喘息をよくし治すために(2007)

179. 2007年(猪年)の展開

喘息をよくし治すために(179)
喘息大学学長 清水 巍

 新年、あけましておめでとうございます。犬年が去って、猪の年となりました。年の始めだけかもしれませんが、犬よりは勢いをつけて過ごそうかなどと考えさせてくれる年始ですね。
 毎年の、恒例でありますが、野口正路さんの「新年に贈る言葉」(土曜美術社出版販売)の詩から引用紹介を始めることにしましょう。

透明なカーテンの
むこうは
初めての陽を浴びる
山と河と海と空です
さわやかな風が
樹々にそよいでいて
そこを通ると
美しい心の風景のように
やさしい人影や
なつかしい街並みがあって
未来への路がずっと
ひらけているようです
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 年の始めに新しい1日が始まり、新しい月が過ぎ、新しい世界が過ぎて行きます。色々な問題はありますが、野口さんの詩にあるような道を、若葉が街路樹や山や川を彩るような道を未来に向かって、わかば会の皆様と歩んで行くことをまず展望したいと思います。
 石川県喘息友の会総会と新年会は、今年度のスタートを切る大事な出発点です。今年は年末に次のページのような賞を受賞しました。その祝賀会も兼ねて頂く予定です。「総会に花を添えるものである」と金沢支部長の宮岸さんが喜んで下さいました。わかば会・会長の徳田さんには、真っ先に受賞の報をお知らせしましたが、「ご自分で研修先を探し、手紙を書いて実現して36年後に頂いた賞ですから、何よりも嬉しいでしょうね。おめでとうございます」と祝って下さいました。
 この賞はささやかなものではありますが、喘息大学やわかば会の皆様の奮斗があればこそ頂けたものです。それをお祝いすることは、自分達が自分達のお祝いをすることではないでしょうか。呼吸器をやっている全国の先生方のお祝いも沢山届きました。祝賀会の席上で発表します。

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今年は上のような年賀状を出しました。

 残念なこともありました。10月頃に石川県に戻ってくるはずだった孫が、お父さんの仕事の関係で延期になったのです。孫と一緒に暮らせるものと楽しみにしていたのに、思いがけなく延期になってしまいました。よいことばかりが続くわけではありません。4月になるのか、もっと先になるのかハッキリしないのです。お父さんの仕事が重要視される事情だからだそうなので、爺があれこれ言うわけにはいきません。でも、いつか戻ってくる可能性があるのですから、良しとしなければならないでありましょう。
 先の受賞の翌日にも孫もうでに行ってきました。クリスマスプレゼントに電話のオモチャを持って行きました。「電話の何たるか」がよく分かっていないようだったからです。アンパンマンの電話機と携帯TELのオモチャなのですが、夢中になっていました。しかし、それで分かるようになるのかどうか展望はありません。しかし、いつか分かるでありましょう。
「はえば立て 立てば歩めの 爺心」
 そんな言葉がありました。ま、共通しています。歩いている昨年5月の写真を娘の許可を得て、年賀状で使いました。金沢へ帰ってきたら、尻ばかり追いかけることになるのかもしれません。
 いずれにせよ、ゆくゆくは夢が少しずつではあっても実現するでしょう。喘息克服の夢も今年は飛躍的に前進するでありましょう。セレベントとフルタイドの合剤登場が予想されるからです。そのビッグニュースを「わかば」と共に、今年もいち早く把み、試して下さい。
 皆様の「喘息をよくした工夫話」を第6回成人喘息ゼミでは語って頂けるようにしました。鈴木秀子先生の素晴らしいお話もあります。皆さんの夢を確実に実現できる「猪年」にしましょう。

180. ピンチをチャンスに

喘息をよくし治すために(180)
喘息大学学長 清水 巍

 年賀状の「お年玉」当選数字発表が、1月14日に北九州市で行われました。これが済む頃に「左義長」が行われ、松の内が終わって、2007年が本格的に始動します。皆様のお正月はいかがだったでしょうか。
 この年賀状の季節が来ると、「欠礼」のハガキの年々の増加が気になるのは私だけでしょうか。従って出す枚数も減ってくるし、出せない人も増えてくるためか、年々来る数も減ってくる傾向にありました。今年は増加に転じたのです。色々な関係で「人と人とのつながり」が増えたり、深まったのが一因です。もう1つは「いつも下さる人にだけは出す」という消極的姿勢・習慣を止めて、お世話になった方々、鮎人会の仲間、色々と教わった患者さんに積極的に「1年間の御礼」の意味を込めて出しました。返事を下さらない人もいますが、当然返ってくる賀状が多くなりました。こちらが積極姿勢に転ずることによって、「年々、少なくなる傾向」を克服する道が見つかったのです。ピンチがチャンスとなりました。
 正月にNHKテレビで日野原重明さんの番組が放映されていました。1911年のお生まれですから、今年の誕生日をお迎えになると96歳になられます。お元気で色々な事に挑戦しておられました。踊りも踊っておられましたが、喘息大学夕食交流会での私と同じで、他人を見ながらの踊りでチグハグでありました。しかし、昨年1年間の出版物は25冊、連載していらっしゃるのが8本、毎週のものもあるとか、ビックリです。上には上があるものですね。昨年はアフリカのガボンという国に、シュヴァイツァーの跡を訪ね、中国、台湾、アメリカと4カ国を回られたそうです。
 誰でもができることではないでしょうが、高齢というピンチをチャンスにして活躍されている見本です。1970年の60歳の時に「よど号」ハイジャック事件というピンチに出会い、以来人生観を変えて生きてこられました。若い時に肺結核で留年し斗病されたピンチも、今日へのチャンス・バネになっておられるようです。「挑戦」と「交流」を信条に医師の見本としても頑張っておられます。1月号には孫の写真を久々に右のページに紹介しました。今号は日野原先生のお写真を掲載しました。孫は「希望」であり、日野原先生は私の「目標」です。
 「清水先生も日野原先生のように長生きして下さい。そうしたら私は安心です」などと過分な言葉を頂く年に私もなりました。私はビールをよく飲みますし、夏には鮎の友釣りで体を冷やすなど、日野原先生とは大違いで不摂生の極みですから、とても90までは無理でしょう。日野原さんでも96歳まで生きるとは思ってなかったでしょうが、96まで活躍できる現実を見せてくれているのですから、私も皆さんも御一緒に年はとっても、前向きに生きて行こうではありませんか。

