
年を分けるとき
あの夜空に澄む
星の瞬きは
知り合う人々の
存在の美だ
やがて新たに
到達する光の筆で
期待のドラマを
素描する

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 一夜明けただけで新年が始まりました。人間が作った区切りに過ぎないとはいえ、大晦日の夜の星のまたたきと、新しい年の日の出から始まるドラマ(物語)とは正反対のように違いがあります。舞台は夜と昼、違ったように見えますが、しかし連続しているとも言えるでありましょう。
星のまたたきのような人と人との関係、それは存在を輝かす美であります。太陽が昇って星が見えなくなっても、星と星の関係のような人と人との関係によって、日中のドラマが作られていくのです。
 新年にあたり、「健康と幸せ、飛躍を願わない人はいない」でありましょう。1年1年があって、その積み重ねの上に今年がある、と申し上げさせて頂きます。
 今年は冒頭から1月12日(土)、13日(日)と『加南支部「若葉会」結成40周年祝典、石川県喘息友の会総会・新年会』が、喘息大学終了の最後の舞台となった片山津温泉・加賀観光ホテルであります。何回か北陸3県喘息患者交流会が開催された所でもあります。それを加南支部と金沢支部、石川県喘息友の会が一緒になって祝おうというのであります。
 1967年(昭和42年)の12月に、加南の寺井診療所の患者さんを中心に喘息患者会「若葉会」が誕生しました。やがて金沢喘息友の会が結成され、合同して石川県喘息友の会「わかば会」となりました。喘息大学、日本喘息患者会連絡会、全国各地の喘息患者会と交流会、今年5月に開催される第7回成人喘息ゼミナールの源流となったのです。この誕生が無ければ今日はなかったでありましょう。
 1年、1年の積み重ねでこの日を迎えるわけであり、ささやかではあっても神戸新聞の記事や「私のぜんそく克服物語」は現在の到達点を示しています。喘息はコントロールされやすくなりました。小児も成人も増加している状況はあります。そういう時代の流れの中で、私たちは1年、1年をくり返しながら、みんなで進歩を作り出して行くのではないでしょうか。まず感謝、そして次を考えましょう。
 今年は下のような年賀状を出しました。

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 第7回成人喘息ゼミナールは参加を楽しみにしておられる人が毎年増加しております。5月17日(土)~18日(日)金沢都ホテルで開催の予定です。新しい人の参加がどれだけあるかが、今後のわかば会の勢いを決定します。会員の高齢化が進み、会報を受け取れない人も増加するからです。
 今年は著名な人の特別講演、金沢大学の耳鼻科の耳と鼻の先生お二人を招くことを検討していますが、先様の御都合もあり未定です。しかし全国で最もレベルの高い唯一の成人喘息教育、1泊2日の集いであり、沢山の人が今から参加することをご予定下さい。

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 今後のくり返しの進歩には、裏側の充実が必要です。例えば夜の睡眠です。上の段階は「身体が休息する睡眠」、段階の3と4は深睡眠「脳が休息する睡眠」です。これが寝入り直後に長時間あるのがよい睡眠です。そして3~5回、浅い睡眠と深い睡眠が交互に来るのがよいのです。寝ている間の「くり返し」の質が昼の活力を決定しているのです。そして昼の「くり返し」の質が進歩を決めるのです。
 私も若いときは寝ないで頑張れましたが、最近は睡眠を重視するようになりました。すると昼間の元気さが違うのです。このように夜昼や年々の「くり返し」を改善して、より進歩を生むことが「わかば会」の目的です。若葉や木々の花、草花もよりよい葉、花をつけようと毎年努力し、準備しているのではないでしょうか。
 わかば会の更新・継続をお願いし、裏も表も改善し、進歩と感謝の1年に!!

192. 41年目からの歩み

喘息をよくし治すために(192)
喘息大学学長 清水 巍

 加南支部「若葉会」が発足して40年が過ぎ(昨年12月で40年を迎え)、41年目に入りました。記念文集「わかば」が発行されました。それを会員全員にお届けしたいのですが、費用の点で無理があります。過去を振り返るものとして、その表紙から編集後記まで、毎号この会報を利用して連載し、紹介をしてまいります。

g192_01表紙

g192_02口絵

 しかし、考えなければならないのは41年目からの歩みです。40年も過ぎると、いくら「わかば会」といっても、散っていった葉や朽ちた葉もあります。生命ある限り、木々は若葉をつけます。口絵の言葉にあるような葉をつけ、活動していくためには「命や健康」を大切にしなければ、ということでありましょう。
 また新しい芽ぐむ春を迎えていくにあたって、第1に「癌がどこかにないか」「身体の内部や臓器は大丈夫か」検査をしておく必要性が、1年ごとに重要になっております。2つの例だけあげておきます。1人は現役の男性です。毎年、人間ドックを会社で受けているから胸部レントゲン写真や呼吸器機能検査は受けていても、胃の内視鏡検査は受けないという人でした。胃の方はバリウムを飲む検査で、毎年「正常」という判定でした。胃ファイバーを勧めたところ、早期癌が発見され、1月に手術をし助かりました。もう1人は退職をされた女性です。家で友人とこたつに入って話し合っている最中に意識が無くなりました。喘息の人ではなく、血圧が高かったという人でした。城北病院に救急車で運ばれたのですが、脳幹出血で回復不能で亡くなられました。
 これだけにとどまらない危険や事例が年々増加しています。何よりも自分から健康管理に気をつけて、主治医と相談しながら検査をし、「未然に防ぐ。早期発見、早期対策」が必要かつ重要な年代、時期に入ったということです。
 第2に「学び挑戦(チャレンジ)する」ということです。ともすれば「引きこもり」がちになったり、「もう年だから」と弱気や億劫(おっくう)が先に立ってしまうということはないでしょうか。わかば会員や喘息大学の卒業生、成人喘息ゼミナール参加者は、喘息の人達の中でとても積極性に富んでいる人達です。意欲的・行動的で前向きでなかったら入会していません。「わかば会」から離れてしまうということは、自ら「木の枝から葉を切落とす」ようなものではないでしょうか。
 私は杉花粉症の人達から学ぶことがありました。今号に花粉の記事が載っています。日本人の10人に1人が杉花粉症と言われたのに、東京では28%以上となりました。喘息と合併している人も多くいます。その人達は「ひどくもないし、症状も出ていない」のに、1月に入ると誰も何も言わないのに「杉花粉の減感作療法」を受けに来るのです。「年々軽くなる」と嬉しそうに、症状が無くとも来られるのです。「ひどくならないように、よりよくなるようにと努力されている・わかば会員」と同じです。しかし、わかば会やゼミ、勉強会、本などに見向きもしない、「ひどくなった時だけ来るという喘息の人」はわかば会員や花粉の減感作に来る人とは随分違うと感じます。前向きな姿勢を堅持し生きるということが必要ではないでしょうか。
 第3に「参加する」ということです。わかば会に所属すればアドエアという「セレベントとフルタイドが一緒になった」便利な吸入器が今年6月から1ヶ月でも、2ヶ月でももらえる」と知ることができます。コントロールが楽になるのです。
 5月の成人喘息ゼミに参加すれば、鼻や副鼻腔、耳についての解剖学的構造や役割、喘息と関連する合併症の知識や予防・治療・管理について学ぶことができます。金沢大学耳鼻咽喉科の新進気鋭の専門家お二人の先生が協力して下さいます。喘息だけでなく、合併症も管理すべき時代に入ったのです。
 著名な人の特別講演は、何千人もへの講演が同時期に重なったため、来年に延期をお願いすることになりました。しかし、今年もよりよい人や企画を迎える予定です。成人喘息ゼミの前泊者交流会も実施します。このような全国的な取り組みは、成人喘息者にとって、交流もあるという点で日本唯一のものです。成人喘息患者さんにとっては日本で最も充実した行事であります。
 この参加するということ、ゼミには参加できないけれども会員の更新をするということ、会報を読み医師や医学、全国の患者さんと命脈を共にするということは、1枚の「若葉」が枝とつながり生きることと同じです。今年も同封のわかば会入会更新用の振替用紙を外来に持参されるか、送って頂いて連帯して歩んでまいりましょう。今年は私は医師になって40年目を迎えます。命ある限り、連帯と絆を大切にしてまいります。皆様も命ある限り、連帯と絆を大切になさって下さい。