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 日野原先生にあやかって「ぜんそく」の本にサインしてきた文字を掲載しました。どこから見ても下手くそな字ですが、どうして下手のまま来たのかは、5月に出る新しい本に書きました。
 私の初心は「喘息の人をよくする、治していく」ことです。虎の門病院呼吸器科の奨励賞・本間賞は「これからも頑張るように」という賞であります。1月28日には沢山の人に祝って頂きました。初心から色々と・・・があって、実現したということではなく、その実現に向かって「歩みを進める」ということだと思います。
 石川県喘息友の会「わかば会」の会員が年々、少しずつ減少しているのです。亡くなられた人、「高齢になったので読むのを止めます」という人、よくなったのでもう止めるという人、きりつめたいので止めるという人が増えているのです。「喘息が薬物によってコントロールされ、苦しい病気ではなくなった」という喜ばしい時代の変化もあるでしょう。しかし、会員が減るということは「わかば会」にとってピンチであることに変わりはありません。フルタイドとセレベントの合剤は6月に出るのではと言われております。一層、コントロールはよくなるでしょう。
 「好酸球性中耳炎」、「鼻の匂いの消失・鼻炎の悪化」、「アレルギー性肉芽腫性血管炎」などの合併症克服に、日本のトップを走って勇気づける「わかば会」を目指します。それだけでなく、喘息をさらによくコントロールし、よりよく生きる「わかば会」、女性なら森光子さんや岸恵子さんのように生き、美しく活躍できる会にしようではありませんか。ピンチをチャンスにして乗り越えてきたから、先人の今日はあるのです。「わかば会」も会員増加に転じましょう。次ページのゼミ申し込みも注目!!
 会員更新の時期です。今年も御一緒に頑張りましょう。更新をお願い致します。

181. 月進・年歩で飛躍を

喘息をよくし治すために(181)
喘息大学学長 清水 巍

 日本列島が春を迎えようとしています。金沢も殆ど雪の無い冬を過ごし、毎年恒例であった「雪スカシ」を一度もすることなく過ごしました。「楽でよかった」「暖冬でカゼも引かずよかった」というのが、外来での挨拶でしたが、こんな冬を過ごした後の春や夏、そして秋はどうなるのでしょうか。不安がよぎります。
 地球温暖化を止め、車社会に反省を促し、喘息患者さんを大気汚染から救うためにも、次ページに「東京大気汚染訴訟」の記事を許可を得て紹介しました。3月が山場だそうです。ここでの勝利の突破口は全国に影響を及ぼしますし、月進・年歩を切り開きます。
 喘息患者さんにお知らせしたいことが2つあります。第1は、フルタイド・ディスカスやパルミコートでよくなる人は良くなったのですが、まだ十分でない人はキュバールでよくなる可能性があります。もっとよくなる人もいるかもしれません。

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 粒子が細かくて細い気管支に到達しやすいのです。そこが気道の炎症の主座になっている人の場合はキュバールでないと効かないのです。フルタイドやパルミコートが良く効いたという人は、炎症の主座が中くらいの気管支にある人なのです。粉ですから、そこに主に到達・沈着します。
 以前に「ザルですくえるものはすくえるけれども、水などは漏ってしまうので、水をすくおうと思えばザルではなく、別の容器が必要である」という話をしたことがあります。違う治療法を試すことで、これまでよくならなかった人が、見違えるようによくなる人は存在するのです。
 キュバールでよくなった人の体験を第6回成人喘息ゼミナール・第3回喘息大学交流会で何人かに語って頂きます。テイジンが「シクレソニド」という1日1回でよいステロイド吸入薬を開発しているそうですが、嗄声の副作用は非常に少ないとされています。声楽家には待たれる薬であると言えましょう。「わかば会員」更新で新しい確実な情報を得ながら、よりよい生活を送るのがこれからの時代です。
 肺気腫を合併しているような喘息の人にはスピリーバがよく効きます。これも「違ったザルであり、肺気腫の人をすくえる(救える)ザル・治療法」と言えます。但し、薬には副作用があります。全日本民医連新聞のモニター副作用報告の記事も紹介しました。第1に重要なことは、月進・年歩の薬の使い方であるということです。
 第2に「よい経験交流や情報を得て、よりよく生きる」ことが大切だ、ということであります。昨年秋に行われた「成人喘息レベルアップ講習会」に参加して以来、一度も点滴をしなくても良いようになったという人が何人もおられます。
 好酸球性中耳炎、喉の嗄声、匂いの消失、アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群とも言う)の病気がよくなったという人も何人もおられます。このような人達の体験交流会を持ったり、体験発表の機会を持つというのは、日本広しと言えど第6回成人喘息ゼミナール・第3回喘息大学同窓会しか無いのです。そういう話を聞くことは、もうなってしまった人がよくなるために役立つだけではなく、「軽い人がそうなってしまうこと」を予防したり、未然に防ぐことに役立つのです。この機会を活用しましょう。
 「喘息という病気をバネに、素晴らしい人生を手に入れよう」というのが、喘息大学の目的であったし、わかば会の存在意義です。よく例を挙げる日野原重明さんは、腎炎を子どもの頃にして、音楽の芽を育てることに継ながったし、肺結核を病んで患者学を自ら学ぶことによって「よい医師になることができた」、よど号ハイジャック事件で「もうダメか」と思う体験をして「人生観が変わり今日がある」と語っておられます。女性の心理学者・文学者として最も素晴らしいと私が評価し尊敬する鈴木秀子先生は下の本で次のように語っておられます。

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 このような先生を金沢にお迎えし、話を聞くことができるので、参加者に「人生最大のインパクト」を与えてくれる機会となるでありましょう。
 4月半ば過ぎに「孫が金沢に戻る」(但し近くに別に住む)と同じように嬉しいこととして、5月に鈴木秀子先生をお迎えするつもりです。

182. 大きな移り変わりに

喘息をよくし治すために(182)
喘息大学学長 清水 巍

 暖かな春を迎えることになりました。4月になれば、それは毎年のことです。しかし、今年は暖冬の次の春です。ただの暖冬ではなく、地球温暖化という大きな移り変わりの続く上での春です。
 金沢は雪の降ることで有名な所ですが、今年は1回しか雪スカシ(道路の雪を捨てること)をしませんでした。楽でよかったのですが、心配でもありました。桜が早く咲き、この調子で温暖化が進めば春は暑くなり、夏は猛暑・酷暑が続くかもしれません。日照時間が長くなれば、今年でさえ杉花粉症が北陸ではひどかった(城北や寺井病院で杉花粉の減感作を受けていた人は軽く済んだ)のに、来年はとんでもない苦痛を味わうのかもしれません。地球の砂漠化が進むのかもしれません。能登半島には大きな地震が来てしまいました。
 環境が大きな移り変わりにあるように、時代にも大きな変化が来ようとしています。わかばに連載されている「国境の街・黒河からの逃避行」の登場された宮岸清衛さんのお母様、和枝様が93歳の生涯を3月17日の早朝に閉じられました。戦前、戦中、戦後を立派に生き抜かれたことに敬意を表し、私は弔電を打ち、お参りに行ってきました。憲法9条を変えるために「国民投票法案」が審議され、国会を通過する危険が出てきています。時代も大きな移り変わりに直面する春であり4月です。
 喘息の治療も新しい時代に入ろうとしています。セレベント(青色の長時間有効な気管支拡張剤)とフルタイド(赤と橙色のステロイド吸入薬)の合剤がいよいよ厚労省の認可を得るかもしれないと言われています。4月に認可されれば、6月頃に保険診療上で使えるようになるでしょう。欧米では大きな成果を上げているとされているだけに、注目されます。
 3月号で、「キュバール」の特徴と効果について解説しました。その余韻もさめやらぬうちに、テイジンから「シクレソニド」という1日1回でよい吸入薬が出て、それが認可されるかもしれないのです。嗄声が起きにくく、効果は抜群と期待されています。ステロイド吸入薬だけは、戦国時代に逆戻りするという大きな移り変わりの4月になるのかもしれません。
喘息のコントロールはよくなるにしても「鼻の匂いが無くなった」、好酸球性中耳炎などによって「耳が聞こえにくくなった」、「アレルギー性肉芽腫性血管炎(チヤーグ・ストラウス症候群)」を発病したなどという大きな移り変わりが起こりやすくなっています。
 それらの「大きな移り変わり」の中で、よりよく生きていく指針を指し示すのが、この「わかば」の役割です。保険証が「ICカード」機能を搭載し、過去の病歴や受診内容を患者や医師がパソコンで確認できる「健康ITカード」が導入される方向が決まりました。2012年がメドになるということですので、あと5年くらいの間にということになるでしょう。病院を変える度に同じことを話さなくてもよい、聞かなくてもよい、同じ検査を何回も受けなくてよいなどの便利さが出現します。これは喜んでいいことでありましょう。
 その実現までにお勧めしているのが、薬の処方箋や投薬記録、薬局でくれる投薬の写真の用紙、検査記録、結果報告を保管しておくことです。引き出しか箱、あるいはファイルに日付順に積み上げていくのです。番号を書いておくといいでしょう。野口悠紀雄さんが「超整理法」を本にしておられましたが、保管はそれでよいのです。但し、診察時に全部を持ってくるのはやめて下さい。探すのが大変だからです。必要なものを取り出して持参するようにしましょう。
 私の家の書斎も、病院の「石川民医連名誉会長室」も、患者会事務所も本や書籍・ビデオで溢れ、困るようになってきました。「患者さんに見せる機会があるかも」とビデオに録画するのですが、どのビデオのどの部分に入っているのか探すのが厄介になってきました。それでハードディスク内蔵(1テラバイト=500ギガバイトの倍)のを買うことにし、デジカメの写真も繋げば同じのは自動的に除いて貯めれるようにしました。DVDの世界へ移動です。

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 大きな移り変わりの中でどうのように上手に、よりよく生きるのか、交流や学びが大切になっています。第6回成人喘息ゼミでの「私の工夫」は楽しみです。鈴木秀子先生から右のようなおハガキを頂いたのは昨年の春です。そして、今年の御講演が実現しました。「幸せの発信地」というテーマで1時間半の御講演を頂きます。30分の質疑応答があります。著書も沢山販売されます。「どのように生きあうべきか」示唆に富むことでありましょう。このように、よいこともあります。
 また、水が温かいので鮎が早く遡上して大きくなるかもしれません。孫が来る4月でもあります。色々あっても新年度、大きな移り変わりがあってもこの1年、共によりよく過ごしてまいりましょう。

183. 喘息ベストの治療2007

喘息をよくし治すために(183)
喘息大学学長 清水 巍

 能登半島地震で家が半壊し、輪島市民病院に入院された門前のひとり暮らし喘息女性の方がおられました。主治医の先生からお電話があり、「金沢にいる娘さんも御本人も城北病院に行きたいと言っています。受け入れてもらえますか?」とのことでした。早速OKして、来て頂きました。昔、城北病院に入院されたことがあり、私が主治医でよくなったのを思い出されたのでした。今回もよくなられ、退院されました。
 モスクワから日本に帰省していた他県の人や、フランスのナンシー市に住んでいる女性がインターネットで調べ、城北診療所を受診されました。いずれの方も2007年時点での「ベストの治療」を知って、よくなり外国に出発されることになりました。
 近くの人も外国に住む人も薬物療法の点では「ベストの治療」を受けることができます。インターネットや「わかば」で最新情報を受け取り、新しいよい情報を知ることができます。インターネットでは私たちのHPから「喘息ホットニュース」に飛んだり、それを「お気に入り」に入れて毎日見れば、毎日更新されている情報を広く得ることができます。この会報「わかば」では、それ以上の貴重なニュース(ここだけと選び抜かれた情報)が得られます。
 それはそれで素晴らしいことですが、総合的な「ベストな治療」ということになれば、第6回成人喘息ゼミナール・喘息大学同窓会に参加し、生で体験することです。
 4月号の表紙は金沢駅の鼓門(つづみもん)、5月号の表紙は浅野川友禅流し鯉のぼりのステキな写真が、新会員とゼミ参加者のために飾られました。それはそれで素晴らしいと思うのですが、実際に見ることができれば感動はまた格別ではないでしょうか。それと同じことで、生の体験や感動こそが、人をより大き  
く変えるのです。費用と時間、手間をかけるからこそ、最高、ベストとなるのです。