193. 長寿で元気に!

喘息をよくし治すために(193)
喘息大学学長 清水 巍

 2008年度(平成20年度)わかば会の更新はもうお済みでしょうか。まだであれば、すぐに更新をお願い致します。
但し、領収書を確認して下さい。もう更新が済んでいるのに「2重払い」をされる人がいるのです。どなたかに勧めて頂きたいと、2枚の振替用紙を前月号に同封しました。「2枚来たので必要かと思い、2つとも自分の名前で合計6,000円振り込んだ」という人も出ました。お返しをしましたが・・・。今月は振替用紙を入れませんでした。領収書の無い人のみ手続きをして下さい。
ご存じかと思いますが、石川県は「わかば会」に毎年20万円の補助金、小児喘息サマーキャンプに25万円の補助金を30年間、継続し援助してくれています。石川勤労者医療協会(城北病院や寺井病院が所属)が年間70万円の補助及び事務所を提供してくれています。編集長の私はもちろん、宮岸さんや役員、ITわかばや会報わかばの発送ボランティア、HP担当者、職員が無料で協力しています。これらを総計すると、約300万円(会員1000人×3000円)に相当します。
わかば会員は年間3000円、IT会員は2000円を負担していますが、6000円、4000円の価値のある会報を約半分の負担で受け取っているのです。お互いに「喘息をよくしよう」という善意の協力の「結晶」である「わかば会」、今年も入会を是非ともお願い致します。
今年度の7月からアドエア(フルタイドとセレベントが一緒になったもの)とオルベスコ(喉にやさしい)の、1ヶ月以上処方が可能となります。今号にも幾つかのステロイド吸入剤を吸いやすくするための情報を紹介しました。オルベスコのこれまでの吸入スペーサーは洗いにくいということで、単純なものに統一されました。12月頃には「メプチンエアーとセレベント、パルミコート」の3剤が一緒になったような「すぐ効き、長時間効き、炎症を抑える」というシンビコートが出るだろうと言われています。「どれが自分に最も合って、最も副作用が少ないか」試し、選ぶ時代に入っているのです。
「喘息はよくなったけれど、耳や鼻の合併症が」という人が増えています。それもよくする時代に入りました。そして、「長寿で、しかも元気に!」というのが求められています。日野原重明さんや瀬戸内寂聴さんがお元気に活躍されているのはすばらしいことです。しかし、独り身です。新藤兼人監督も長寿でご活躍中ですが、奥様の乙羽信子さんを亡くされました。「どちらか1人で長生きを」ではつまりません。「夫婦で2人とも長寿、ボケず元気に活躍を!」が理想ではないでしょうか。
下の記事は2年前に読売新聞に掲載されたものです。今年度の成人喘息ゼミナールには95歳の梶井重雄先生に御講演を頂きます。「わかば会員」を更新し、成人喘息ゼミナールに3月中に申し込みをして下さい。
第7回成人喘息ゼミナール 特別講演テーマ『長寿・活躍の秘訣』
講師 梶井重雄先生(95歳) 歌人・北陸学院短大名誉教授
お2人で長寿、しかも第一線でご活躍だったというのは珍しいです。受講者とそのご家族の長寿と活躍を願い、ご講演を依頼しました。下はインターネット『YOMIURI ONLINE 読売新聞』からのお2人のご紹介です。

 

第7回成人喘息ゼミナール 特別講演テーマ『長寿・活躍の秘訣』
講師 梶井重雄先生(95歳) 歌人・北陸学院短大名誉教授

お2人で長寿、しかも第一線でご活躍だったというのは珍しいです。受講者とそのご家族の長寿と活躍を願い、ご講演を依頼しました。下はインターネット『YOMIURI ONLINE 読売新聞』からのお2人のご紹介です。

 志高く学び続けたい 重雄さんは、学生時代に斎藤茂吉の下で学んだ歌人。「和歌の原点は万葉集にある」と、講座では4500首を超えるすべての歌を読み解く。中世の古典が得意な幸代さんは、源氏物語を原文で読む講座を続けている。講座は月1回2時間。読み終えるには10年ほどかかるが、依頼は多い。

g193_00「お互いに助け合うのが夫婦円満の秘けつ」
という梶井夫妻

2人が出会ったのは、1934年。東北帝国大(仙台市、現東北大)国文学科の同期生だった。重雄さんは、七尾中学を卒業後、第四高等学校を経て同大に入学した。幸代さんは、東京女子大で国文学を専攻して卒業後、女子学生の
受け入れを始めた東北帝国大を受験し、合格した。
国文学科の同期生はわずか5人。机を並べるうちに互
いにひかれ合い、やがて結婚を約束。卒業後、一時は
互いに郷里に帰ったが、重雄さんの出征を前に結婚した。
無事復員した重雄さんは、戦前から取り組んでいた読
書の普及活動に力を入れた。48年に七尾市立図書館の
館長に就任。以後20年にわたり、地域の子どもや女性を対象に読書会や短歌の勉強会のほか、文化財発掘調査をするなど能登地域の文化教育振興に携わった。
 幸代さんも、子育てが一段落した51年から教職に復帰。その後、ともに金沢市内の短大教授を務めたが、退官以降、生涯教育・女性教育の普及に尽力する。「女性も自分が何をしたいのかという目的を明確に持たなくてはいけない。大事なのは志よ」
 「教えるというのは、教えられること」という重雄さん。幸代さんも「学習は自分を磨くもの。学ぶことはどれだけでもある」と続ける。「わしらの話を聞いてくれる人がおる限り、続けていきたい――」
*取材後記*長生きの秘けつを「食事は○○」という2人。しかしそれよりも、尽きることのない知への欲求が大きいのではないかと感じた。(蒔田一彦)