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 上の写真は、金沢で大正琴の師範をされ教室を主宰されている、西孝子先生が提供して下さった写真のひとつです。「じょんから節」「金沢望郷歌」「コーヒー・ルナンバ」を演奏して頂きますが、喘息や私たちとも色々と深い連ながりもあり、ただの演奏・オープニングではないはずです。金沢の文化と先生の思いが込められるでありましょう。それが、より感動を生み出すのです。
 「私の工夫」(患者さん)では5人の人に体験発表をして頂きます。1人10分です。
1.点滴治療からおさらばした私の体験
2.アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)を克服した私の体験  3.好酸球性中耳炎を改善した私の体験
4.吸入療法の工夫で著効
5.キュービストカラーセラピーの体験
選び抜かれた人たちですし、もうお願いはしてありますから、力を込めた貴重な体験を聞くことができるでありましょう。
 私の講演は「4月承認・6月発売のアドエア、オルベスコ(次ページ参照)について、本邦初の使用注意や効果」を含む解説や本間賞に関連したDVDの紹介」です。受講者は最新の情報を日本で最も早く得ることになるでありましょう。
 体験交流会は受講者90名、スタッフを含めて100名以上となりますが、血管炎や好酸球中耳炎を合併した人たちだけのグループとか、様々な工夫や特色を持って運営されます。
 夕食交流会は「ぜんそく克服物語」(悠飛社)の出版記念を兼ねた都ホテルでの宴会です。北海道の旭川から南は奄美大島からの参加者ですから、お国自慢も飛び出すかもしれません。2次会は都ホテルでの和室、アイボリーコーストの2コースが準備されています。
 翌日の目玉は「幸せ発信地」という鈴木秀子先生の特別講演です。1時間半の講演というのは喘息大学24年間の中でも一度も無かったことです。しかも30分の質疑応答で合計2時間、これひとつとっても、いかに私が力を入れているかお分かり頂けるでありましょう。
 前後の診察や検査希望者には電話での連絡は済ませました。個別相談も役に立つはずです。このような中味と実体験だからこそ、喘息ベストの治療と断言できるのです。
 生がよいということでは、先の新著も手にとって読んで頂いてこそです。孫がおかげさまで金沢に帰って来ました。DVDやCD、写真より、孫の生は嬉しさが違いますね。鮎も放流されました。(下写真)

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 「それが言いたいがための伏線?」と冷やかされるかもしれません。孫も宝、患者さんも宝、スタッフやゼミも宝です。大切に磨きあって生きたいのです。

184. 第6回成人喘息ゼミを終えて

喘息をよくし治すために(184)
喘息大学学長 清水 巍

 第6回成人喘息ゼミナールを・第3回喘息大学同窓会を無事に終えることができました。御参加頂いた皆様、蔭ながら応援をして下さった皆様、有難うございました。
 外来でもゼミの最中でも、能登半島地震の義援金への御協力を誠に有難うございました。新潟の「ゆきつばきの会」からは、ほぼ全員から多額の義援金が寄せられてきました。それに関する記事は後に掲載されております。5月いっぱいで締め切り、6月中には能登の激甚指定地区(3市3町のわかば会員)の方々にお送りします。「困った時は相身互いとの兵庫・淡路大震災の時以来の精神」を今後も大事にして参ります。御協力下さった皆様、有難うございました。もう地震は御免ですね。
 ゼミの報告はされていますので、私は今後の参考のために主宰者としての反省と今後の展開について提案をさせて頂きます。最終的には職員グループの反省会、6月30日(土)に開催される役員会の反省会で総括され、今後への方針が検討されます。

① 例えば前泊交流会があれば参加するか?などの希望を取ることです。奄美大島から石田さんが前泊して参加されるという話から、15人ほどが前泊交流会で東郭「螢屋」に集まりました。毎年やるかどうかは別として、あれば参加を希望するかどうか、希望を聞いておくことがあってもよいでしょう。前泊の人は夕食をとるのです。

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② 体験交流会ではアレルギー性肉芽腫性血管炎、好酸球性中耳炎、アスピリ 
ン喘息、比較的若い人のグループを設けました。事前に参加希望をとることもよいかもしれません。鼻の合併症、糖尿病の合併症などの交流会があった方がよいかもしれませんし、事前に各自の合併症を記入してもらうことを考えたいと思います。
③「初めての人は個別相談を」と勧めるのですが、毎年しないで終わる人が少数出ます。初めての人は時間指定をこちらからして、したくなければ取消すシステムにした方がよいかもしれません。
その他、数々の改善事項を相談し、具体化します。喘息大学が終わってから4年という枠がとれ、毎年楽しみに参加される人が増えています。より充実したものにし、地元の人も遠くの人も、「参加できてよかった」と言えるものを目指しましょう。

 特別講演の「幸せ発信地」鈴木秀子先生のお話は感動的でした。これだけは、1000円を払えば参加してもよいということにしたのですが、会場の都合で広く呼びかけはできませんでした。来年は日野原重明さん(無理です)、西野皓三さんをなどという声が上がりました。よい人を探します。
 私の記念講演では新薬のオルベスコ(1日1回でよい)、アドエア(セレベント+フルタイドの合剤)について詳しくレジメやパワーポイント(スライドのようにパソコンで映写)で紹介しました。患者さんに向けては、日本で初めての総合的で懇切な講演となりました。早ければ6月1日、遅ければ6月15日頃に保険収載されます。城北診では薬事委員会の許可が得られた後に採用し、更に試用3ヶ月後に広く使うかどうかが決められます。
 患者さんへの情報としては後に4ページに渡って資料をつけました。両方とも期待できる可能性が濃厚です。シンビコート(フォルモテロール+パルミコート)の話もしました。このフォルモテロールは、サルタノールやメプチンエアー、ストメリンDのように即効性があると同時に、セレベントのように長時間効くのです。これをメプチンエアーのように使用していれば、吸入ステロイドが入り、メプチンエアーを使わなくてよくなるのです。
 こんな時代に入るのですから、よく勉強することが必要です。この「わかば」、各地の中間交流会的な講演会は、あった方がよいし、重要な意味を持つのではないでしょうか。9、10、11月の喘息発作好発期間の「第15回喘息デー・喘息克服月間」は15年という記念すべき年にもあたりますので、充実した取組にしたいものです。

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 世界的にも日本全体でもガイドラインの策定と紹介が進んできています。上の2冊の本はこの5月に相次いで発刊されたものです。喘息に関しては、今後の10年間で「喘息ケアは飛躍的に進歩し、全ての喘息患者によりよいケアが提供できると期待される」と冒頭に記されています。5歳以下の小児喘息についても要旨がつきました。コントロールレベルについては次号で紹介します。「GOLD」はタバコを主因とする肺気腫などの基準です。タバコを吸う喘息の人や慢性・重症の場合に「喘息と肺気腫が合併する人がある」ことが明記されました。
 「ぜんそく克服物語」という新著は好評です。ノウハウ本をと違って「一気に読める」「よい先生に診てもらっていると初めてわかった」などの感想が寄せられています。この物語を「これからも皆様と共に継続したい」ということだけ申し上げておきます。まだの人は読んで頂けると有難いです。