(2006年6月10日 読売新聞)

 

 第7回成人喘息ゼミナールの案内、スケジュール、申込書は巻頭にあります。ゼミ申込者は特別講演を含め全て受講できます。わかば会員にも「長寿で元気に!」の秘訣を聞いて頂きたく、会員になって頂いた人のみ、5/18午前の特別講演を1,000円の受講料で聴けるようにしました。わかば会に入会した上で、受講料を支払い、お聞き下さい。そしてわかば会員と関係者は皆、長寿で元気に!

194. 若さと永遠

喘息をよくし治すために(194)
喘息大学学長 清水 巍

 4月までに更新を頂いた皆様と、この欄で今年も学び合えますことを、大変嬉しく思います。長く寒かった冬が過ぎて、今年もピンクの桜が咲き、初々しい若葉が芽吹いてくるのに出会えた喜びと同じ喜びです。巡り来る大地自然の春と今年も出会えた喜び、その春と共に過ごすことができる喜び、再び一緒に1年を学びながら過ごせるのですから、貴重な1年の旅を大切にしていかなければなりません。
 医師となった40年前、喘息は大変に苦しい病気でした。私も喘息患者さんも若く、患者会や喘息大学、薬の発展もあり克服してきたという自負があります。
 今の時代、どの吸入ステロイドが自分に合い、最も経済的なのか後に表にしました。今年4月の薬価改定に基づくものですから、喘息患者さんとご家族にとっては価値ある表です。患者さんに知らせるニュースとしては、わかばならではのものでありましょう。
 喘息のコントロールがよくなったら難聴になった、好酸球性中耳炎、鼻の匂いが無くなったという人も多いのです。この合併症も若き新進気鋭の先生方の御努力で、やがて克服できる日が来ます。

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 第7回成人喘息ゼミナールで特別講演される伊藤先生を紹介します。ホスピタウンに掲載されたプロフィールです。若いが故に4月からは富山県の病院に赴任されるそうです。同じく、鼻疾患と喘息を特別講演して下さる塚谷先生も若く、すでに石川松任中央病院に赴任されました。お二人とも、私たちのことはよく知っておられ、快く遠方から講演にかけつけて下さいます。いろいろな苦労をされながら、若さを武器に大成されるのでありましょう。
 若い、若いと言っても1年ずつ年をとります。どのように年を取るのかということが大問題ではないでしょうか。
 もう1人のメインの特別講師の先生は、梶井重雄先生です。95歳でここに掲載・紹介の本を出版されました。御著の「はじめに」は、『私も、今年、95歳をむかえて「永遠の今」の思想のもとに、更に創造の第一歩を踏み出したいと考えている』と記されています。御著の帯の「悟りの風景」道元の解釈もお聞きしたいし、裏帯末尾の歌「道元の而今(にこん)の時と命満ちて 白山大汝(おほなんぢ)に対ふわれあり」の意味も伺いたいものです。

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 奥様は97歳です。「長寿・活躍の秘訣」は全わかば会員に聞いて頂きたいのです。ゼミに申し込んで頂ければ一番良いのですが、わかば会員に限り、この梶井先生の特別講演のみは1000円の受講費を当日午前10時に払って頂ければ受講できます。都ホテル7Fにお越し下さい。皆様と共に「而今(にこん)」(道元の言葉で「永遠の今」という意味だそうです)を共有したいものです。
 若き人も「わかば会」に迎えて、若き時も、年をとっても、「永遠に」ということは「死なないということではなく」、「永遠に続く今を大切に送る」ということではないでしょうか。そういう日々を目指して、御一緒に旅を続けてまいりましょう。

195. 長い歩みの到達点に立って

喘息をよくし治すために(195)
喘息大学学長 清水 巍

 桜が散って、若葉が大地を緑色に飾っています。生命の息吹が花と共に、芽や葉をつけ、5月の青空と好対照に緑色一色に変わってきました。山も野も、街路樹も若葉がキラめき匂っています。

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 わかば会の季節ですね。
 1967年(昭和42年)12月に加南の寺井の地に若葉会が誕生しました。40周年記念行事が行われ、柿色の表紙(ITわかばの人は違いますが)の今号にも40周年記念文集の1コマが、柿が実ったように掲載されています。
 若葉会という名前の由来は結成当時、小児喘息のお子さん(その後、金沢大学工学部に合格)を持つお母さんが「若葉のようにスクスクと育ってほしい」という願いを込めて提案され、成人喘息の人も「それはいい」ということで決められたことから来ています。その後、わかば編集長となった松永先生が会報を「わかば」という題字に変更され、わかば会と呼ぶようになりました。今は41年目を経過中です。長い道のりであったと言えるのではないでしょうか。
 喘息大学が開校したのは、1980年(昭和55年)5月。それから23年間、5月に交流会を行ってきました。終了後は成人喘息ゼミナールに姿を変え、これも5月に実施してきました。従って、この生命力溢れる5月はわかば会や私達にとって思い出の月であり、飛躍の月であります。
 その長い歩みの到達点に立つと、以下が課題としてあります。

① 喘息をもっとよりよくコントロールし、本当によくしていく。それによって、薬も減らせられるようにすること。
② 匂いが無い、耳が聞こえにくいなどの合併症を持つ人が増加しています。そういう喘息に伴う合併症の克服も課題です。
③ これまで何とか生き抜いてきた人も、これまでになったことのない病気が年齢と共に、喘息とは関係無しに出てきます。その早期発見やよりよい対処が必須です。
④ 生き生きと生きる、元気で長寿を達成する。よりよい人生の完成を目指し、人間関係も貴重なものとして充実させること。後期高齢者医療制度の「お年寄りの皆さんや若者のためになる制度です」というウソを粉砕し、医療を十分に受けれる世の中づくり、地球温暖化などを防ぐ環境づくりの達成。