185. 第19回日本アレルギー学会春季臨床大会に関連して

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喘息大学学長 清水 巍

 第6回成人喘息ゼミナールの「記念講演」で私は参加者に、それまでの医学的最新情報をお伝えしました。感想文を見ますと、最高数の人が「ためになった」と○印をつけて下さいました。「感動した」とか「エキサイトした感想」の書き込みが多かったのは鈴木秀子先生の「幸せの発信地」という特別講演でした。両企画がそれぞれの目標を達成したと思います。
 「私の工夫」という患者さんの発表も好評でした。右ページ下にあるニッカイのテープで参加できなかった人のために、録音に入れて受け取れるよう前号で紹介しました。今号の「第246回講座」も希望の方はテープを注文すれば受け取れます。

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 上の学会に参加してきました。そこでの新情報を「わかば」会員の皆様に紹介します。

①好酸球性中耳炎について
 ようやく発表が多くなってきました。好酸球の「ワンダリング」(あちこちに出没する)という概念があり、ステロイド吸入によって喘息がコントロールされるようになってから、この病気が出てきたと明解に指摘されました。私がこれまでの拙著で「モグラたたき」と表現した事と同じ概念です。どちらが分かりやすいかは明らかでありましょう。
 今回、新しい点は3つです。耳管という咽頭と中耳をつなぐ管に障害を持っている人が発症しやすい、鼻の治療や管理を怠っていると発症しやすいという指摘がありました。2つ目には、ケナコルトを中耳に局所的に投与をするとよいのですが、その治療を行ってくれる先生は以下の所であることがわかりました。
 東北・仙台日赤医療センター・松谷幸子先生、関東・自治医大大宮医療センター・飯野ゆき子先生、北陸・金沢大医学部・伊藤真人先生、関西・兵庫医科大・三代康雄先生、本号9ページの後藤先生です。受診される時は「清水先生に紹介された」と申し出て下さい。
 抗アレルギー剤が効いたという人もいるという発表もありました。これらの情報は「わかば」ならではのものです。

②アスピリン喘息について
 まちがいなくアスピリン喘息の人がやがて、それを使っても大丈夫になっていたという症例報告がありました。私たちのところでも横浜の池田信道さん
わかば会金沢支部長宮岸清衛さん(毎号の満州の記事の著者)など、かつて間
違いなく酸性解熱錠病剤喘息だった人が、それを使っても大丈夫になっています。昔、リンゴやメロンを半分食べても発作になったのに、今は幾つ食べても平気という人沢山います。このように治る人もいるのです。

③オルベスコ、アドエアなどの合剤
 これらが効果があるという背景には、ちゃんと吸入して必要なとこに薬が届く、細い気管支や肺にも届くと有効になる人がいることを証明するものです。ステロイド吸入の新薬も含めた値段表を次ページに紹介しました。これも「わかば」ならではのものです。使ってもらえる医療機関にかかっている人は試してもらうとよいでしょう。
 城北病院などにかかっている人は8月に県連薬事委員会、その後3ヶ月後のサンプル試用、その後に一般解禁という、いつものパターン・制約がありますので、キュバール(ベクロメタゾン)を試して下さい。やがて新薬との比較が可能となります。
 メプチンエアーやストメリンDなどの気管支拡張剤を常時使う人は「コントロール不十分の人」と学会で言われる時代となったのです。但し、難治性・重症の患者さんには学会も手こずっています。成人喘息ゼミ、わかば会員になる、各地の講演会に参加して交流するなどを実践して、難治性・重症の患者さんもよりよくなって頂きたいものです。

 左のページに学会の小冊子を掲載しました。先生方も一生懸命に努力をされているということをお伝えしたいからです。しかし、このような表紙や冊子は「医師や参加者のためのものであるから、何故、患者さんに紹介する必要があるのか?」と患者さんと学会を区別する意見が根強くあるのです。しかし何のための学会でしょう。医師だけのための学会でしょうか。最終的には「患者さんに役立つ」ことが目標なのではないでしょうか。私はそのように思います。
 好酸球性中耳炎やアスピリン喘息もよくなる時代、アレルギー性肉芽腫性血管炎もよくなり治る人たちを作り出している「わかば会」です。9月、10月、11月の喘息好発季節での第15回喘息デー・喘息克服月間を各地で積極的に準備しましょう。
 一人でもよくなる人を作る、それが喘息患者会の使命ではないでしょうか。

186. 第15回喘息デー・喘息克服月間

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喘息大学学長 清水 巍

 台風4号が九州や太平洋側に大きな被害を及ぼしたり、中越沖地震が再発したりして、自然災害がくり返し起こることを見せつけられました。被害にあわれた皆様方に心からのお見舞いを申し上げる次第です。
 長雨が続いたり、梅雨前線が停滞したり、日照時間の少ない7月でした。こういう天候不順もくり返し起こっております。自然災害が起こるのを見るにつけ、「備えることの大切さ」「環境破壊や地球温暖化を防ぐことの大切さ」が痛感されます。
 せめて身体の変調を防ぐこと、病気にならないようにしたり、悪化しないようにすることも可能にしなければなりません。「最も喘息発作の起きやすい9,10,11月の喘息発作好発期間を上手に乗り切ること」は可能であります。そのために「第15回喘息デー・喘息克服月間」に力を合わせて取り組みます。
 まず第1に、よりよい薬物療法の使用によって快適な毎日を、日本中の喘息の人々が送れるようにすることが大切です。

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 城北診療所に通っておられた重症の喘息患者さんですが、キュバールを1日に4フキ×2、朝晩合計8吸入を使用したところ、上のようにピークフロー値が上昇し安定したのです。毎日がルンルンになりました。このように自分にあった薬物療法を試し、見つければ、快適な日々を送れる時代になりました。
 第2に、色々な知識を持ったり、試すことができないことには、よくなることができません。そのためにこの「わかば」があり、「喘息を克服するためのホームページです!」というサイト、その中の最近アクセスが急増している「喘息ホットニュース」があるのです。それらを知らない人がまだまだ多いということで、「第15回」の取り組みを広く知らせる必要があると思います。
 「ぜんそく克服物語」という拙著はおかげさまで、増刷2刷となりました。その売上金を提供して「私のぜんそく克服物語」作品募集に、喘息デー15周年を記念して15万円を懸賞資金とすることにしたのです。皆様には応募、また宣伝をお願いしたいのです。当たる確率は高いですよ。
 インターネット上でもこれから毎年、継続的に「お知らせ」が可能となるよう「喘息克服月間に協力しています」というバナーを作って頂き、そこをクリックすれば毎年の新しい取組を見れるようにする永続的な協力関係を作り、広げることができればと考えております。
 第3に、文字やバーチャルな(仮想の)情報だけでなく、「生きた交流」こそ人をよくするというのが、私たちの最大の教訓でした。そして、それを実行してきました。全国各地の患者会で大なり小なり、それをやって頂くことができないでしょうか。患者会の無い県では「わかば会員」が集まって食事し交流するだけでも良いと思います。大きくは関東交流会、関西交流会、11月24日の城北診療所での「レベルアップ講習会」が開催されます。