 どれもこれも大切です。わかば会員を増やし、全ての会員が上記の①~④の達成を目指すことが課題ではないでしょうか。
 その達成のためのひとつのステップとして、第7回成人喘息ゼミナールが5月17日(土)、18日(日)に都ホテルで開催されます。現在100名が参加の予定です。今回は診察希望者のための予約は希望通りに確定しました。個別相談は北陸3県の通院患者さんや診察予約者は通院でやって頂くことにして、それ以外の人を5分おきに、午後4時~午後10時まで面談時間を指定しました。体験交流会は77番目までの申し込み者は第1希望に回せましたが、それ以降は第2、第3希望に回った人もいます。溢れるグループがあったためです。
 参加予定者のアンケート89名(未記入の人もいたため100名にならず)を集計しました。アレルギー性鼻炎あり64名(72%)、鼻の匂いがない人37名(42%)、好酸球中耳炎の人19名(21%)が存在したのです。鼻の匂いのない人や中耳炎の人の交流会各10名定員では希望者を吸収できません。工夫し割り振りしました。このように喘息の合併症克服が大きな課題になっていることを、認識して頂けると存じます。
 私の定年ごくろうさん会も夕食交流会であるのだそうです。定年で一服というわけにはいきません。新書版の「新しい本もここなら出せるかも」という嬉しい知らせが検討課題の1つとして入ってきました。皆さんに感謝し過ごしてまいります。

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 金沢市は上記のような充実した検診を行います。わかば会員は公費の援助あるおトクな各自の自治体検診は全員必ず受けて下さい。
 95歳の梶井重雄先生の特別講演を、わかば会員は1000円の受講料で聞くことができます。「長寿・活躍の秘訣」を聞いて下さい。そして、長寿・活躍を。
 私の講演は「現在の到達点・最新の薬物療法と過ごし方」ということでお役に立ちたいと思っております。

196. 来年は、また新たな句読点

喘息をよくし治すために(196)
喘息大学学長 清水 巍

 緑が濃くなってきました。春から夏へ向かう時、自然はクレッシェンド(だんだん音楽の音が大きくなる記号)がついたかのように若く充実した変化を示します。
 桜→若葉→つつじの花や藤の花→水田に稲の苗→バラやあじさいの花が咲くというように、目まぐるしく車窓から見る光景が変化し、夏が来ることを予感させます。心も身体も影響を受けて、充実を感じさせますね、
 そんな時の流れの中で、第7回成人喘息ゼミナールと私の定年ごくろうさん会が開催されました。95歳の梶井重雄先生は抜群の記憶力、話術、朗詠力で参加者を魅了しました。年はとっても、まだまだクレッシェンドに生きているよ、と見本を示して下さいました。日野原先生と同じように「スーパー老人」です。日本の大地・自然は元気に夏を準備しています。私たちもまた、元気に夏を迎え「これからの年月を過ごしていけるよ」という希望を感じさせる機会となりました。
 いよいよ来年の5月は、①石川県喘息友の会「わかば会」結成35周年、②喘息大学創立30周年、③日喘連結成20周年、④HP開設10周年記念の時を迎えます。節目の年となります。10年前にこの「喘息をよくし、治すために」に書いた文章を、ここで再掲してみましょう。丁度、その文がHPの5月の所に掲載され、紹介されているのです。会長の徳田さんのお力によるものです。

『句読点』
一歩前進、二歩前進を大切にしながらも、立ち止まって考えてみること、文章にたとえるなら、句読点を大切にすることが必要ではないでしょうか。
 句点というものは「、」、それとも「。」でしょうか。読点というのは「、」、それとも「。」でしょうか。正解を言える人もいるでしょう。分らないという人もいるでしょう。私は間違って理解していました。「、」が句点。「。」が読点と思っていたのです。句読(くとう)点というからには、「、」が上で、「。」が下だからと思っていたのです。この文章を書くために、辞書を引いて「、」が読点、「。」が句点と分ったのです。今、正に句読点を正しく理解し、この問題に句読点を正確に打つことができたのです。見れども見えず、長い間、使ってきても正確に理解せずだったわけです。皆さんはいかがでしたでしょうか。
喘息の人の文には、一生懸命に気を使って、書かれるのしょうが、「。」句点が少ないのです。「、」読点は沢山あって、時に別のことや思いが入り込み、結論が違うとこに落ち着いていることがよくあるのです。
片山津温泉の原湯の紹介文に、「そこに浸ることは生活の句読点」と語っているパンフレットがありました。
なるほど、喘息大学の交流会と温泉は一年間の生活の句読点か、と感心しました。喘大の卒論集も4年間の学びの句読点です。前進の中にも、そういう句読点を打って次に進むことが必要ではないかと考え、こんな文をしたためた次第です。

 こんな文から10年が過ぎたのです。この時から10年目の句読点が来年です。喘息大学は成人喘息ゼミナールとなり、HPと共に姿を変えて生きています。この「わかば」も皆様と共に生きています。一つのまた、区切りとして盛大にお祝いをしようではありませんか。

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 上は私の講演、40年目の句読点でありました。来年は「皆さんと共に歩んだ41年」と題し、記念講演をさせて頂きたいと存じます。
 オープニングは今年に引き続いて、石川県の文化水準の高さを味わって頂ける方、特別講演も今年以上の先生方、体験交流会は2部制に(多くの人と交流できるようにメンバーを入れ替えて2回行う)などを、今から検討してまいります。
 来年こそは、皆様にも「大きな句読点」を打って頂くべく、今から御参加を検討なさって下さい。そして、新しい人も加えて、喘息をよくする大きな流れを作りましょう。
 古くからの流れと句読点についてばかりを書いてきました。現在の瞬間、この6月から7月にかけても大きな変化・句読点があるのです。それは、アドエア(セレベント+フルタイド)やオルベスコの新薬が7月から新薬扱いでなくなるのです。1ヶ月の間の処方として可能になり、2週間おきに診察に来てもらうという、面倒なことをしなくてもよくなるのです。2ヶ月分ぐらい1回の受診でもらうということも可能となります。
 成人喘息ゼミナールで「現行の到達点・最新の薬物療法と過ごし方」という記念講演をさせて頂きました。感想文集計にありますように好評でした。梶井先生の講演はインパクトがあり◎印も多かったのですが、喘息の人には薬を上手に使えるようになるということも重要なものであることを証明しました。
 時の流れは貴重なものであり、どんどん早まり、残りが少なくなって行きます。であればこそ、しっかり句読点を打って、見つめて、次を生きることが大事です。
 全国各地の秋の交流会も、来年の大きな節目に向かう貴重な読点(とうてん)ステップとしていきましょう。多くの皆様とお会いしたいと存じます。

197. 明暗と2つの調査

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喘息大学学長 清水 巍

 第7回成人喘息ゼミナーはが成人の喘息や合併症をよくすることに役立ちました。小児喘息をよくするための小児喘息サマーキャンプは、小児喘息のお子さんをよくすることに役立ちます。
 小児喘息サマーキャンプは、今では日本では2ヶ所くらいしか継続されておりません。福岡市の国療南福岡病院と石川県喘息友の会と城北・寺井の小児科スタッフによるものと2つくらいになってしまったのです。
 では、薬や医療機関だけで喘息治療は十分ということになってしまったのでしょうか。薬や注射は全国どこへ行っても同じものが使われます。保険診療で使える医薬品が国によって決められているからです。勉強して、日進月歩の医学・医療を取り入れているかどうかの差は出てきます。

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 第20回日本アレルギー学会春季臨床大会は、東京・台場のホテル日航東京で開催されました。
 私も新橋から初めて無人運転(コンピューター運転)「ゆりかもめ」に乗って出席してきました。東京近辺はダントツで変化し、歴代政府は都市を立派にしたけれども、「地方をダメにし、農業をダメにした」ということを実感してきました。それはさておき、医学・医療の進歩は医師の勉強の程度によって、患者さんへの還元力が違ってきます。
 そういう差は医師により、医療機関により出てきます。しかし、根本的な差は薬だけに頼っているか、それはよいものを使いつつも、薬だけに頼らず患者さんと共に、よくなり治っていく努力を続けているか、にあるのではないでしょうか。自然治癒力が大事です。
 喘息患者さんの明暗はそこで別れてしまいます。根本的によくする力が養われるかどうかで差が出るのです。例えばステロイドの吸入はどこでも使われます。ウガイの指導はやられていても、食前の吸入は指導されておらず、嗄声に悩む患者さんは多数います。粉のステロイドが普及して、全身性ステロイドの使用が減り、その副作用は減ったにしても、鼻が悪くなったり、匂いが無くなったり、耳に好酸球炎症が起こって好酸球性中耳炎に悩む人が増えているのです。金沢大学耳鼻咽喉科の伊藤真人先生は「初期の炎症は鼻から耳につながり、開口する耳管入り口から始まっている」と話をされました。鼻の治療や管理が明暗を分けると言えましょう。
 わかば6月号に「こし路さんの鼻の管理法」を紹介しましたが、そういうことの大切さを知っていたり、ノウハウを持っている医師にかかるかどうか、わかばを読むかどうか、成人喘息ゼミに参加するかどうかでも明暗が別れるのです。
 ただ、わかば会に入っていれば死亡しないかというと、そういうわけにはいきません。喘息死はかつての6000人台から3000人以下へ半減したのですが、わかば会員の喘息死は殆どありません。長生きをし、健康に生きて行くためには、合併症の克服が大事であり、梶井重雄先生のように根本は生き方です。後ろの方にお二人、御家族からのお手紙を掲載しました(おたよりコーナー参照)。この1ヶ月の間に5人の会員の方の訃報に接しました。この場を借りて、慎んで御冥福をお祈り申し上げます。
 5人のうち、3人が進行癌、1人が脳心障害による突然死、1人がご家族からの報告がないため死因が不明でした。全身精査、管理、癌の早期発見が重要です。5人のうち、3人の御家族からは実に丁寧なお礼と感謝のお手紙がありました。弔電を打ち、お香典をお送りしたのに通常はある香典返しも無く、「わかばはもう送らないように」という電話だけ即刻あったという所もありました。死んだ後にも、御家族との関係で明暗が出る稀な場合もあると残念に思いました。
 よい関係を生前に築き、死後にもよい思い出をお互いに残していくために、敢えてこんな死後の明暗も紹介させて頂きました。
 来年は記念すべき句読点の年と、前号に記しました。それを文字通り迎えていくために2つの調査が行われます。次ページから紹介した「実態調査」がその1つです。わかば会員はもちろん、日喘連の患者会会員の全てを対象に実施します。それは喘息患者さんの暗部をも明るみに出し、明るい未来を作ることに役立つでありましょう。会員の皆様のご協力を今からお願いをしておきます。
 もう1つのやがての調査は喘息大学卒業生1,467名に対する調査です。死亡者、転居先不明者を除きます。どこまでよくなり、どうなっているのか、その調査は長期観察結果として貴重なデータとなることでしょう。卒論をインターネット上の会員専用コーナーに紹介させて頂いてよいかどうかも問う予定です。
 これら2つの調査は明るい展望を作る試みとなるでしょう。この「わかば」も暗いところを明らかにしながらも、会員がより明るい生活を送れるようにと願って発行し続けてまいりたいと存じます。

198. 第16回喘息デー・喘息克服月間  合併症の克服もめざす「わかば会」

喘息をよくし治すために(198)
喘息大学学長 清水 巍

 アドエア(フルタイド+セレベント)の60ブリスター(60回分のクスリが内包されている)が7月1日から発売されました。従来の28ブリスターの分も複数個を外来で投与できるようになり、1ヶ月に1回通院、2ヶ月に1回通院の人にも使って頂けるようになりました。セレベントも吸ってからフルタイドを吸い、フルタイド2回吸入していた人は計3回吸入しなければならなかったのですが、1回の吸入で済むようになりました。「そりゃ、便利だ。楽になる」と好評です。
 オルベスコも1個から複数個投与できるようになりました。このようにステロイド吸入の選択肢は広がり、喘息のコントロールはよくなる時代に入ったのです。
この頃、外来で「喘息の調子はいいです」という答えが返ってくる会員さんが多いので、「鼻の調子はどう?匂いは大丈夫ですか?」と聞くようにしました。そうすると驚くべきことに、実に多くの会員さんが「そう言われると、匂いは無い。あっても時々」などと言われるのです。
 第7回成人喘息ゼミナールでは、耳鼻咽喉科の鼻と耳のエキスパートの両先生に来て頂き、特別講演をして頂きました。鼻と耳を中心とした体験交流会も本格的に行いました。日本の喘息患者さんでは初めての試みです。9月から11月までの第16回喘息デー・喘息克服月間では、「匂いや耳の合併症」を克服することも重点の1つとして取り組みます。
 わかば6月号の「こし路さんの鼻洗浄法」は安くて便利だと評判で、普及し始めています。匂いを感受する場所は、鼻腔の「天蓋」(鼻根部の後・奥)です。そこにベルベゾロン液(ステロイド水溶液)かリンデロンA液(これはフラジオマイシンという抗生物質が入っているので、できれば抗生物質の無い方が良い)が到達するようにすると、かなりの人が治るのです。(17頁参照)
 そこに薬が到達するようにするには、①頭部90度後回転(頸椎を痛めるので止めた方がよい)、②礼拝スタイルをして鼻腔に薬を入れる、2つの方法が紹介されてきました。宮岸さんの描いた絵と写真を見て下さい。

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 このどちらも大変なので、私は朝と寝る前に布団の上で仰向けになって薬を注し、寝返りをして360度回転法を提唱しお勧めしてきました。そうすると、天蓋にも一部届きますし、安全だし、容易に習慣化できるからです。事実、それによって匂いの戻った人が何人も出現しました。
 そもそも鼻への薬は沢山出されています。しかし、投与法が十分に説明されているわけではありません。座ったり立ったりして薬を点鼻し、口の方に出てしまう人、喉の方にばかり薬が回り飲み込んだり、吐き出している人も多いのです。
 最近、井之口先生(佐賀大学医学部)が提唱しておられる方法を耳鼻咽喉科学会のビデオで知りました。それは頭を傾け、鼻中隔(左右の鼻腔を仕切っている壁)を伝わらせて、薬液を投与する方法です。