g186_03北国新聞記事より

 第4に、右に河合隼雄先生の死を悼み、北国新聞の紹介記事を掲載しました。臨床心理学の権威として、1999年5月16日の喘息大学20周年記念の時に「人生後半の生き方」という御講演を頂きました。素晴らしい先生でしたが、文化庁長官なられて、あまりにもお忙し過ぎたのではないでしょうか。脳梗塞で倒れ、意識が戻らないままお亡くなりになられました。生前の御厚誼に感謝し、先生の教えを生かしていくことをここに誓うものです。
 79才でやりたいことをやり、燃え尽きて、意識もなく亡くなられたのだから、それ以上言うことはないと考える人もいるでしょう。私は、もっとじっくり、ゆっくりと日本人を観察し、色々な教えを発表して頂きたかったと思う1人です。あまりにも「忙しい」ということや、「全身の健康管理に気をつける」ということについて、教訓や教えを残されたのではないでしょうか。いくら気をつけていても、自然災害と同じく「起こる時は起こる」のかもしれません。しかし、喘息の改善と共に、「健やかに長生きをする。楽しみながら生きて行く」というのを月間の最後の目標として、実現しましょう。
 まだまだ暑い日が続きます。この「わかば」を糧にしつつ、暑い夏を乗り切り、実り多き喘息克服月間を終えようではありませんか。
 研究会に向け、皆様に15~16ページのアンケートをお願いします。

187. 助けあいの行動

喘息をよくし治すために(187)
喘息大学学長 清水 巍

 能登半島地震の義援金を石川県の激甚災害地区3市3町在住わかば会員に頂き、誠に有難うございました。わかば8月号の24ページに御礼や感謝の言葉が掲載されました。それよりも能登の会員の皆様が外来に来られて、直接に感謝の言葉を聞く機会が多々ありました。顔を見て、生の声を聞きますと、ジーンと感謝のお気持ちが伝わってきます。
 「これをゆきつばきの会」の人に送ってほしいと持ってこられた人も沢山いました。新潟ゆきつばきの会の人達が、能登の会員に多額の義援金を寄せられたのを思いますと、わかば会の助けあいの精神と行動は美しいものだなぁと感銘を受けた次第です。このような精神と行動が実際に感じられる「わかば会」であり続けたいものです。
 8月号の「患者教育アンケート」が続々と届いています。送って下さる方の名前を見ますと「思っていて下さるんだな」と分かります。「喘息患者に医学的貴重な情報提供を有難いと感謝している」「行事に参加したいと思っているけど、身体の具合が悪くて」とか、生の声が伝わってくるようでした。そういう人たちに応えて、この欄は役に立つ医学的情報を提供し続けます。
 最近、ある医学雑誌に「沢山ある吸入ステロイド薬の使い分け」という座談会の記事が11ページにもわたって掲載されていました。その全部を紹介すれば、著作権侵害となります。そういうテーマで私が患者さんに解説するのは何も問題はありません。主として9種類のステロイド吸入薬・剤型があるということになると、わかば会員も迷うのではないでのでしょうか。ここで、まとめて情報を整理します。それも「助けあいの行動」の1つです。西暦は市場に出た年です。

① アルデシンやベコタイド 1978年
② 上記の100μg吸入製剤 1994年
③ フルタイド・ディスクヘラー 1998年
④ パルミコート 2002年1月
⑤ フルタイド・ディスカス 2002年2月
⑥ キュバール 2003年3月
⑦ パルミコート懸濁液 2006年9月
⑧ アドエアー 2007年
⑨ オルベスコ 2007年

 その他にフルタイドエアーがありますので、合計10種のステロイド吸入が出て、①のアルデシン、ベコタイドがフロンの関係で使われなくなり、9種類が現在市販されているのです。
 どのような指標で選択すべきでしょうか。第1は効果と副作用です。下の方の薬が新しく出たものですから、改善されている傾向があります。
 吸入粒子が細いということは、奥の方にも到達しやすいので効果が上がる、副作用が喉に対しては少ないということができます。下に粒子の小さい順から表を紹介しました。オルベスコはキュバールとほぼ同じ粒子径の大きさですが、肺に到達して活性化されますので、嗄声の副作用はより少ないのです。

吸入ステロイド薬の平均粒子径(アレルギーの臨床より)g187_01g187_02

 第2は「うまく吸えているかどうか」の問題です。どんなによい薬であっても、気管支や肺に到達しないことには効果が出ません。同様に便利さということも選択肢として重要です。フルタイドは喉嗄れの副作用が多いものの、それだけ気道に対しては強力な抗炎症作用を持っています。セレベントとの合剤であるアドエアーはステロイドの量が少し増加してあるのと、1回の吸入で両方が吸える利点があります。両方を使っている人にとっては手数が半分となりますので、使われる頻度が高まり効果が期待できます。
 第3は値段の問題です。同じクスリとして新薬は3種類までは高い値段がつくけども、4種類目を出すと値段が下がるのだそうです。そういう理由でオルベスコは1日1回の使用でよいということもあり、安くなりました。最高に安いのはパルミコートということになります。値段は私が調べました。次ページ以降参照。
 石川民医連の薬事委員会は、アドエアーの500とオルベスコの200の臨時採用を決定しました。9月から使えることになります。アドエアー希望の人で1日2回使用する人は、新薬ですので2週に1回の通院が必要です。キュバールは値段が高く患者さんの負担が重いので、順次切り換えとなります。新時代の幕開けです。医師とよく相談しましょう。
 勉強会や交流会、講演会に出席して学ぶということも大切です。薬を使えばよくなりますが、それだけでは治っていないのです。患者会に参加したり、本を読んで実行する人はよくなり、薬を減らすことができるのです。喘息役員会に入って、助けあいの行動の先頭に立つと、薬を使わなくてもよい人が増えてきます。これは事実です。
 日本アレルギー学会が喘息デー・喘息克服月間の案内を載せてくれました。助けあいの精神を認めてくれたからでありましょう。9月から助けあいの行動を、個人も団体も大いに強化しようではありませんか。

188. 各地での交流会「夢の実現」

喘息をよくし治すために(188)
喘息大学学長 清水 巍

 8月の真夏の天気が9月にズレ込んで、暑い9月でありました。9月から喘息克服月間が始まったのですが、気温が下がらず、喘息発作で駆け込むという人が極めて少ない喜ばしい状況です。
 このヒントから環境が変われば、秋の喘息発作好発・多発は防ぐことが可能になることが示唆されます。ダニが夏に増え、気温が下がると死んで、チリとなってアレルゲンとなるのが喘息多発の大きな原因とされますが、ダニが増えない工夫をすれば防ぐことができます。
 トンネル塵肺訴訟が「謝(あやま)れ、償(つぐな)え、無(な)くせ塵肺」ということで斗われ、原告団が勝利し、国との和解が成立しました。和解金は一切個人には支払われず、塵肺を無くすために使われることになりました。

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 石川県でのトンネル工事を私も視察したのですが、昔より改善され塵肺の発病を減らす確信を得ました。これと同じく環境や対策が十分となれば、喘息克服も前進ができます。
 しかし、天候は本格的な秋に移行するでしょう。10月、11月になって急に冷え込むと今年はどうなるかです。それを防ぐ第1の努力が薬のよりよい使い方です。ステロイド吸入→大量吸入療法→より効果的な薬剤が喘息を改善したのは紛れもない真実です。年間6000人台の喘息死亡率は2000人台となりました。よりよい治療が改善をもたらすのは歴史の事実です。
 喘息の新薬アドエア(フルタイドとセレベントの合剤)、オルベスコが使える今年の秋です。前者は2週間に1回通える人という制限がありますので、10人くらいが使用を開始したところです。オルベスコはキュバールよりいいし、安くて副作用も少ないと、3拍子揃う鳴り物入りの宣伝がされ、期待されていました。キュバールから同量切り換えを行ったのは10人ほどですが、より大きな効果はハッキリしないようです。
 症例数の増加と共にプラス面、マイナス面が明らかになるでしょうが、全国各地で開催される交流会で情報提供をしたり、使ってる人の感想や意見を聞くことにしましょう。そうすれば、いながらにして情報を得て選択の参考にできます。
 悪化を防ぎ、これからの治療を改善する第2の方法は、全国各地の交流会に参加することです。喘息を改善するのは薬だけでなく、「教育・鍛錬・交流」であることを、喘息大学や「わかば会」、城北や寺井の患者さん、全国の患者会は証明してきました。薬や治療法についても最新の情報を提供してきました。今年は、新潟、東京、京都、金沢で開催されます。可能は人は是非どこかに参加して下さい。
 合併症をよくすることもレベルアップした日々を送るためには重要なことなのです。アレルギー性肉芽種性血管炎(チャーグストラウス症候群)、「匂いの消失・それを改善させたという体験発表」、好酸球性中耳炎を改善させた体験発表などを私の講演の中に盛り込む予定です。「病気や合併症の改善という夢の実現」は各地での交流会で見つけることができます。
 重要な夢の実現は、よくなって薬を減らしたり、中止しても大丈夫なようになることではないでしょうか。私たちの「交流会の特別な意義」はそれを実現した「かつての喘息患者さん」に出会えることにあるのです。
 11月27日(土)に城北診療所で予定した「2007年度レベルアップ講習会」は編集後記に書いた理由で12月1日(土)に延期します。併せて少し早いのですが、わかば会金沢支部の忘年会をその夜に開催します。レベルアップ講習会に参加した人も、そこで「薬をここ数年全く使っていない、夢みたいに減らしている」という役員さんや患者さんの話を聞くことができます。
 本当の私たちの夢は、ご夫婦・ご家族ともども「元気で長生きできる」「目標を持って生きる」「目標の実現を達成できる」ことにあるのではないでしょうか。
 先日、下の記事のような対談がテレビで放映されました。私は録画したのですが、その一部を(全部見て頂くと私の講演時間が無くなる)を見て頂きます。
 以上、当面の夢、本当の夢実現に向かっての一里塚を交流会でと、今号は呼びかけました。会員でない新しい人も誘って下さい。わかば会の本当の姿を知って頂くよい機会ですし、入会して下さる人を増やさねば「わかば会員」は減ります。
 「自分の夢の実現」を考える秋にしたいものですね。
お会いしてパワーの交流を。

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189. 40年の伝統と成果の確認

喘息をよくし治すために(189)
喘息大学学長 清水 巍

 秋は実りの秋であります。1年間の実りを秋に収穫し備えてきました。北陸3県交流会、新潟、関東の交流会が行われ、11月17日の関西交流会、12月1日(土)城北診療所で開催されるレベルアップ講習会が残るのみとなりました。
 前号で「寒くなるのが遅れているので、喘息悪化の人が少ない」と書きました。さすがに10月後半から11月になると冷えてきました。私の外来に定期的に通院し、管理を上手に行っておられる人には全く悪化がみられません。通院してなかった人が「貯めてあった薬を使い果たしたので来た」とか「我慢できなくなって来た」と発作を起こして、例年の如く増加しました。
 このことを見ても、春、夏を上手に管理する人が健康な心地よい秋を満喫することができるのです。この秋や冬は毎年やってきます。40年という長いスパン(期間)で見たり考えたりするとどういうことになるでしょうか?
 40年前に石川県加南地方・寺井診療所に喘息患者会「若葉会」が誕生しました。1967年(S42)12月のことでした。7名の患者さんが会員となって結成されたのです。私が金沢大学医学部を卒業する1年前のことです。生き証人である小酒政善さん(喘息大学1期生・喘息大学同窓会会長)は当時のことを次のように語って下さいました。「秋に発作を起こすと何日も点滴を続け、仰向けに寝ることができず、ベッドの上に机を置いて座りながら死線をさまよった」そうです。今はゴルフに仕事に、快適な毎日を過ごしておられます。
 私が1968年(S43)に城北病院に来た頃は毎晩のように発作を起こして吸入に来る子どもさん、暁け方に必ず発作を起こす入院患者さんがおられて、よくなる傾向が見られませんでした。「ぜんそく克服物語」(悠飛社)の本にありますように、1970年4月から虎の門病院呼吸器科に「呼吸器と喘息の研修」に出かけたのです。