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 会員さんにいろいろ工夫してもらえば、よりよい方法が探し出せるでありましょう。
匂いが改善すると、味覚障害も改善する人もあるそうです。
 ステロイド吸入の普及で喘息のコントロールはよくなったけれども、鼻の具合が悪くなり、匂いが消
失し、やがて好酸球性中耳炎となって、耳の具合の悪い人が増加してきました。モグラ叩きのように好酸球が逃げ場を求めて移動するのです。
 アレルギー性肉芽腫性血管炎や好酸球性胃腸炎、膵炎などを起こす人もいます。今の時代での「よりよい対策は何か」を見極めることが大切です。個別対策を学ぶ事も必要です。しかし、根本的には薬に頼るだけでなく、「自然治癒力に頼る。その低下を妨げないようにする。高めていくようにする」ことが重要です。
 喘息大学の1期~3期生までの人は、ステロイド吸入を今は全くしなくてもよくなった人が多く、鼻や耳の合併症が出ている人は存在しません。教育・鍛錬・交流療法、役員などのボランティアをしっかりやってきたことが奏功したのか、4期生以降の人とは喘息が違うのかと思わせるほどです。薬によって、よくなることは必要です。しかし、モグラ叩き、イタチごっこのように、次から次と薬で抑えるばかりでは、根本的によくならないのではないでしょうか。
 9月から始まる喘息克服月間では、どのような薬物療法が現時点で、その人に最も良いのか、合併症を克服する、出さない予防をする、根本的に治すには、などを重点にします。全国各地の交流会でお会いしましょう。克服月間が新しい人にも役立つよう、皆様方のお力添えをお願いします。

199. 秋の3段飛び・9月はホップ

喘息をよくし治すために(199)
喘息大学学長 清水 巍

 7,8月と猛暑が続きました。9月に入ると少しは涼しくなりますね。喘息発作の原因となるダニの死亡が多くなり、風化して喘息発作が起こる原因となります。繁殖したダニの数、死亡して風化したダニ抗原の量が多ければ、影響は甚大と予想されます。
 それを防ぐために9月は3段飛びで言えばホップの月、10月はステップの月、11月をジャンプの月にして、喘息克服月間にふさわしく、克服を目指したいものです。このホップの9月をどのように過ごすべきか考えてみましょう。
 まず第1は「クスリの使い方を上手に」ということが挙げられます。ダニが増えても、喘息発作を起こさなくてもよい時代に入っているのです。先日、「ウサギを室内で4匹飼うようになったら、喘息がひどくなった」という人が外来に来られました。「ラビパパ(ラビット=うさぎのお父さん、全国にうさぎ専門店を展開した金沢の人)に相談したら、清水先生のとこへ行くようにと言われたので来た」と言うのです。ラビパパも喘息で、城北診療所でスッカリよくなられ、商売に励んでも大丈夫になられました。一匹でも喘息になる人がいるのに、4匹では大変です。しかし、吸入薬だけでコントロールできるようになりました。この患者さんから「ウサギのエサ、チモシーなどの草の粉末も喘息に影響がある」と教えられました。4匹分のエサですから二重、四重に大変です。それでもコントロールできる時代です。携帯用拡張剤不要が当然の時代です。
 第2に、好酸球を気管支から追い出すとモグラたたきやイタチごっこのように、鼻や耳、他の臓器に影響が及ぶことがあります。前月号では「匂いの問題」を取り上げました。匂いを感ずる「天蓋」にベルベゾロンやリンデロンA液を到達させなければなりません。以下にベルベゾロン5mlの薬の写真を掲載しました。これらを使って、上手に薬を到達させられるかどうかが鍵となります。患者さんの工夫や体験、わかばや講演会、交流会での学習が必要だということです。うまく使用しないと、口の中に入ったり、鼻から垂れてしまいます。

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 「たかが鼻の問題、匂いの問題、どうでもよい」という人もおられるのですが、耳の合併症も含めて、困っている人が放置されている現状にあります。私たちはその合併症も克服するよい方法を探します。それもホップの月にしようではありませんか。
 第3に、関西、関東、全国各地の交流会が開催されます。9月はその準備の大切な月です。第1、第2に述べたことをキッチリと自分のものにするだけでなく、多くの新しい人と共有できるようにすることが必要ではないでしょうか。ご自分のできる協力、新しい人のお誘いをよろしくお願い致します。
 最後はそれぞれの人にとって、喘息の患者さん全体にとって、よい9月になるように努力することでありましょう。小児喘息サマーキャンプは松本先生の文にもありますように大きな成功をおさめました。成人の場合はサマーキャンプというわけにはいきません。9月28日(日)、金沢支部・加南支部合同バーベキューを楽しみましょう。松任グリーンパークの写真を紹介しておきます。私は山側環状線、加賀産業道路を通って鮎の釣り場・手取川に行くのです。よく通るのですが、中に入ったことはありません。この機会に初めて写真を撮影のため入りました。

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 郊外の空気のよい所で、みんなと腹一杯食べるということも、鋭気を養うことに連ながるのではないでしょうか。徳田会長手製のスモーク卵やスモークチーズを今年は両支部が味わえます。
 今年の秋には、「喘息患者さん全国実態調査(仮称)」が行われます。宮本昭正東大名誉教授が中心となられ、日本の代表的な喘息患者会とお世話している先生方が協力して実施します。その実行委員会(通称:喘息患者会合同円卓会議)が8月31日(日)東京の日本橋で開催されます。日喘連の西村会長と顧問の私が参加してきます。
 そこでアンケート内容や手順が話し合われ、日喘連加盟の全ての患者会・会員の方々に発送されます。その発送・返送費用は全て実行委員会が負担してくれます。ただ発送作業は各患者会にお願いをしなければなりません。わかば会員の皆様には全員お届け致します。アンケートに記入し返信をして下さるよう、今からお願いをしておきます。
 それは全国的に集められ、専門家によって集計・分析され発表されます。日本で初めて行われる実態調査です。この調査もホップ、ステップ、ジャンプと大きな実りをもたらすでありましょう。
 残暑が厳しいかもしれませんが、皆様個人にとっても、大きな実りを付け始める9月でありますように。

200. 秋の3段飛び・10月はステップ

喘息をよくし治すために(200)
喘息大学学長 清水 巍

 この医学シリーズ「喘息をよくし、治すために」が200という大台に乗りました。1年間に12回ですから、16年以上毎月続いてきたことになります。振り返って調べてみましたら、1992年3月に「混沌の中に光るもの」が終了し、その年の4月から始まったのです。では、それだけ続けてきて「どんな効果があったのか」ということが問題です。
 今日、ステロイド吸入剤の改善で、セレベントやホクナリンテープによって気道の長時間拡張が可能となりました。随分と症状は改善されるのですが、根本的には治っていないのです。現在あるクスリは全て「治すものではないので、止めたら再発する。止めてはならない」と医療界では言われています。その証拠に「気道から好酸球が追い出されて」も「好酸球性副鼻腔炎(匂いが分からなくなる)」「好酸球性中耳炎(耳が聞こえにくくなる)」で悩む人が増えているのです。昔はそんな人は殆どいませんでした。
 白血球の中の好酸球(アレルギー反応と密接に関係する)の根本的なコントロール方法は見つかっていません。ただ言えることは、喘息大学卒業生は一切の薬が不要になっても、なんともないという人が多く存在するというのは事実です。教育・鍛錬・交流療法により、心理面や行動面が改善した人が治っているのです。そういう努力が、根本的に治ることにつながっているというのは紛れもない事実です。
 「喘息をよくする」という点では、このシリーズが役立ってきたということは会員の人に認めてもらえるでありましょう。「治す」という点でも役立ってきたのではないでしょうか。「治る可能性があるとして、追求し歩んできた」結果、クスリを減らしたり、中止しても大丈夫な人を生み出してきたのですから。
 それを証明する調査の一環として「喘息患者の声を届ける会」のアンケート調査に御協力下さい。わかば会員はIT会員も含め全員に郵送されます。膨大なアンケートでビックリされたでしょう。10月20日(月)迄に住所・氏名を書いて同封の封筒に入れ、わかば会事務局に返送して下さい。事務局で封を開け、住所・氏名のある封筒とアンケートを別々にして東京の調査事務局に宅急便で送ります。城北診の外来に持参して頂ければ役員やボランティアの方が記入のお手伝いをします。
 これによって「わかば会員」のデータと他の患者会や全体との比較が可能になるのです。もう一つ、喘息大学卒業生へのアンケートも返送して下さい。これは東京には送らず私たちが集計し解析します。現在、「わかばを読んでいる卒業生」と、「もう読んでいない卒業生」との対比が可能となります。
 実態調査という点だけでなく、根本的に「よくし、治すには」とつながるのです。10月は各地講演会と共に、この調査もステップとなる月です。

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 「鼻の匂い」を改善する方法について、6、7、8、9月号の「わかば」に重要な情報を提供してきました。読んでない人もいるんですね。今月号も重要なことを紹介しておきます。ステロイドの点鼻剤(遮光して保存のこと)である「ベルベゾロン液」、「リンデロン点眼・点耳・点鼻液0.1%」にしても、匂いが戻るまで1日2回0.05mlを両方の鼻の穴に2回、布団の上に寝ながら8月号の方法で「天蓋」に届くように点鼻するのです。上手に一押しすると、0.05mlが出るようになっているとのことで、2回計0.1mlを入れるのです。1日合計0.4mlを使用することになります。そうすると、5ml入っていますので、10日~14日で1本がなくなります。
 天蓋に届くようにするというのも難しいのですが、一押し0.05mlというのも難しいのです。中には強く押して3日で無くなったとか、口に流れていってしまったとか、いつまで経っても無くならないとか、押す力が違いますのでややこしいのです。それで私の外来では1mlの注射器(写真)を無料で提供しています。それで1目盛り(0.1ml)を吸って、注射器を鼻の奥に入れ、噴射すれば2回分が一度に入るので便利です。量も間違えることがありません。全国各地の講演会参加者には、他にある最良の方法を伝授します。是非御参加下さい。
 匂いが戻れば中止する、無くなれば戻るまで再開するのです。これだけに頼ると全身性ステロイドのプレドニンに頼るのと同じようなものです。アレルギー性鼻炎を改善するために、抗ヒスタミン剤や抗ロイコトリエン受容拮抗薬の内服、鼻への吸入ステロイド剤などもベースに使った方がよりベターでありましょう。
 このように喘息の合併症もよくするために、この欄は役立ってきました。私は耳鼻科の専門医ではありませんが、喘息の人の合併症をよくするために、第7回成人喘息ゼミで講演を頂いた伊藤先生や塚田先生と連絡を取りながら情報提供しています。
 喘息や合併症をよくするためには、「人生をよくする」ということが根本にあります。梶井先生の講演を含めた第7回ゼミのDVDやビデオの申込みが5人ほどあるそうです。全国各地の講演会では日野原先生が医学会で講演されているビデオ(一般のテレビでは見れない)を見て頂きます。人生をよくするステップに役立てる10月にしましょう。

201. 秋の3段飛び・11月はジャンプ

喘息をよくし治すために(201)
喘息大学学長 清水 巍

 いよいよ秋も深まってまいりました。喘息克服月間の最終月を迎えることになりました。大きくジャンプして、喘息も鼻や耳の合併症も、余病もしっかり克服し、人生も飛躍させる月としましょう。
 喘息や鼻、耳、アレルギー性肉芽腫性血管炎(グーグルやヤフーのインターネット検索エンジンで、この言葉を入れて検索すると沢山の情報が得られます。医学的新情報で一部紹介)克服のための大きなジャンプやチャンスは3つあります。
 第1は、11月12日(水)に行われる喘息デーの電話・FAX・メール相談を利用するということです。この「わかば」が到着したり見るということに間に合うかどうかわかりませんが、8月号、9月号の「わかば」でお知らせをしてきました。詳細はそれをご覧下さい。成人は午前、小児は午後です。時間を取ってありますのでゆっくりできるのです。
 第2は、11月19日(水)に開催される「成人喘息レベルアップ学習会」に参加申し込みをされ、参加することです。少人数しか入れませんので、必ず事前に申し込みをなさって下さい。
 第3は、上記の前後にある(火)午前、(木)午前の外来を受診して相談する、インターネットの喘息Q&Aを利用する、11月16日(日)の福島県郡山市で開催される「成人喘息県民講座」に参加して、私をつかまえ個別相談を求める、などです。
 この11月号の「わかば」でもジャンプを誘導してくれという意見もあるでしょう。「鼻に匂いを回復する」という問題は、6月号から毎号情報を提供してきました。今号はジャンプの情報を提供しましょう。
 下に、学会・研究会への抄録を掲載しました。匂いに障害を持つ人が、城北診療所外来通院の成人喘息患者さんの中で37.5%もおられたのです。約4割弱もおられたのです。