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 この40年前と今日を比較して、これからを考えることが必要ではないでしょうか。喘息死は年間6,000人だったのが、3,000人を切るようになりました。
 この現在の到達点を確認するための行事が2つあります。その第1は、12月1日に城北診療所で開催される「レベルアップ講習会2007」です。新薬のアドエアやオルベスコ、キュバールが普及しつつある段階で、ゆっくりと1人1人に外来で教育や施設、検査、診察を受ける機会が必要です。
 12月1日(土)はレベルアップ講習会に参加する人を中心に、臨時に外来を特設しました。私の土曜日の外来は第2、第4なのですが、12月1日の第1土曜日を臨時にあてることにしたのです。巻末の参加申し込み書を切り取って、FAXか郵送で御連絡下さい。折り返し、こちらからTELをかけ診察時間帯を予約します。
 午後は、1時30分から城北診療所の外来を使って「レベルアップ講習会2007」があります。参加費無料です。地元のよくなり、治ったような人との体験交流会が午後5時まであります。午後6時から懇親会(金沢支部忘年会)に参加して頂き、リラックスしながら懇親を深めます。このようにして2008年に向かう準備を整えます。40年の伝統と成果を総合的に確認する機会です。宿泊の必要な方は前泊・後泊を含め、ツアーシステムさん(TEL/076-292-0055 長野さんか落合さん)とご相談下さい。
 これらを準備する城北病院と城北診療所は10月14日(日)に50周年記念「健康まつり」(下の写真)を行いました。その時にわかば会の歴史を医療展に展示し、パネルを公開しました。

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 以上のように第15回喘息デー・喘息克服月間をしめくくります。巻末の用紙でどうぞ御参加申し込みをなさって下さい。
 さて、肝心要(かんじんかなめ)は「わかば会加南支部(若葉会)」結成40周年記念行事です。これは1年のしめくくりではなく、40年のしめくくりであり新たな出発です。記念文集が発刊されますが、記念式典や祝賀会も充実させたいものです。来年の1月12日~13日(土、日)と喘息大学をしめくくった片山津温泉の加賀観光ホテルでやることになりました。日帰りもできますが、泊まり込みを重点として行います。恒例となった石川県喘息友の会新年会、加南支部新年会を吸収した形で統合して行います。
 「喘息大学同窓会」を温泉地でやってくれという意見を聞いてきましたが、ゼミナールを兼ねた同窓会は金沢駅周辺にせざるを得ませんでした。「たまには懐かしい北陸の温泉で」という方は、祝賀を兼ねて「22種のお湯」のある加賀観光ホテルにおいで下さい。1月12日(土)が最も値段が安いのでこの日になりました。
 40年の伝統と成果の確認を年末と年始に行いたいと思います。役員会での決定です。皆様の御参加をお待ち申し上げております。

190. なること、ならぬこと。2007年のまとめ

喘息をよくし治すために(190)
喘息大学学長 清水 巍

 寒くなってまいりました。紅葉の時期が過ぎ、北陸は白いものが舞い落ちる頃となりました。どんなに夏に暑い日が続いても、冬はやってきます。月日は過ぎて行き、年が巡り来ることは「なること」の代表ですね。
 いつまでも年をとらず、変化が無く、現在のままがずーっと続くということは「ならぬこと」の代表でありましょう。12月の声を聞くと「年賀欠礼のハガキ」が届きます。「えっ、この人が」というお知らせを頂くようになりました。「いつまでも元気でいてほしい」と願っていても、「ならぬ」という現実を感ずる2007年でありました。
 「えらく弱気になったな」、「年を実感しだしたか」と思われるかもしれません。「なること、ならぬこと」の現実を直視して、1年1年を大切に生きて行かねばならないと思うようになりました。

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 喘息に関して、「なること」の代表は「よくなり、困らなくなる」ということです。アドエアやオルベスコという新薬が本年6月に登場して、喘息のコントロールは一層よくなりました。関東、関西交流会、レベルアップ講習会で、下の学会「最新情報」をいち早く手に取れるようにお伝えしました。日本の喘息患者さんの中では最も恵まれた患者さんということに、参加者はなったはずです。前向きに情報を集め、自分にもっともよい治療を探し出すことができれば「コントロールがよくなる」のです。
 「ならぬこと」の代表は「喘息がよくなり、治る」ことだと学会で言われています。「よいクスリが出ても、止めれば元に戻る。よくなり治るということはあり得ない」という見解が依然としてあるのです。ステロイド吸入薬がベコタイドやアルデシンという弱い時代にさえ、「よくなり、治る」患者さんを私たちは生み出してきたのですから、薬物がよくなった現在「一層なること」に、これは変えることが出来るのではないでしょうか。
 喘息デー・喘息克服月間を9月、10月、11月と3ヶ月間続けてきました。今年は「私のぜんそく克服物語」10万円の懸賞金を目玉に、15周年記念行事として取り組みました。日本アレルギー学会はホームページに掲載して下さいましたが、お知らせしたマスコミの全てが紹介・掲載をしてくれませんでした。それほど喘息は下火になってしまった、見向きもされない病気になったと評価されたのでありましょう。
 しかし、応募は7編ありました。これも「なること」「ならぬこと」の現象のひとつです。最優秀賞は福岡の宮本さん、優秀賞は愛知の近藤さんに贈られる事になりました。(詳細は次ページ)。来年の1月号から紹介します。「わかば」や「HP」等を見た人からだけの応募でした。2回設けられた喘息デーの電話相談も以前から見ると随分少なくなりました。「喘息で死ぬ人が半分に減っただけでなく、困る人が減った」という夢が実現したのです。そういう時代に入り、そういう時代で活動しているということであります。

g190_0211/3 関東交流会(横浜にて)

g190_0311/17 関西交流会(京都にて)

 「勉強会に参加しましょう」と呼びかけても、参加にならぬ現実があります。そんな中で関東では65名、関西では61名の参加者が集まったということは、実行委員の方々の並々ならぬ御努力と参加者のおかげでありました。この機会に、よくなる道に入れた人も出ました。
 関西交流会には喘大12期生で医師になった神戸出身の尾辻健太君が参加しました。喘息もアトピーも克服し、「喘息とアレルギーの医師になりたい」と私に会いに来たのです。神戸新聞の記者が関西交流会と私、尾辻君を取材しました。このように新しい芽も生まれています。
 今年度の鮎釣りは100匹足りない結果に終わりました。「人工的に餌を与え続けられた養殖鮎が放流され、最初は稚魚が川で元気に泳ぐのですが、自然の厳しさに生きていくことができず、すぐ死んでしまう」等々が減少の原因です。昨年釣果の300匹以上を、と願ったのですが、これは「ならぬこと」に終わりました。
 「孫が金沢に戻って来ること」、これはおかげさまで実現しました。よく家に遊びに来ます。「じいちゃん」と言われると顔がほころびます。年ですね。
 以上のように、「なることと、ならぬこと」の現実を噛みしめた2007年でありました。皆様にとっても大同小異のことがあったのではないでしょうか。現実も受けとめながら、「必要で出来ることを成し遂げる」2008年にしたいものですね。