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 30年間全く匂いを感じなかったという人がアンケート調査の結果、おられることが分かりました。その人にベルベゾロン液(鼻や耳用のステロイド液)の使用をお勧めしました。その人はマイリー点鼻薬の空(カラ)になった点鼻噴霧器(写真)があったので、中を洗ってその容器にベルベゾロン液(リンデロン液でもよい)を入れ、座ったままシュッとやったというのです。私の説明した「天蓋」に薬液が到達するのを感じたそうです。その1回の鼻吸入だけで、「匂い」がしだしました。奇跡が起こり始めました。続けているうちに、30年前に完全に戻ったというのです。「匂いが戻ったら、好き嫌いな食べ物も30年前に戻った」と笑っておられました。匂いが全くしなかったので、何でもパクパク食べていたのです。「どっちがいい?」と私は聞いてみました。「先生、匂いがあったら味も分かるし、美味しいと分かるし、幸せになりました」と語っておられました。
 私は「点鼻薬容器の廃物利用法」を教えてもらったのです。

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 これら点鼻薬は、医療機関で保険でもらうことができます。一番左がメインター、次がマイリー、その右がフルナーゼ、最後がそのジェネリックです。どれでもいいのですが、マイリーは城北診療所では臨時採用品です。しかし、それが何回も出るので、それをくれという人が何人かいました。今回調べてわかったのはノズルが細いということでした。何回も多く出るはずです。菜の花薬局長も「分解して初めて分かった」と言っていました。誰もそこまで見ずに患者さんに渡していたのです。さすがに菜の花には指導用の見本は置いてあり、「それで使用法は説明している」とのことでした。
 このように「患者さんをよくしようという医師と「よりよくなろう」という患者さんの共同の営みが進歩を着実に作り出すのです。左の抄録も発表によって反響が広がり、救われる人も多くなるでありましょう。
 このような「共同の営み」「二人三脚」こそ、大きなジャンプをもたらします。
人生をよりよく生きるという点でも、このような救い合いは役立つのではないでしょうか。皆様の飛躍を願っています。

202. 第16回喘息デー・喘息克服月間と2008年のまとめ

喘息をよくし治すために(202)
喘息大学学長 清水 巍

 冬型の気圧配置が日本列島を占めるようになり、本格的な冬が始まりました。まず「第16回喘息デー・喘息克服月間のまとめ」をここに掲載します。

Ⅰ)全国各地の取り組み
①  9月28日(日)石川県喘息友の会/加南支部・金沢支部総会とバーベキュー
②   〃     埼玉わっくら/秋の交流会・秩父路とぶどう狩り
③ 10月 5日(日)関西地区喘息患者の集い(大阪 此花会館・梅香殿)
④   〃     わかさぎ会・ぶどうの会・ほむらの会/喘息デー
⑤ 10月18日(土)北関東喘息友の会/喘息教室2008(宇都宮)
⑥ 10月19日(日)第5回関東喘息患者交流会(東京王子 北とぴあ)
⑦ 11月 2日(日)新潟ゆきつばきの会/新潟喘息講演会(柏崎市)
⑧ 11月 8日(土)福岡秋桜クラブ/九州・中国地区喘息患者の集い(福岡)
⑨ 11月16日(日)福島きびたき会/成人喘息県民講座
⑩ 11月19日(水)金沢城北病院/レベルアップ学習会(午前・午後・夜間)
⑪ 11月24日(月)ほむらの会/ほむら医療講演会(土岐市セラトピア)
⑫ 11月30日(日)茨城野バラの会/市民講座喘息教室(県南生涯学習センター)
全国各地で行われたことになります。新しい人の参加、懐かしい人々との再会、有意義な講演、楽しい行事は来年も行うべく、早めに準備を開始しましょう。お世話下さった皆様、有難うございました。

Ⅱ)喘息患者のアンケート
今年度は特別に「喘息患者の生活・環境・意識調査2008」がありました。日本アレルギー協会理事長、東京大学名誉教授・宮本昭正先生が代表世話人となり、日喘連を含む日本の5つの患者団体が協力して取り組むという画期的なものでした。
約2000名のアンケートが調査本部で集計されたそうです。そのうち「わかば会」関係が804名、日喘連関係が284名でした。50%以上の協力ができたということですから、責任を果たすことができました。封筒に名前と住所を明記した人にはお礼の品が届くそうです。ひとり1品です。
統計の結果発表は日本の史上初めてのもので、大きな意味があることです。この点でもアンケートを書いて送って下さった皆様、発送・集計にご協力下さった皆様に厚く御礼を申し上げます。

Ⅲ)喘息デー相談活動
10月22日(水)と11月12日(水)の2日間、成人喘息と小児喘息を午前と午後に分けて実施しました。成人喘息は合計22件で昨年より多くなりました。小児喘息は合計5件の電話相談があったそうです。
HP「喘息を克服するためのホームページです」に赤字で相談当日にご案内を徳田会長が明記して下ったのを見て、相談された人もいました。宣伝も大事ですが、マスコミの報道が無い中では、今の日本の状況ではこのようなものでありましょう。各地交流会の前に来年度は一度、設定します。そうすれば、各地の交流会をご案内・誘導できるからです。

Ⅳ)その他
ホームページ上に会員掲示板ができて、支え合い・交流が起こっていること、喘息ホットニュースで熱心な情報提供が行われたこと、鼻や耳の問題、アレルギー性肉芽腫性血管炎について情報を掲載したこと、東京で成人喘息医療費無料制度ができたことなど、今年度のまとめに通じますが、大いに役立ちました。来年度も第17回喘息デー・喘息克服月間を行う予定です。

「2008年のまとめ」
2008年の1月には、日本が打ち上げた人工衛星「かぐや」が月面から地球が昇ってくる映像を送ってきました。人類が月を眺めることはできたにしても、月から地球を眺めることなど、昔の人は想像できたでしょうか。

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今年の11月には、福岡の皆さんのおかげで上のパンフレットの歴史公園を訪れることができました。弥生時代の壮大な遺跡に立って、弥生時代からの「人のロマンや苦労、営み」を思いました。それに続く時代を生きている私たちは「何をしなければならないのか」考える年となりました。
 例えば、金融危機、世界同時経済危機、不況、人類は何度同じような過ちをくり返せば、よい世の中を作れるのでしょうか。ヘッジハンドとか新自由主義とか、儲けばかり追求する人々の陰で庶民が泣いているという現状ではないでしょうか。
 偽装、犯罪、金さえ手に入ればよいのか、モラルはどうなっているのか、嘆かわしい現状を何とかしたい、それが今年のまとめです。
 喘息は、薬の進歩、私たちの活動もあり、克服が容易になってきました。しかし、「匂い消失」「好酸球性中耳炎」など合併症は増えています。そういう合併症や癌、成人病などに困らなくてよい年に「来年をしていく」「人生を輝かせ、良い政治、世の中を作る」それが大きな歴史の流れの中にある私たちの「つとめ」ではないでしょうか。